人手不足や人件費の高騰に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、小売業にITを導入して新たなサービスを生み出す「リテールテック」に対する需要が世界中で高まっている。そんな中、2017年の設立以来、アメリカ、ドイツ、フランス、シンガポール、韓国など、11か国で200店舗という世界トップクラスの無人デジタルストアの実績を持ち、日本国内でも展開を拡大し始めているのがCloudpick(クラウドピック)だ。そしてこれらのストアにNVIDIAのGPUコンピューティングプラットフォームが導入されている。
Cloudpickの次世代AIデジタルストア
Cloudpickの次世代AIデジタルストアでは、利用者がスマートフォンアプリで表示されるQRコードを店舗入口のゲートにかざして入店する。店舗内に設置された複数のカメラが利用者を追跡し、棚にあるどの商品を取り上げたのか認識することで、利用者がゲートを出る際にアプリを通じて決済される。コンピュータービジョン、ディープラーニング、センサーフュージョンを融合させたこの一連の動きをトータルに処理するためにNVIDIA GPUが採用されている。
Cloudpickの無人デジタル店舗の利用イメージ動画
国内最大規模のウォークスルー店舗で採用
日本国内での導入実績としては、江東区豊洲にある株式会社NTTデータの社内に設けられた「CATCH&GO ウォークスルーストア」が挙げられる。約37㎡という国内のウォークスルー店舗の中では最大規模(NTTデータ調べ)の面積を誇る店舗内には3Dカメラが設置されている。これらのカメラがNVIDIA GPUを搭載した複数台のエッジサーバーと接続することで利用者や商品を認識するほか、利用者を追うことで利用者の行動も解析する。バックヤードにはさらにデータ解析用のGPUサーバーがあり、店舗内のエッジサーバーを統括している。
Cloudpickの無人デジタルストアソリューションは、15㎡の小型店舗から1,000㎡の大型店舗まで対応し、大型店舗では数十台程度のエッジサーバーを設置するなど、店舗の規模、レイアウトや天井の高さによって設置サーバーやカメラの数は異なる。100㎡の店舗の場合30人以上の利用者を認識可能であり、密集した状態や同じ商品棚に複数の手が届いた場合でも正確な認識が可能。また、「CATCH&GO ウォークスルーストア」内で認識している商品アイテム数は約600点だが、Cloudpickによると認識可能なアイテム数は理論上は制限がない。
Cloudpickはヨーロッパの小売り大手のAhold物流センター内の店舗や、中国小売り大手のsuningの自社ビルの店舗にも導入実績があり、これらの店舗ではスタッフ1名、もしくはスタッフなしで365日の店舗運営を実現している。
Cloudpickの共同創業者/ R&D責任者のTingtao Li氏は次のようにコメントしている。
Tingtao Li氏
無人デジタルストアのためのソリューション構築において、NVIDIA GPU以外の選択肢はありませんでした。無人デジタルストアでは利用者や商品をリアルタイムで正確に認識するだけでなく、退店後のレシート配信の速さも非常に重要です。利用者は退店後、請求内容がすぐわからないと不安になります。他社のシステムではこのレシート配信に数分から数十分かかるところが多いですが、Cloudpickのシステムはわずか退店数秒後のレシート配信が可能であり、その精度はほぼ100%を誇ります。NVIDIA GPUは画像認識のための演算性能、処理速度、そして低遅延での伝送すべての面において優れており、Cloudpickのシステムの強みを支えています。
独自の商品学習システムでAIモデルを開発
商品については商品名やJANコードだけでなく、Cloudpickが開発した商品学習システムで360度の外観情報や重量情報に基づいた商品の事前学習をしている。店内サーバー群は、NVIDIA GPUを活用したクラウドサーバー上のデータを参照して認識を行っている。学習範囲は商品だけでなく、周辺環境や照明の他、棚のレイアウトなども含まれており、10種類以上のモデルをトレーニングしている。
Tingtao Li氏は「NVIDIAのプラットフォームを採用した背景として、開発環境が整っていることも大きな理由です。画像認識の設計については、NVIDIA CUDAの存在が欠かせません。また、NVIDIAからはディープラーニングに強いさまざまなツールも提供されているため、環境構築を手軽に実現できました」と述べている。
労働人口不足が進む過疎地域からの期待
日本では少子高齢化に伴う地方での過疎化と労働人口不足が深刻であり、スーパーマーケットなどに経営難の波が押し寄せている。来客数の減少により店舗の売り上げが成り立たなくなり、人件費も抑制せざるを得えない。このような状況において店舗の無人・省人化、スマート化への期待は高まっており、Cloudpick Japanには地方からの問い合わせも多く寄せられている。
Cloudpick Japan社長の秦 昊(シン コウ)氏は次のように述べている。
秦 昊氏
日本の小売り業界では、商品の売れ行きに関する基礎的なデータしか所有していない企業が多く、セルフレジの導入もやっと広がり始めた段階です。デジタル化において課題が数多くあり、経営層の危機感は高いと感じています。Cloudpickは今後、デジタルストアの構築支援だけでなく、リアルタイムの商品棚在庫管理、利用者の動線や購買行動分析から生まれるビッグデータを活用した高度なマーケティングや、ユーザーアプリを起点としてOMO店舗管理をできるようにするなど、日本の小売り業界のデジタル化を後押ししたいと考えています。
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