NVIDIAがMECソリューションの海外AI活用事例を紹介 カルフール無人店舗/インディ500イベントショップ/製造業/音声AIなど

NVIDIAは、エッジコンピューティングソリューション、6GへのAI適用、次世代通信を支えるネットワークインフラの、3つのテーマで「NVIDIA テレコムウェビナー 2022」を開催した。NVIDIA日本法人の担当者が海外事例なども交えて説明した。

セミナーでは、エヌビディアのMECデベロッパーリレーションマネージャー橋本氏が登壇し、「MEC ビジネス概要とスケールのためのワークロード」と題して、MECとは何かを解説した後、海外の事例を紹介した。通信事業者がMECを構築し、ソリューションとして提供することで画像認識AIや音声対話AIなどのビジネス提案を行うケースが増えているという。



「MEC」とは? その特徴とメリット

「MEC」とはマルチアクセス・エッジ・コンピューティングの略称で、エッジの名の通り、クラウドに対して現場や現場に近い環境で運用するエッジコンピューティング(エッジサーバ)のこと。大容量のデータを扱う演算を現場に近い場所で処理することはレスポンスの向上、クラウドとの通信量の削減、エネルギー消費の削減など、多くの利点を生む。
通信事業者がMECを設置する場合は、通信基地局などにサーバを設置するケースも多い。

MEC(Multi-access Edge Computing)と通信事業者により地域向けクラウド提供構成




通信事業者がMECを展開して新たなビジネスを創成

橋本氏は、MECで重要なのは「ネットワークを熟知した通信事業者がネットワークとコンピューティングリソースの双方を提供することで、コンピューティングリソースとはGPUでの演算処理を瞬時に行い提供すること」と説明した。
その代表例のひとつがカメラ映像をAIの推論や解析だ(映像解析AI:IVA)。大量の演算が必要なGPUの並列処理によるAI運用は膨大なデータを処理するコンピューティングリソースが必要となるが、このデバイスやエネルギー消費をエンドユーザーがオンプレミスで運用することは現実的ではない、とする。ゆえに通信事業者がMECを展開し、データの地産地消がポイントで、セキュリティ上も安心だとした。

映像解析AIのユースケースは「監視・モニタリング」「公共空間の安全対策」「スマートシティ」「小売り」「製造業」などの分野で増加傾向にあるという。そして今回のセミナーでは「小売り」での「無人型店舗」と、製造業での「見守り・生産性」が紹介された。この2つは今、最も注目されている活用例だという。




無人型店舗 カルフール

最初に紹介したのは「AIFI」を使った大手量販店カルフールの「無人型店舗」Flashの例。最大の特徴は来店客が商品を手に取るだけにカウントしていく、顧客にとってシンプルな点にある。入退店時の認証やフラッパーゲートも必要ない。顧客が入店するとトラッキング(カメラによる追従)を開始し、顧客が商品を手に取ると数量と金額をカウントして、棚に戻すとカウントも戻すというしくみを、天井に設置したカメラ映像と骨格認識で行っている。カメラ以外のRFIDやセンサー等は用いていない。精算は自動レジでキャッシュレスで行う。


■AiFi x Carrefour: Enabling the Fastest Shopping Experience with Carrefour Flash


カーレースのイベント「インディ500」ポップアップストア

次に紹介したのは、カーレースのイベント「インディ500」で、ポップアップストアを設置した例。AIFIと米ベライゾン社(通信キャリア)が展開し、5Gを活用した無人店舗でスナックやドリンク製品、インディグッズを提供。一日で5,000ドル以上を売上げたという。


インディカー事例の動画は見つからなかったが、ミュージック フェスティバルでの同様の事例の動画がYouTubeで公開されている。

■AiFi x Verizon: Live Nation ミュージック フェスティバル


製造業での事例 イプソテック

製造業の例としてはイプソテック(Ipsotek)社の開発事例を紹介した。カメラを使ってソーシャルディスタンスの確保、立ち入り禁止、危険地域への侵入検知にも活用している。



音声AIの活用事例

ASR、NLPなどを活用した音声AIの活用によってコンタクトセンター、接客向けアプリケーション、WEB会議などにMECを利用しているという。音声認識や音声合成技術を活用するNVIDIAの「Riva」活用事例のひとつとなる。





書類のデジタル化(光学文字認識)

更には光学文字認識によるテキスト形式への変換業務に、MECソリューションを提供しているケースがあるとしている。


いわゆるこれら一時的な業務に対して、企業が膨大な設備投資と開発投資を回避するためにも、MECソリューションとして通信事業者がサービス提供することでビジネスが展開されている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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