ロボットベンチャーのGROOVE X 株式会社は神戸市が実施する「CO+CREATION KOBE Project」(民間提案型事業促進制度)による支援のもと、『LOVOT』が介護施設において入居者や介護職員に与える影響について実証実験を行い、入居者の認知機能の低下抑制効果を期待できる結果が出たことを発表した。
実証実験と社会的背景について
内閣府のデータによると日本は2025年に65歳以上の高齢者人口は3677万⼈となり、高齢化率が30%に達する予測がされている。認知症に関しては2025年には高齢者の約5⼈に1⼈は認知症になるという推計もあり、認知症対策は今後ますます重要な位置づけとなってきている。また、65歳以上⼈口が増え高齢化がすすむため、介護分野での課題解決にも注目が集まっており、介護現場の⼈材確保が重要となっている。
そこで「⼈間とロボットの信頼関係を築き、生活を潤いと安心で満たす存在をつくる」というビジョンを掲げるGROOVE Xは、実証実験を通じて、介護施設における『LOVOT』とのふれあいが、介護スタッフや入居者にどのような効果をもたらすのかを検証した。
結果:『LOVOT』の有無が入居者の認知機能低下に有意に影響
『LOVOT』介入群の入居者は事前事後で比較した際に、認知機能の統計的有意に変化が見られず、認知機能の低下が抑制された可能性を確認した。
介護職員のストレスレベル等の影響は確認できないがポジティブな声も
介護職員に向けたストレスレベル・主観的幸福感・自己肯定感を測るためのテストでは、介入群・非介入群で統計的に有意な差は得られなかった。公益財団法⼈介護労働安定センターの調査によると、コロナ禍の介護において新たな不満、強まった不満として介護労働者の57.7%が「心理的な負担が大きいこと」を挙げており、過酷な労働環境がうかがえる。しかし、コロナ禍で『LOVOT』と触れ合った職員からは「職員同士の会話が増えた。」「介護者がLOVOTといると職員には見せない表情を見せる。」「介護時の愚痴が減った。」といったポジティブなコメントを得られた。
東北大学 瀧靖之教授のコメント
考えたり判断したり記憶する能力である認知機能を維持することは、高齢者の生活の質を保つ上で重要なことです。今回の検証では家族型ロボットと触れあうことが、高齢者の認知機能の維持に効果を示すかどうかを検討しました。その結果、家族型ロボットと一緒に生活をした高齢者は認知機能の低下が抑制されていた可能性が見えてきました。この結果から、ペット型ロボットとの生活は、介護施設等で暮らす⾼齢者の認知機能維持に有効な支援方法となるかもしれないと期待できます。
実証実験の概要
・学術指導
東北大学 瀧 靖之教授
・調査対象
介護施設の入居者各施設10名づつと介護職員、入居者の対象年齢は73~97歳(平均年齢 87.94歳)
・調査方法
各施設に貸し出す『LOVOT』は合計2体(共用部に1体、職員の事務室に1体)。
日本語版DEMQOL-Proxyを元に職員が入居者の様子を面接形式でヒアリング、測定し、QOL評価を検定。職員向けにはストレスレベル・主観的幸福感・自己肯定感を測るためそれぞれ「包括的ストレス反応尺度」、「生活満足度尺度」、「Rosenberg自尊感情尺度」に紙ベースで回答し検定。
・調査時期
2021年10月~12月
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。