【速報】ソフトバンクロボティクスが物流向け自動化ソリューションに本格参入 体験施設を千葉県市川にオープン、報道陣に公開

ソフトバンクロボティクスは、同社が持つビジネスネットワークと、物流に関わる世界中のさまざまなAI・ロボット技術を活用して、物流倉庫の運用や発送管理などの業務の自動化と最適化を提案する「物流自動化事業」を本格的に開始することを発表した。かねてより同社が物流分野に参入するという噂があったが、それが具現化した格好だ。ただ、内容や規模はそれらの予想を大きく上回ったものだった。

高密度自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」

「AutoStore(オートストア)」のメンテナンスルーム

次世代型ロボットソーター「t-Sort」(AutoStore連動)

同社が提案するさまざまな物流自動化ソリューションを体験できる施設「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」(ソフトバンクロボティクス ロジスティクス イノベーション ラボ)を2022年9月13日に千葉県市川市にオープン、前日の今日、報道関係者に公開した。ここは事前予約で一般に見学もできる施設で、物流ソリューションの稼働デモを見ることができる。
また、どのソリューションもパートナー企業との提携によって実現したもの。エクスクルーシブ(独占販売契約)ではなく、SBRが自社で独自開発したり、YEデジタルなどパートナーが開発したシステムを採用したり、カスタマイズするなどして、柔軟に市場に投入していく考えだ。

「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」は、ESR市川ディストリビューションセンター内にある

■ロジスティクス|コンセプトムービー


SBRは業務用屋内サービスロボットでは世界一に

報道関係者向け発表会は2部制がとられ、第1部ではソフトバンクロボティクスの坂田大氏が登壇し、同社がAIとロボティクスで物流業界のスマート化に挑む意義や市場規模を説明した。

ソフトバンクロボティクス株式会社 常務執行役員兼ロジスティクス事業本部長 坂田大氏

坂田氏は「当社は、ロボットとAIを使って様々な社会課題をテクノロジーを使って解決していくことをミッションに掲げています。グループとして今では、グローバル・ネットワークとして日本も含めて世界で11カ国に拠点を持ち、パートナーは500社以上と連携して展開しています。それが私達の強みだと思っています」と語った。


更に、「現在は全世界70カ国以上で私達のロボットが使われていて、累計稼働も3万5000台超を達成しています。ある調査では業務用屋内サービスロボットでは世界一の売上げを達成しているとの報告もあります」と続けた。


そして、更に展開していく分野として物流業界が加わることになった。労働力不足の課題に加えて、コロナ禍でECの需要が増えました。小口の配送が膨大に増加して、物流クライシスとも呼ばれています。倉庫内の自動化・効率化は「待ったなし」の認識を持ち、ソリューションを提供していきます。物流システムの市場規模は6,000億円近いところから年率8.9%で成長し、2026年には1兆円に迫るのではないかという予想も出ています」とした。

坂田大氏

私たちは、人とロボットが共生する社会の実現に向け、さまざまなソリューションの提供を行なってきました。ソフトバンクグループがこれまで培ってきた物流業界のノウハウと、AI、ロボット技術における知見、そして世界中のパートナーの素晴らしい技術をインテグレートし、さまざまな事業背景や課題を抱えるお客さまにとって唯一無二の最適化ソリューションをご提案してまいります。


注目すべき3つのソリューション

この日、複数のソリューションが公開されたが、同社は”最も注目すべき3つのソリューション”として下記を紹介した。

1.高密度自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」
2.スマートグラス「Picavi(ピカビ)」(AutoStore連動)<日本初導入>
3.パレタイジング、デパレタイジングロボット「XYZ Robotics」<日本初の販売連携>


稼働展示された「AutoStore」

AutoStoreと連動するスマートグラス「Picavi(ピカビ)」。発送や梱包に必要な情報が視界の中で表示され、効率的で正確な作業が可能になる

パレタイジング、デパレタイジングロボット「XYZ Robotics」。サイズの異なる箱を知的に判断して混載することができる

坂田氏は、中でも高密度自動倉庫システム「AutoStore」の進化は素晴らしいと評価し、「この数年で「AutoStore」がものすごく進化しています。あのAIのアルゴリズムの進化によってスループットは従来の4倍を達成しているということです」と語り、具体的に保管効率、ピッキング数、出荷数、人件費の変化をグラフで掲示した。


このうち「3.パレタイジング、デパレタイジングロボット」はコロナ禍の関係でシステムの到着が遅れ、デモが用意できなかったため、静態展示と動画で紹介された。


ソフトバンクロボティクスの物流自動化ソリューション一覧

第2部は、ソリューションの多くがデモ展示された。注目のソリューションは別途、詳細記事を予定している。ここでは概要を紹介したい。


入庫・商品保管・棚卸

入庫した商品を棚に入れて保管する業務の自動化。商品と保管する棚(箱)の紐付けはコードリーダーで登録し、「AutoStore」(オートストア)のシステムが巨大なキューブに積み上げ保管する。


