3DとMR技術で直感的な最先端のロボットティーチングを実現する「RoboLens®」をネクストスケープが開発 その特徴としくみ

ネクストスケープは、Mixed Reality技術(以下MR)を活用して、協働(産業用)ロボットを誰でも簡単に3D操作できるMRティーチングシステム「RoboLens®」(ロボレンズ)を発表し、β版によるテストマーケティングを開始した。ユニバーサルロボット社(UR)の協働ロボットに対応している。ロボスタは開発したネクストスケープを取材し、最先端のMRティーチングを見てきた。特徴としくみを解説していこう。

MR技術を活用し、ロボットに触れず、かつ直感的な3D操作でロボットティーチングを行える「RoboLens®」


ジェスチャ操作で簡単かつ効率的なティーチングを実現する「RoboLens®」

「RoboLens®」の最大の特徴は、MR技術を使って、目の前のロボットに触れずに3D操作をしながらティーチングができること。現場のスタッフが直感的に、効率的にロボットティーチングする環境を作ることができる。そのため、ロボット専門のエンジニアやティーチングマンを現場に確保する必要がない。また、他のティーチング方法に比べて安全性が高いという特徴も併せ持つ。

「Microsoft HoloLens 2」で協働ロボットとシステムによる3D画面がミックスして表示されることで、直感的な操作環境が生み出される

ロボットに重ねて表示されるホログラムのUIを、手で操作する事でティーチングを行うことができる。



ティーチングした通りにロボットが動作するのですぐに確認ができる。


「RoboLens®」は、ロボットアームの作業などを含めて工場のライン変更等が頻繁に発生する現場には特に注目したいシステムだ。ティーチング作業の内製化、生産現場の迅速なライン変更、安全性の向上などを実現する。

■動画 RoboLens® でMRロボット・ティーチング

協働ロボット(産業用ロボット)に動作を覚えさせる教示作業を「ティーチング」と呼ぶ。協働ロボットを活用するために初期段階で必要な作業だが「ティーチングが繁雑でうまくできない」「そのためにロボットを使いこなせていない」といった課題を抱えている現場も多い。
また、協働ロボットの導入を検討している現場でもティーチングが不安のため、採用に二の足を踏んでいるケースもある。


■RoboLens®の導入効果

・ティーチング作業の内製化、効率化
・生産現場の柔軟性・即応性の向上
・作業安全性の向上


RoboLens®と、ペンダントやダイレクトティーチングとの違い


ティーチングペンダント

ティーチングには大きく分けて2つある。ひとつは「ティーチングペンダント」という専用のリモコン装置を使って動作を教える方法だ。各軸ごとに+と-で方向を指定するボタンがあり、少しずつ押してロボットアームの動きを見ながら目的の位置に移動させる。使い方は難しくないが、操作方法を覚えて「慣れる」必要がある。また、多関節ロボットには特有の「特異点」があり、制御できなくなるため安全性のためにスタック(停止)する事象が起こる。ティーチング時にもこれを考慮してペンダントの操作を行う必要がある。

標準的なペンダント操作によるティーチング、特異点でロボットの動きがスタックしてしまった例

ペンダントの画面にもエラーが表示される


ダイレクトティーチング

もうひとつが、手や工具を用いてロボットアームを直接動かして教える「ダイレクトティーチング」だ。人間がロボットアームを直接動かして教示する。直感的に操作できるのが利点。一方で垂直や水平、斜めなど正確に移動する動作を教示することが、手では難しい。

ダイレクトティーチング 直感的で簡単だが、正確に垂直や水平等を手で教示するのは難しい


RoboLens®によるMRティーチング

それらの課題をすべて解決するために開発されたのが「RoboLens®」だ。RoboLens®は実際のロボットアームやその周辺がMicrosoft HoloLens 2を通して見えていて、触らずに手の動きでロボットアームに動作を教示できる。更に、MR技術によって追加される3D情報を活用して、直線や斜線上にアームを移動したり、目的の位置にハンドを正確に移動することもできる。姿勢制御はシステム下で行われるため、「特異点」も自動的に回避されるため意識する必要がない。

