「中高生情報学研究コンテスト」でNVIDIA Jetson Nano搭載 JetBot プロジェクトが奨励賞を受賞 筑波大附属高校

NVIDIAは筑波大学附属高等学校3年生の辻 知香葉さんがロボットにAIを搭載するために昨年からNVIDIA Jetson Nanoを活用し始め、今年、NVIDIA JetBot AI ロボットを用いたプロジェクトで、第3回中高生情報学研究コンテストで奨励賞を受賞したことを発表した。

写真右:辻 知香葉さん


AIロボットの可能性と限界をNVIDIA JetBotで探究

「将来の夢は、人をわくわくさせるようなロボットをつくること。」
そう語る筑波大学附属高等学校3年生の辻 知香葉さんは、5歳のときに世界初の本格的な二足歩行ロボットを見て感動して以来、ロボット開発に興味を持ち、小学生の時から国内外のさまざまなロボットコンテストに挑戦してきた。そして最近参加したあるロボットコンテストでは、会場の光環境が少しでも変わると手動でプログラムを調整する必要があったが、「AIを使えばロボットが環境の変化に自律的に対応し、スマートに解決できるのではないか?」と思ったことをきっかけに、AIに関心を広げている。

辻さんはロボットにAIを搭載するために昨年からNVIDIA Jetson Nanoを活用し始め、今年の3月、NVIDIA JetBot AI ロボット(以下、JetBot)を用いたプロジェクトで、第3回中高生情報学研究コンテストで奨励賞を受賞した。JetBotはJetson Nanoを活用してAIの開発を気軽に体験するための自律型ロボットキット。

同コンテストには計88チームが参加した。辻さんは「AI ロボット JetBot は WRO を攻略できるか?~AI ロボットを錯覚させてみた~」というテーマのプロジェクトでコンテストに臨んだ。AIロボットの可能性と限界の探究に向けて、CPUベースの従来型教育レゴロボットであるEV3と、教育AIロボットとしてのJetBotを比較している。

辻さんは世界最大級の学生向けの国際ロボコン、World Robot Olympia (WRO)高校生部門で毎年出題される、4つのブロックの色の順番を識別する物体判定の課題と、ラインに沿ってコースを周回する自動運転の課題をプロジェクトに取り入れ、2 つのロボットのタイムと成績を競いあった。





仮説に基づいて繰り返し検証

物体検出の課題ではJetBotは各ブロックの色は認識できたが、ブロックの色の順番は識別できなかった。そこで辻さんはAIに4つのブロックを仮想の1つの物体として錯覚させることで、色の順番が違う配列を異なる物体として検出できると仮定し、AIモデルを作成、トレーニングした。一般に公開されている物体検出AIモデルの簡易版であるYOLOv3-tinyに新たに6クラスを追加し、合計2,160枚の教師データを作成した。この教師データを12時間まで無料で使用可能なGoogle Cloud上のGPU(Google Colaboratory)でトレーニングし、色順列を分類するAIモデルを作成した。

このAIモデルを搭載したJetBotで改めて実験してみた結果、EV3より400倍速く、色を判定することに成功した。自動運転の課題ではEV3は実験コース上の黒いラインに沿って走行するが、JetBotに搭載されているRoad Following AIモデルでは、コースのラインの分岐が複雑でライントレースが上手くできない。

Road Following AIモデルは転移学習を使っているため、辻さんは、実際の車のレーン走行をベースにしているのではないかと考え、実験コースのレーン上の白い領域を仮想の道路の境界線としてJetBotに「錯覚」させることができるのでは、と仮定した。コース全体の画像に加え、上手く周回できない箇所の画像を何枚も追加することで計170枚を教師データとして学習させた結果、仮説通り、仮想の道路の境界線として認識させることに成功した。ただ、こちらは平均40.6秒で周回し、EV3より4倍時間を要している。自動運転は物体検出に比べて情報処理のステップが多く、そのうえ速度を上げると単眼カメラのJetBotではブレやピンボケが発生するため、移動中のセンシングが難しかったと辻さんは考察している。


「今回の2つの実験は目的が異なり、それに応じて異なるAIを使用し、AIに学習させるデータも工夫しました。転移学習の有無によって必要な教師データの数が異なることや、クラウドやエッジを使い分けながら情報をどこで処理するかについても学ぶことができました。目的に応じてどういう AI をどのように道具として使うかが重要と感じました」と辻さんは振り返る。

また、辻さんは「プロジェクトに取り組んだ当初はAIについて全くの初心者で、技術的アドバイスを得られる人もいませんでした。JetBotのセットアップにも苦労しましたが、AIの基礎知識については、NVIDIAのオンラインコースの受講を通じて学習することができました。海外ではJetsonを使った自動運転のレースが開催されていて、世界中の大学生が競い合っているので、そこにもぜひチャレンジしたいです」と、今後についても意欲的に語っている。


AI人材育成を支援するNVIDIAの活動

NVIDIAは辻さんのような次世代のAI人材を育成するための支援活動を世界中で展開している。無償で受講可能なハンズオントレーニングが含まれるAI認定プログラム、Jetson AI Certificationや教育機関に一定数のJetsonを提供するJetson Nano 2GB 開発者キット助成プログラム、無償の学習教材であるNVIDIA AI Essentials学習シリーズの提供などが含まれ、日本でも全国のさまざまな教育機関で活用されている。

組み込みや自律動作マシンを開発するデベロッパーに向けたコンテンツを提供する、NVIDIA Jetson Channelでは、最新のエピソードで辻さんをゲストに迎え、受賞したプロジェクトの詳細やロボットに対する熱い思いを語っている。

辻 知香葉さんがNVIDIA Jetson Channel に登場

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山田 航也
山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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