・高密度自動倉庫システム「AutoStore(オートストア)」

効率的な保管~ピッキングの効率化。
通路をなくし、キューブ状の棚を構築して製品を保管、ロボットが必要に応じて該当する製品棚をスタッフの手元に運ぶシステム。

「AutoStore」はキューブ状に積まれた箱で商品を保管、ロボットはキューブの上を移動して、収容したり発送する商品の箱をスタッフの元に運ぶ



・入荷検品・棚卸・出荷検品工程の自動化をアシストする「RFID」(AutoStore連動)

バーコードの他にRFIDによる管理も可能。入荷作業、入出荷検品、棚卸の効率化などに活用。

電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み取る「RFID」を物流ソリューションに活用(写真はポータブルRFIDリーダーの例)




出庫・仕分け

注目があった単数・複数の商品を発送のために仕分けするシステムは、2つの方式が公開された。自動搬送ロボット「t-Sort」による仕分けと、シャッターの開閉によって同梱する商品を仕分けするシャッターアソートシステム「SAS」。

・次世代型ロボットソーター「t-Sort」(AutoStore連動)

ピッキング~仕分け~出荷検品の効率化。商品をバーコードで読み、「t-Sort」に乗せるだけで同梱する内容ごとに自動で仕分けする。AutoStoreと連動することで、正確かつ高速なピッキング・仕分けを実現する。



・シャッターアソートシステム「SAS」(AutoStore連動)

バーコードを読み込むと、その商品を梱包(同梱)すべき棚のカバー(シャッター)が開閉する。スタッフはカバーの開いた棚に商品を入れるだけ。同梱する商品を高速・正確に仕分けするシステム。正確な仕分けを省スペースで行いエルゴノミクス(人間工学)を活用して人と機械に最適なオペレーションを実現する。

スタッフは、シャッターが開いた棚に商品を入れていくと、自動的に同梱発送する製品がまとめられる




梱包・最終確認・出庫



・スマートグラス「Picavi(ピカビ)」(AutoStore連動)<日本初導入>

ピッキング~検品の効率化。出荷する商品や個数等、デジタル情報が目元に表示されるスマートグラス。これまではディスプレイに表示されていた情報が視線を少し動かすだけで把握・確認ができるウェアラブルデバイス。手に装着しているのはコードリーダー。ウェアラブルデバイスを活用することで業務の効率化を向上する。



・自動梱包システム

商品のサイズに合わせて段ボール箱をカットし、最適なサイズに梱包する自動梱包システム。干渉素材もスタッフが効率的に入れることができる。

緩衝材を梱包しているところ。この箱が商品内容にあわせて最適なサイズに自動で加工される

最適なサイズに自動加工された梱包箱



・RFIDを使用した自動検品システム

梱包後の箱の中身をRFID(無線)を使って、間違いがないか確認するシステム。

梱包後の箱の中身をRFIDでチェックするシステム




パレタイジング、デパレタイジングロボット


・パレタイジング、デパレタイジングロボット「XYZ Robotics」<日本初の販売連携>

荷積み・荷下ろし作業の効率化。今回は静態展示。





清掃

倉庫内清掃ロボット「Scrubber50(スクラバーフィフティ)」(湿式)と「Whiz i(ウィズ アイ)」(乾式)を展示。コースを学習して自律走行で清掃する。

左から倉庫内清掃ロボット「Whiz i(ウィズ アイ)」(乾式)と、「Scrubber50(スクラバーフィフティ)」(湿式)




自動搬送

人や障害物を柔軟によけながら搬送を行う運搬ロボット「Keenbot(キーンボット)」。倉庫内の運搬業務を自動化・効率化する。




一般にも公開(物流自動化ソリューション体験)

「SoftBank Robotics Logistics Innovation Lab」(千葉県市川市二俣)は事前予約で見学することができる。予約は、明日から開催される「第15回国際物流総合展2022」の同社出展ブースにおいて来場予約を先行して受け付ける。


また、9月20日からは、オンラインでも予約受付を開始する。
URL:https://www.softbankrobotics.com/jp/event/lil/

【展示されているパートナー企業例】
株式会社アイオイ・システム、株式会社アスタリスク、アルテック株式会社、株式会社サイエンスアーツ、株式会社souco、東芝テック株式会社、トーシン物流機器株式会社、日本スキャンディット合同会社、日本製紙ユニテック株式会社、株式会社Hacobu、プラスオートメーション株式会社、MagicalMove株式会社、Mee Truck株式会社、ラピュタロボティクス株式会社、Ranpak(ランパック)株式会社、株式会社YEデジタル、AutoStore Holdings Ltd.、Picavi GmbH、XYZ Robotics Inc.

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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