NEC「先進的なセキュリティ技術の研究開発と取組み」(1) 報道向けブリーフィングで語った4つの最先端技術

セキュリティ業界に変革が求められている。
ひとつは量子技術の登場だ。乱暴な言い方かも知れないが、現在主流の暗号化技術は、暗号化されたデータを解読するために膨大な計算量が必要となるため、解読に時間がかかりすぎて、結局解読を試す意味がない、という理屈から安全性が担保されている。その理屈を量子技術は覆す。膨大な計算を文字通り一瞬で計算してしまう量子技術が登場すれば、現代のセキュリティ神話の理屈は破綻してしまう。

そしてもうひとつはIoTや認証システムの普及だ。セキュリティを確保すべきデバイスやシステム形状が爆発的に増え、新たなセキュリティの方式やプラットフォームが求められている。
決して課題はこの2つだけではないが、セキュリティ技術の進化、アップデートが叫ばれている。

日本電気(NEC)は、同社が取り組むセキュリティ領域の先進的な研究開発について、9月28日に報道関係者向けメディアブリーフィングをオンラインで開催した。社会や市場において関心が高まっているセキュリティ分野において、同社の最新研究と今後の技術領域を中心に、一部デモを交えながら最新動向や技術内容などを報道陣に向けて説明した。



【先進的な4つのセキュリティ技術】
1.セキュリティトランスペアレンシー確保技術
2.量子暗号通信
3.軽量認証暗号
4.秘密計算・高秘匿連合学習


世界レベルでの混乱やリスクを防ぎ、セキュアな状態の継続する「Truly Trusted」

なお、NECはセキュリティ性の担保とたゆまぬ技術革新「Truly Trusted」を掲げ、オープンなICTシステムの構成・状態を可視化し、セキュアな状態の継続をコンセプトとしている。

世界レベルでの混乱やリスクという様々な社会課題の解決を目指す共通メッセージのひとつ「Truly Trusted」。ICTシステムも正しく作り、正常を続けるということをゴールにしている

部品レベルでは不正機能の混入を継続的に検知し、データでは重要データの漏洩や改ざん防止、全体のシステムとしては、セキュアなシステムを自動で構築運用する、その実現に向けて研究開発に取り組んでいるという。

NECのセキュリティ研究の全体像は下記の図の通り。「システムセキュリティ」「データセキュリティ」「AIセキュリティ」の3つの柱に取り組んでいる。この中から4つの取り組みが紹介された。


ここまで「NECのセキュリティ研究開発の取り組み」はセキュアシステムプラットフォーム研究所 ディレクター 藤田範人氏から説明があった。

セキュアシステムプラットフォーム研究所 ディレクター 藤田範人氏


NECが取り組むセキュリティ領域の先進的な研究開発

「NECのセキュリティ研究開発の取り組み」について全体の説明があった後、下記のように4つの研究開発について、具体的な説明があった。


セキュリティトランスペアレンシー

「セキュリティトランスペアレンシー」については、セキュアシステムプラットフォーム研究所の植田氏が解説した。

セキュアシステムプラットフォーム研究所 ディレクター 植田啓文氏

「セキュリティトランスペアレンシー」は、NTTと共同の取り組み。近年ではサプライチェーンを通してインフラに不正なソフトウェアが混入することが、安全保障上の懸念になってきている。この問題を解決するには「安全であることを技術的に検証する仕組み」が求められる。供給側から調達側へどのようなデバイスが供給されているかが分からないといった透明性がないことが課題となっていて、それを解決するソリューションをサプライチェーン全体で行うための仕組みを研究開発している。
今後は、関連事業者によるコンソーシアムの早期設立を目指す。

セキュリティトランスペアレンシー確保技術の研究開発

公開されたデモの解説 サプライチェーン上で機器の構成やリスクが透明化された状態(セキュリティトランスペアレンシー)を実現

■ デモ動画

次以降のテーマ「量子暗号通信」「軽量認証番号」「秘密計算・高秘匿連合学習」については次回以降に解説したい。

つづく。
> NEC「先進的なセキュリティ技術の研究開発と取組み」(2) 量子暗号通信が安全と言われる理由 「BB84方式」と「CV-QKD方式」

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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