温室メロンの網目の品質を認識する「等級判定AI」静岡大学らが研究開発に成功 生産者の負荷軽減、等級判定技術の継承に貢献

国立大学法人静岡大学は株式会社大和コンピューターとの農知創造研究に関する共同研究により、温室メロンの網目の品質を認識可能な等級判定AI(人工知能)の研究開発に成功したことを発表した。


メロンの網目の品質を認識可能な等級判定AIの研究開発に成功

温室メロンは国内では贈答用などに用いられる高級果実として認知されている。そのため、大きさや糖度といった品質に加え、果実の形状が整っていることや網目の色合い、網目形状の均一さなどの外観の品質も重要視されている(図1)。現状、このような外観の品質の判断は熟練生産者が目視確認で行ってきたが、判定作業には多くの時間を要することや、生産者ごとに判断基準がバラつくため等級付けの一貫性が保たれないことが課題だった。

図1.メロンの等級判定の例

大和コンピューターと静岡大学の峰野研究室では、一般的なRGBカメラで取得したメロン表皮の360°全周映像データ(図2)からメロン表皮の全周を表した網目画像と輪郭画像を生成し、等級判定に寄与した部位を表現するActivation Mapと深層距離学習によって網目の品質を定量化(ベクトル化)することで、熟練生産者の等級判定を約82%で再現する等級判定AIを開発した。

図2.AIが学習するメロン全周画像(BigRoots(※1)農場にて収穫)

同技術を用いて、熟練生産者の等級判断の根拠となった網目の部位の可視化(図3)や等級ごとの類似度をレーダーチャートで表示(図4)でき、熟練生産者の見立てでも妥当(約98%)であるという基礎実験結果を得た。

図3.メロン等級判定の根拠となる部位(特徴)を可視化した様子

図4.AIによる等級判定度合いをレーダーチャートで表現

同技術は温室メロンだけでなく、外観の品質判定が重要な農産物や工業製品に展開することが可能。今後、開発した等級判定AIを活用することで、一貫性を持った等級判定と出荷作業の効率化を図り、生産者の負荷軽減や新規就農者への等級判定技術の継承に貢献すると共に、AIとの協働による持続可能な地域社会の実現を目指していく。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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