「BMWのデジタルツイン工場」の衝撃 それはどのようにして作られたか NVIDIA AI DAYSでASKが解説

国内最大級のAIオンラインイベント「NVIDIA AI DAYS 2022」が6月23日に開幕した。
初日の23日、株式会社アスクは「NVIDIA Omniverseによって実現するパラダイムシフト」と題して、今注目のデジタルツインやそれを実現するプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」(オムニバース)について公演した。
そこでは、衝撃的だったBMWのバーチャルファクトリーを構築し、デジタルツインを実現する具体的な方法も解説された。ASKには「BMWと同じようなデジタルツイン工場を構築したい」という問合わせがきているという。



「Omniverse」とは

「Omniverse」はNVIDIAが開発、提供している、デジタルツインを実現し、クリエイターやデザイナー、プランナーなどのリアルタイムでの共同作業をオンライン上で実現するぷらっフォーム。デジタルファクトリーの実現、原価、販売実績の管理、供給状況の把握を含む、幅広い分野でのデジタル化が推進されている。ロボットやドローン等の自動運転のシミュレーション連携にも有効だ。

今回の講演で同社は、「NVIDIA Omniverse」の将来像を含めた活用例を紹介した。
冒頭では、ソフトウェアソリューション部の白澤圭司氏が登壇。様々なツール共有でリアルタイムのレイトレーシングのデモを公開、3Dのアセットを同期するなど、「NVIDIA Omniverse」の「Connector」を使った3Dソフトウェア間のコラボレーション」を紹介した。
「Connector」は既にリリースされているツールで、「Create」「Maya」「Unreal」で共有して連携作業を行う様子が披露された。

Omniverseの特徴のひとつはまずワークスペースをオンライン環境でスムーズに共有できること。「Omniverse nucleus」(ニュークリアス)で、3つのシステム(Maya/Create/Unreal Engine)を連携統合して、リアルタイム。レンダリングで作業したり、関係者と情報共有できることを紹介


BMWのデジタルツインファクトリーの開発

次にソフトウェアソリューション部の鈴木信雄氏がOmnuverseによるデジタルツインの構築事例を紹介した。ASKは「NVIDIA Omniverseのサイトには既にいくつかの導入事例が紹介されている。その中から、今日は製造現場の例として、BMWの工場にOmniverseを適用した例を紹介したい」と語った。



業界を驚かせたBMWのデジタルファクトリー

BMWのデジタルツイン工場が既に軌道に乗っていることはGTCのキーノートで最初に公開された。BMWのデジタルツイン工場の動画を見て、多くの人がデジタルツインの具体例を目の当たりにした。

■動画 BMW Omniverseデジタルツインの事例

■動画 BMW Omniverseデジタルツインの事例

鈴木氏は
BMWにおけるデジタルツインの全体像は「工場データのBIM情報や実際の工場のキャプチャー情報を統合して、車両(製品)情報と組み合わせ、製造に必要なツールやロボット情報と統合、それらのプロセス情報をリアルタイムで動かす。更には生産に必要な物流情報と統合していく、と捉えている」と語り、Omniverseを含むシステム構成図を紹介し、それに既存のBMWが採用しているUnrealアプリケーションが統合されていることを解説した。

BMWのシステム構成図

そして「ここで重要なのは、従来の使い慣れた利用システムを別のシステムに置き換えるのではなく、バッググラウンドでOmnuverseのUSDフォーマットを介して接続していること。そのため、新たなシステムを新規に導入することなく次世代のシステムにスムーズな移行ができる」とした。



BMWから見たOmniverseの価値やメリット

次に、BMWから見たOmniverseの価値やメリットを開設した。まずは前提条件として、製造部門ではUnrealアプリケーションで既に製造工程プランニング実績を上げていて、生産管理ツールの専門家でなくても意思決定プロセスに参加できるという成功体験があった。また、変化する生産技術に追従するために新しいアプローチを求めていたことがある、という。
その上で、Omniverseのデジタルツイン構築の価値は
・関係者や同僚、サプライヤーとのリアルタイムCGを使ったコミュニケーションの円滑化
・パートナーからのフィードバックが活性化し、設備改善の実施が増えたこと
・自動車技術の経験者同士のコミュニケーションが活性化されたこと
・生産技術の急激な変化に対応できるプラットフォームが必要だった
・最新データをより多くの関係者と共有できること

をあげた。



デジタルツインを実現するには

実際に「デジタルツインを実現」するためにはどのような要素が必要なのだろうか。鈴木氏は次の項目をあげた。まず「デジタルツインを構築する前提」で必要なモノは「製品データの3Dデジタル化」「プロセステータのデジタル化」「データ品質の良さ」「適度なデータサイズ」の4つ。
3Dデジタル化のどのような場面にもいわれてきたことちではあるが、デジタルツインにも同様。基本的なDXが進められていることがスタートラインになるということだろう。
また、更に鈴木氏はそもそも「デジタルツインに何を求めているか」が明確になっていることが重要、と付け加えた。


ASKではOmniverseデジタルツインの構築を請け負っているという。最近では「BMWと同じようなデジタルツイン工場を構築したい」という要望が増えているという。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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