ソフトバンクロボティクスは、物流自動化ソリューションに参入することを発表した。そして関連のソリューションを多数発表し、さながら物流自動化の百貨店という様相だ。そしてそのソリューション群を体験できる施設「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」(ソフトバンクロボティクス ロジスティクス イノベーション ラボ)を9月13日から千葉県市川市にオープンすることも発表した。(関連記事「【速報】ソフトバンクロボティクスが物流向け自動化ソリューションに本格参入 体験施設を千葉県市川にオープン、報道陣に公開」)
今回の記事では、前回記事に掲載できなかった詳細を補完していきたいと思う。
高密度自動倉庫システム「AutoStore」入庫(入荷)の流れ
今回の発表で最も目玉となるソリューションは高密度自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」だ。強大な物流倉庫の商品保管棚を運用管理するシステムで、一連の物流業務の要となって、他のデバイスやシステムと連携するからだ。
「AutoStore」が”高密度”と銘打っている理由は、従来の倉庫では通路があって整然と棚が並び、その棚に膨大な商品が保管されている。Amazonロボティクスや自動搬送ロボット「EVE」など、棚ごとスタッフのもとに運んでくるシステムも画期的だったが、「AutoStore」はそれらの棚を更に積み上げ、通路まで廃して、ロボットを移動して商品の保管箱をスタッフの手元まで送り出すしくみになっているので、やや1枚上を行っていると言えるかもしれない。
入荷(入庫)時の棚入れ作業
商品が入荷すると、バーコードで商品を読み取る。「AutoStore」のロボットが該当する商品を保管しておくべき箱をキューブ型に積まれた棚から即座にスタッフの手元に送り込んでくる(初入荷の商品ならカラの箱に入れて登録する)。
スタッフは簡単な入力を行って、送り出された箱に製品を入れる。
ひとつの箱に1製品というわけではなく、仕切り板で区切って登録することで、箱に複数の商品を入れてシステムが管理することができる。
ひとつの製品の棚入れが完了したら次の箱がセットされる。
箱の管理や移動はキューブ上部のロボットが自律移動して作業を行う。
箱に入れるのはスタッフの仕事だが、膨大な数の保管箱は「AutoStore」のシステムが管理するので、スタッフは入荷した個数を指定して、送り出された箱に商品を入れるだけの簡素な作業となる。(スタッフが保管棚を探して広大な倉庫内を移動する必要もない)
なお、この展示の規模で箱の数は約1750個が管理されている。
■オートストアの入庫作業の流れ
オートストアのメンテナンスルームを公開
「AutoStore」のメンテナンスルーム。制御システムが設置されていて、写真のようにロボットを作業エリアから出して手軽に修理・調整などのメンテナンスを行う作業ピットエリアもある。AutoStoreは1台が故障するとルートをふさいでしまうため、非常時に迅速にルートをあけて、作業を止めないように工夫している。
なお、「AutoStore」のシステムは国内で使用するためにSBRが独自に耐震強度を強化した構造(震度5強)になっているという。
■オートストアのメンテナンスルーム
小口注文に応じた出荷仕分け作業
コロナ禍もあって、EC人気が高まり、一般消費者からの小口注文が増えている。物流現場では「電卓1個、ボールペン1箱、定規1本」といった小口で複数の注文を「仕分け」て1つに梱包する作業に時間と手間がかかり、間違いも起こりやすくなる。そこでシステム化や自動化が期待されるわけだが、SBRの「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」では2つの方法のデモ展示を紹介している。
次世代型ロボットソーター「t-Sort」(AutoStore連動)
AutoStoreは出荷する商品をランダムにスタッフの手元に運んでくるが、それを発送する梱包単位にシステムと連動して仕分けるのが「t-Sort」の役割だ。スタッフがリーダーで発送する商品を読み込み、「t-Sort」の自動搬送ロボットに乗せると、同時梱包すべき箱まで移送して送り込む。「電卓とボールペンと定規」がランダムのタイミングでスタッフの手元に届いても、「t-Sort」が結局は同じ箱に自動で入れてくれる仕組みだ。
■次世代型ロボットソーター「t-Sort」(AutoStore連動)
シャッターアソートシステム「SAS」(AutoStore連動)
もうひとつの方法が、シンプルな手作業による仕分けだ。とはいえ、間違いを防ぐためにシステムと連動し、AutoStoreで品出しされた商品をどこに同梱するかを棚のカバー(シャッター)が開いて、案内してくれるしくみだ。
これなら間違いが減るだけでなく、効率化も図ることができる。ロボットにかかるメンテナンスや導入コストも削減できるかもしれない。
■シャッターアソートシステム「SAS」(AutoStore連動)
自動梱包システム
自動梱包システムも公開された。スタッフがディスプレイとコードリーダーを使って発送する商品を確認すると、商品のサイズ、同梱する内容等に併せて、緩衝材が繰り出され、それを詰め込むと作業が完了。後は自動で段ボール箱のサイズをカットして、蓋を閉めて梱包、配送ルートへと送り出す。
■自動梱包システムのデモ
RFIDゲート
織り出す際にRFIDゲートを通すことによって、箱の中の製品のRFIDタグと通信し、梱包の間違いがないかシステムが自動でチェックすることもできる。
スマートグラス「Picavi(ピカビ)」とウエアラブル式コードリーダー
なお、この梱包作業のセクションで、AutoStoreと連動するスマートグラス「Picavi(ピカビ)」と、グローブ式(リストバンド式)のコードリーダーがウェアラブルデバイスとして紹介されていた。スマートグラス「Picavi(ピカビ)」にはシステムからの指示が表示されるディスプレイと同じ内容が表示され、グローブ式コードリーダーは通常のバーコードリーダーと同じ役割をする。(今回はスマートグラスとグローブ式コードリーダーのシステムは稼働していないため、装着イメージのデモだった)
なお、この施設の全容は、関連記事「【速報】ソフトバンクロボティクスが物流向け自動化ソリューションに本格参入 体験施設を千葉県市川にオープン、報道陣に公開」でも紹介しているので併せて読んで欲しい。
一般にも公開(物流自動化ソリューション体験)
「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」(千葉県市川市二俣)は事前予約で見学することができる。予約は、明日から開催されている「第15回国際物流総合展2022」の同社出展ブースにおいて来場予約を先行して受け付ける。
また、9月20日からは、オンラインでも予約受付を開始する。
URL:https://www.softbankrobotics.com/jp/event/lil/
株式会社アイオイ・システム、株式会社アスタリスク、アルテック株式会社、株式会社サイエンスアーツ、株式会社souco、東芝テック株式会社、トーシン物流機器株式会社、日本スキャンディット合同会社、日本製紙ユニテック株式会社、株式会社Hacobu、プラスオートメーション株式会社、MagicalMove株式会社、Mee Truck株式会社、ラピュタロボティクス株式会社、Ranpak(ランパック)株式会社、株式会社YEデジタル、AutoStore Holdings Ltd.、Picavi GmbH、XYZ Robotics Inc.
ABOUT THE AUTHOR /
神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。