NTTが画像認識AIでインフラ設備の「錆」を高精度に検出する技術を発表 老朽化の進行/点検コスト増加/点検員不足に対応

日本電信電話株式会社(NTT)は、画像認識AIを使ってさまざまな社会インフラ設備に発生している「錆」の高精度な検出に成功した。画像認識AIは「Mobile Mapping System」※1(モービルマッピングシステム、MMS)を用いて取得した沿道の画像から、複数のインフラ設備を識別し、それぞれのインフラ設備(道路附属物および柱上設備)に発生している錆を97.5%の精度※2で検出できることを確認した。

※1:レーザー計測器、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)装置、デジタルカメラなどの機器を車両に搭載し、走行しながら道路、建物、設備などの3次元座標データやカラー画像等の空間情報を取得するシステム。
※2:目視で錆の発生を確認した画像枚数を分母、画像認識AIで錆を正しく検出した画像枚数を分子として計算した割合。


インフラ管理者ごとに実施していた現地点検を一括点検へ

画像認識AIによって、MMSで同時に撮影した画像から複数のインフラ設備を一括で識別・点検できるため、インフラ管理者ごとに実施していた現地点検を一括して点検でき、稼働の効率化や削減が期待できるという。
さらに、画像認識AIによる点検のため、点検員ごとによって発生していたバラツキをなくし、点検品質の均一化が可能になる。
今後は、AI技術のさらなる深化によって、社会インフラ維持管理業務に付加価値を与え、スマートな社会の実現に貢献するとしている。
なお、この技術は2022年5月18日、19日に開催予定の「つくばフォーラム2022」で展示する。

道路などの社会インフラは、老朽化の進行、点検コストの増加、点検員の不足といった深刻な問題を抱えている。これらの問題に対し、「未来投資戦略2018」ではセンシングやAIなどの新技術を導入するインフラ管理者の割合を2030年までに100%とすることを目標としている。
NTTグループでは、社会から取得できるさまざまなセンシングデータをデジタル空間上で結合・蓄積・分析する「4Dデジタル基盤」によって解決することをめざしており、MMSやドローンなどによる点検(データ取得・自動解析)を進めている。
今回、MMSに搭載した複数の高解像度デジタルカメラで沿道のインフラ設備を一括撮影し、取得画像から設備の錆を検出する画像認識AIを構築した。




認識率94.3%の高精度

MMSによる実地でのインフラ設備の撮影は、西日本電信電話株式会社が実施した。撮影に用いたMMSが図1。今回の撮影では、MMSで沿道のインフラ設備を一定間隔で撮影し、横向きのデジタルカメラによって道路附属物(ガードレール、標識、ミラーなど)の画像、上向きのデジタルカメラによって柱上設備(金物、ケーブルなど)の画像を取得した。取得した道路附属物の画像1000枚(設備に錆がある画像は587枚)、柱上設備の画像1000枚(設備に錆がある画像は135枚)に対して、画像認識AIを用いた設備の認識と、各設備の錆の検出を行った。

(図1)インフラ設備撮影用MMS

この検証の結果が下記の表1。道路附属物と柱上設備の合計で、画像2000枚中1885枚において設備を正しく認識し(認識率94.3%)、錆がある画像722枚中704枚において錆を正しく検出した(検出率97.5%)。


図2に設備の認識と、錆の検出例を示す。
現在、インフラ管理者毎に実施している現地での点検を、一括で画像取得ができるMMS走行に集約することが可能となり、点検稼働の削減が期待できる。また、画像認識AIは取得画像から一律の基準で高精度に錆の領域を検出できるため、点検品質の均一化が期待できる。

(図2)インフラ設備の認識と錆の検出結果


画像認識AIの特長

この検証における画像認識AIは、以下の特長により高精度な検出を可能としている(図3)。


さまざまな設備種類・形状の画像や、異なる照度や構図で撮影された画像を十分かつ均等に学習させることにより、複数の設備を正しく認識することが可能。例えば、道路附属物ではガードレール/標識/ミラーなどの種類を、柱上設備では金物/ケーブルなどの構成物を別物体として認識し、それらの各領域を画素単位で検出する。

暗い画像から錆を見つけられるAIや、微小な錆領域を見逃さないAIなど、特徴の異なる複数のAIの結果を総合的に判断する。その結果、逆光や曇りによって暗く写った設備からでも小さな錆まで高精度に検出する。
また、道路附属物や柱上設備などの属性を画素単位で付与できるため、どの設備種類や構成物に錆が発生しているか判定することができる。
この画像認識AIは、実地で取得した合計数万枚のインフラ設備と発生した錆の画像を学習させており、対象を特定の設備に限定することなく、複数のインフラ管理者で活用できる。


今後の展開

MMSやドローンなどで撮影された画像に対して、画像認識AIによる錆検出の実用化を進める。さらに、画像認識AIについては、錆以外の変状検出や、MMSで画像を取得する際のGNSS情報と取得画像から設備が設置されている経度緯度の高精度な位置推定に取り組み、デジタル情報による社会インフラ全体の効率的な維持管理をめざす。

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ロボスタ編集部

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