無人ドローンと自動搬送ロボットが連携して荷物を無人搬送 川崎重工が実験に成功

川崎重工業は、無人ドローン(VTOL機)と自律配送ロボットの連携による無人物資輸送の実証実験を福島ロボットテストフィールドで実施し、みごとに成功した。この実験は物流業界における労働力不足などの社会課題解決を目的としたもの。この実験により、人の手を介さず完全無人で荷物をドローン配送する実現性が見えてきた。

この実証で使用した無人VTOL機「K-RACER」と配送ロボット

無人ドローン(VTOL)「K-RACER」には、カワサキのオートバイ「Ninja H2R」のスーパーチャージャー付きエンジンを搭載して新規に開発した。
荷物を載せた自動配送ロボットが自律走行して、同社が開発した無人VTOL機「K-RACER」に乗り込み、VTOL機が自律飛行で離陸、目的地に着陸した後、自動配送ロボットが再び自律走行して最終目的地まで荷物を搬送する実験に成功した。

荷物を積んだ自動搬送ロボットが無人VTOL機「K-RACER」へ向かって移動。


無人VTOL機に自動搬送ロボットが自動で乗り込む。


乗り込んだら無人VTOL機が離陸。


着陸の目的地に向けて飛行。


着陸したら自動搬送ロボットが自動走行で無人VTOL機を離脱。


最終目的地に向けて自律走行。(ラストワンマイル走行)


■動画 福島 VTOL+配送ロボ1 5号機デモ


川崎重工「近未来モビリティ」の研究・開発

川崎重工は、2030年に目指す将来像として「グループビジョン2030」を制定、「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」を今後、注力していくフィールドと定め、この「近未来モビリティ」の中で、無人VTOL機や配送ロボットの開発を行っている。

今回の無人VTOL機「K-RACER」は、2020年に飛行試験を実施した機体を改修して、積載できる重量、ペイロード100kgを実現した。さらに配送ロボットとの連携機構を搭載。パワーユニットはカワサキモータース株式会社が製造するモーターサイクル「Ninja H2R」のスーパーチャージドエンジンを採用している。

一方の配送ロボットは、ロボティクスおよびモーターサイクルや多用途四輪車のオフロード走行技術の知見を活かし、荒れた路面や段差のある道路でも安定して走行できるように開発した配送ロボット(自動搬送ロボット)をベースに、無人VTOL機への搭載が可能な車両として開発した。

この実証実験では、荷物を積載した配送ロボットが無人VTOL機に自動で乗り込み、配送ロボットを積載したままVTOL機は離陸して自動飛行、着陸後に配送ロボットが自動で離脱し荷物を届ける一連のシーケンスを行った。
ドローンによる自動配送は世界中で研究が進んでいるが、ドローンだけでは最終目的地まで配送することは難しいため、ラストワンマイルの配送が課題となっていた。今回の実験によって、将来的には荷物を人の手を介さない完全無人で、発送地から最終目的地までの配送の実現性が見えてきた。


なお、無人VTOL 機は今後、長野県伊那市から委託を受けて実施する「無人VTOL 機による物資輸送プラットフォーム構築事業」でも使用していく予定。


概念実証の概要

同社は、本実証で得られた知見を活かし、物流業界における労働力不足などの社会課題解決を目的に、道路交通状況や海山川などの地形特性に左右されないスピーディな物資輸送や、山小屋や離島などへの安定した物資輸送のためのシステムを開発することによって、社会課題の解決に貢献していく考え。

【配送ロボットと無人VTOL 機の連携による無人物資輸送の概念実証】
1.手動積込:有人での配送ロボットへの荷物積込
2.ロボ自動乗り込み:配送ロボットが自動走行を行い駐機中の無人VTOL 機へ接近し、自動で乗り込む
3.自動離陸:無人VTOL 機が配送ロボットの乗り込み後に自動で離陸
4.自動飛行:無人VTOL 機があらかじめ定められた経路を自動で飛行
5.自動着陸:無人VTOL 機があらかじめ定められた着陸地点に自動で着陸
6.ロボ自動離脱:無人VTOL 機が着陸後、配送ロボットが自動で無人VTOL 機から離脱を図り、荷物の配送、目的地へ自動走行
7.手動取出:配送ロボットが自動走行で配送目的地へ到達後、有人で荷物を取出

【使用機体仕様】
■無人VTOL 機
駆動方式: レシプロエンジン型(Ninja H2R 向けスーパーチャージドエンジン)
飛行形態: 垂直離着陸方式
制御方式: 自動飛行
ペイロード: 100 kg

■配送ロボット
駆動方式: 電動
制御方式: 自律走行型
無人VTOL 機との連携: 無人VTOL 機への接近・乗り込み・離脱含め全自動で連携

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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