AIとドローンでネズミを牽制!米穀倉庫での被害低減を目指す産学連携プロジェクト 2023年5月を目標に完成を目指す

株式会社ヤマサは信州大学 工学部 設計工学研究室と長野県松本工業高等学校との協同プロジェクトを立ち上げ、ドローンと3Dマップ、AIを活用した次世代鳥獣被害対策ソリューションの開発プロジェクト「いたずらネズミとお手伝いドローンプロジェクト」(略称:いたドロプロジェクト)を始動することを発表した。


産学連携で次世代鳥獣被害対策ソリューションを開発

ネズミによる経済的被害はイノシシやシカに比べ少ないが、ペストコントロールの観点で対策が必要。また、住居や建物など設備や機材に対する被害も懸念されている。信州大学 工学部 設計工学研究室と長野県松本工業高等学校、株式会社ヤマサの3者による産学連携プロジェクト「いたずらネズミとお手伝いドローンプロジェクト」では薬殺や罠など既存手法に加え、新たなソリューションとしてAIとドローンを組み合わせ、スマートかつ拡張性の高いソリューションを開発する。

開発予定の次世代ソリューションは、まず倉庫内に設置したカメラの画像データをAIで解析したネズミの位置に対し、最適なルートでのアプローチをドローンに指示。自動操縦ドローンがネズミに急速接近し、被害を予防すべく威嚇を行うというもの。2023年5月を目標に完成を目指す。



記者発表会より各者コメント抜粋

2022年9月29日、長野県松本工業高等学校で同プロジェクトの記者発表会を開催した。以下は記者発表会より各者コメントの抜粋となる。



株式会社ヤマサ 総務部長 依田氏

プロジェクト名は親しみやすさとわかりやすさをコンセプトに「いたずらネズミとお手伝いドローン」としました。略称は「いたドロ プロジェクト」です。将来的にはネズミだけではなく、様々な鳥獣被害に対する可能性を秘めていると考えています。また、このプロジェクトは害獣の駆除を目的としていません。共存を念頭におき、動物との棲み分けを行い、被害を抑える有効な方法としていくことを考えています。

今回、高校生や大学生に参加していただけたことは弊社としても大きな意味があります。また、このプロジェクトが地方発のDX推進の一例となれば幸いだと思っております。



株式会社ヤマサ 代表取締役社長 北爪氏

当社の祖業である食糧事業。現在は長野県内や近郊の生産者から米を調達し、米菓子や酒類などの原料となる業務用の米や、小売業向けの精米など、お客様の用途に合わせて製造・提供を行っています。お米にはネズミがつきもので、これまで農家の皆様などからネズミ対策について相談されることもあり、何かできないかと検討していました。多方面にご意見を伺いながら調べていくと、天敵を利用するという手法が効果がありそうで、まだ試していない取り組みでした。ただ、実際の天敵を使うことはできません。

この領域にデジタルで新しいことが起こせたら…という発想を起点に、弊社の総務部 デジタル推進課で以前開発した骨材(生コン製造で材料となる砂や砂利)製造のAIによる動体検知が応用できそうだと考えました。しかし、弊社だけでは天敵を代理するソリューションの開発が難しく、信州大学 工学部・松本工業高校さんと連携して開発プロジェクトを立ち上げることにしました。

「天敵でねずみを退治する」というマンガのような、一見ファニーなご相談に、快く協力いただき感謝申し上げます。




信州大学工学部 中村教授

研究室では、製品の製造から使用・廃棄、材料の再利用、安全・安心の保証まで、ものづくり全般における環境適合を指向した「最適化」をテーマに、日々研究しています。今回のプロジェクトでは、ドローンをネズミの所まで迅速に導くために、正確な3Dマップを作成し、最適なルートをつくることを担当しています。われわれとしても研究内容の実装は大きなテーマですので、社会の課題に挑戦できる機会はありがたいです。高大接続(高校と大学で優れた人材を一貫して育成すること)の観点からも、高校生に信州大学の魅力を感じてもらえる機会となれば嬉しいです。



松本工業高校 電子工学部

私たちは松本工業高校内の部活動のひとつである「電子工学部」として、普段はものづくりコンテストやeスポーツ大会などを舞台に活動しています。今回は有志のメンバーでカメラの情報や3Dマップの情報をもとに、ドローンを自動で制御する部分の設計開発を担当しています。学校で専門知識を学んでいますが、それを実際に活かして応用する機会はなかなかありません。そんなときに信州大学の中村教授からお話をいただき、学びを深める絶好の機会だと思い、参加を決めました。

現在、部内で実験をはじめていますが、ドローンが思ったように動作しなかったり、画像検出の機構とうまく組み合わせることができなかったりと、開発の難しさを感じています。少しずつ形になっていくことにやりがいを感じつつ、実際の開発現場を目の当たりにして、期待されたものを作るということの責任も感じています。課題を解決しながら、安定した動作が実現できるよう研究を進めていきたいです。



デモンストレーション

プロジェクトで目指す一連の流れについての説明として、松本工業高校の生徒たちによるデモンストレーションを実施。ネズミの格好をした生徒が登場し、それに対して自動でドローンが出動、ネズミを追い払うという様子が披露された。ドローンはネズミを追い払うと自動で元の位置に戻り、役目を終えた。



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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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