病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加! 産官学で利用促進を目指す モデル拠点校ではメタバースも活用

公益財団法人ベネッセこども基金と一般財団法人ニューメディア開発協会は、2022年度の共同プロジェクトとして「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」を実施することを発表した。

同プロジェクトではモデル拠点校を選定し、継続的な成功利用事例を創出。「現場で使える成功事例モデル」を全国に情報発信し、継続的な「病気療養の子どもの笑顔獲得」を目指す。また、モデル拠点校では今後活用が期待されているメタバースでの「子どもたちの新しいコミュニケーション」についても試行・実証も行う。


アバターロボットを使った「誰一人取り残さない子ども支援」

ベネッセこども基金は2016年から自主事業「分身ロボットOriHimeを活用した院内学級プロジェクト」に取り組み、病室や院内学級と前籍校をICTでつなぎ、OriHimeを経由して授業参加や友だちとの交流ができるモデルづくりを行ってきた。5年間の実証実験を経て、2021年4月からは東京都の特別支援学校5校にてOriHimeを活用した学習モデルが実導入されている。

ニューメディア開発協会は競輪の補助事業として2020年度から、「未成年入院患者の学校教育(生活)参加支援」と「子どもの復学不安軽減、病院内学校と前籍校先生の連携アバター利用」を目的とし、アバターロボットを活用した調査開発研究に取り組んできた。2021年度では特別支援教育・健康障害エキスパートの専門である京都女子大学教授の滝川国芳氏を委員長として迎え、研究委員会を発足。教育・医療分野の専門家アドバイザーとともに、病院内の学校と前籍校の先生のコミュニケーションに焦点を当てた復学支援をテーマに取り組んだ。

先生との会話

移動タイプのアバターロボットによって、友だちと一緒の移動が可能になる

これらの事例を通じて、学校生活におけるアバターロボット活用の有効性を確認することができたため、ベネッセこども基金とニューメディア開発協会は共同プロジェクトとして「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」を2022年4月にスタート。2022年度は両者がこれまでに培ったノウハウをもとに、成功事例をさらに広げる仕組みを構築し、アバターロボットを使った「誰一人取り残さない子ども支援」の継続的な実現を目指していく。


病気療養や不登校の子どもたちの学校生活における課題

今回のプロジェクトのテーマとなっているのが、病気療養などによって登校が難しく、授業や日常的な学校生活に参加することができない子どもたちの支援。そうした子どもたちの多くは教室での授業に参加できる機会が少なく、学校や友だちに対して「疎外感」や「周りから取り残されている」という気持ちを抱いている。また、長期入院や療養が必要な場合、病院内に用意されている「院内学級」への転校をするケースが多いが、学年が上がるにつれ単位取得が難しくなり、休学や退学を余儀なくされる子どたちも少なくない。特に、高校生は6割が休学となっているのが現状(国立がん研究センターの調査より)。


一方、学校現場はこうした課題を解消するため、アバターロボットをはじめとしたICT活用に対して関心はあるものの、事例が少なく、費用面からも技術面からも導入や利用促進をどの様に進めたらよいのかわからないという問題を抱えている。


学校生活参加に有効なアバターロボットやメタバース活用

同プロジェクトではこうした病気療養などの子どもたちが、院内学級や病室、自宅から気兼ねなく学校生活に参加するための手段として、アバターロボットを活用する。テレポーテーションロボットの知見をもつiPresenceの各種アバターロボットを使うことで、離れた場所からでも、自分の意思で「自分で視点を変えて、教室内の見たい方向を自由に見ることができる」ことを可能にした。これにより「授業に参加している」という意識が格段と上がることが分かっている。


また、病気療養などで学校に行けない子どもたちの多くは、友だちと他愛のない雑談をする授業外の時間も切望している。自分の分身をアバターとして表示することで、参加のハードルを下げ、授業でも主体的に参加できるだけでなく、休み時間に友だちと話すことを楽しんだりして、療養中の自分が教室を自由に動き回る自分として学校生活を楽しむことができるようになる。


2022年度共同プロジェクト概要とスケジュール

2022年度共同プロジェクト「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」は、以下の内容で実施する。

・モデル拠点校を選定し、継続的な成功利用事例の創出
・「現場で使える成功事例モデル」を全国に情報発信し、継続的な「病気療養の子どもの笑顔獲得」を目指す
・「モデル拠点校」によるメタバース利用効果を検証する

また、これらの取り組みの進捗報告として2022年11月と2023年3月に報告会を予定。さらに、プロジェクトの概要と講演会を兼ねた共同プロジェクト発表会を2022年5月27日にオンラインで開催する。


共同プロジェクト発表会ではベネッセこども基金とニューメディア開発協会のこれまでの活動実績を報告するとともに、病弱教育におけるICT活用を実践されている京都女子大学教授の滝川国芳氏、テレポーテーションロボットの開発を手掛けるiPresence合同会社のクリストファーズ・クリスフランシス氏が登壇し、講演を行う。


【共同プロジェクト発表会について】
開催日時:2022年5月27日(金)15時~17時
開催方法:オンライン(ZOOMミーティング配信)
主催:公益財団法人ベネッセこども基金・一般財団法人ニューメディア開発協会

申し込み(Peatix):https://peatix.com/event/3234159

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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