MRティーチングでは、直感的に操作できて、かつ、垂直や水平など正確な軌跡を教示できる


また、動作の軌跡も3D表示され、ティーチング状況が目で確認できる点も面白い。

■動画 ペンダント、ダイレクトティーチング、RoboLens®の操作の違い


使い方は直感的、短時間のトレーニングで使える

「Microsoft HoloLens 2」自体が直感的に操作できるので、マイクロソフト社のセミナーでも初めて触れた学生が20~30分で使いこなしている光景も目にする。ネクストスケープによれば、RoboLens®も基本操作の習得に1時間程度とのこと。
実際に体験した人(自動車メーカー、Microsoft HoloLens 2 の使用経験あり)は「Microsoft HoloLens 2 は操作性が良く、こんなにすぐに使えてティーチングできるとは驚き」と語っているという。これは実際のロボットアームと操作画面が3次元でMR表示されることによる、直感的な操作性の高さによるところが大きいだろう。

■ RoboLens® の操作イメージ動画




RoboLens®のシステム構成

RoboLens®のハードウェアは「Microsoft HoloLens 2」と小型の「ロボット制御サーバ」で構成される。ティーチングアプリをインストールし、「Microsoft HoloLens 2」と「ロボット制御サーバ(Raspberry Pi 4B)」はWi-Fiで、URの協働ロボットのコントローラと有線LANまたはWi-Fiで接続する。

RoboLens®のハード構成。左から「ロボット制御サーバ(Raspberry Pi 4B)」「Microsoft HoloLens 2」。右は特製のMicrosoft HoloLens 2収容ケース

対応機種(ロボット)は、初期リリース時点では、ユニバーサルロボット(Universal Robots)社の下記の機種に対応する。
・CBシリーズ(UR3、UR5、UR10)
・eシリーズ(UR3e、UR5e、UR10e、UR16e)
ロボットハンドは「OnRobot RG2 Gripper」に対応し、対応ハンドも順次拡張していく予定だという。


ネクストスケープはMR技術の専門企業

株式会社ネクストスケープは2002年4月に設立され、システムインテグレーションや動画配信ソリューションの開発・運営等を行うとともに、Microsoft Azure等のクラウド導入支援やコンサルティング、教育分野などで活動してきた。MR/VR/ARソリューションでは、2017年のMicrosoft HoloLens が発売された当初から、研究開発や事例化を開始し、Microsoft社の「Mixed Reality Partner Program」(MRPP)に国内で初めて認定された実績も持つ。
医療分野では、診察時に病態を可視化できる患者向けのMRコンテンツをアステラス製薬と共同で開発、建設分野でも現実空間リアルタイム転送/遠隔コミュニケーションアプリを五洋建設と協働開発するなど、MRやVRに関連した実績も多い。
Microsoft Azureパートナー企業として、ジャンル別のアワードを計7回も受賞。そして「マイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤー2021」では、MR部門を受賞している。


業務上、頻繁にロボットのティーチングを行う必要がある、システムエンジニアやティーチングマンの人員不足・コストが高額など、従来のロボットティーチングに課題を抱えていたり、これから導入するのに不安を感じているなら、MRティーチングの「RoboLens®」を検討するのも良いだろう。課題解決についても相談に乗ってくれるはずだ。

また、RoboLens®の開発を更に進めるうえで、開発パートナーを募集している。自社製品のRoboLens®対応を検討したいロボットメーカーや、RoboLens®の採用を検討したいロボットSIerやロボットユーザからの連絡を受け付けている。

詳細は下記まで。
ネクストスケープ問い合わせフォーム:
https://www.nextscape.net/ja/inquiry

※RoboLens®はネクストスケープの登録商標です。

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ロボスタ編集部

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