ネコ型配膳ロボット10台が同時フル稼働!ロボット向けに店内を改修した食事処「漁師料理 かなや」での稼働公開 DFA Robotics

DFA Roboticsは2023年3月14日、配膳ロボット10台を同時フル稼働している食事処「漁師料理 かなや」の様子を報道関係者に公開した。DFA Roboticsは「すかいらーくホールディングス」全国約2,100店舗に3,000台の自動搬送ロボット「Bellabot」を導入したことで注目されているロボティクスソリューション企業。

平日にもかかわらず賑わう「漁師料理 かなや」店内。10台の配膳ロボットがフル稼働で海鮮料理や飲み物をテーブルまで運ぶ

活気溢れる店内に、厨房から料理を載せて次々に出発する「Bellabot」

新鮮な海鮮料理をテキパキと運ぶ

ビールなど飲み物ももちろんこぼさずに運ぶことができる

配膳作業を終えて、次の配膳のためキッチンに戻る「Bellabot」たち


8台から10台に配膳ロボットを追加導入した「漁師料理かなや」

「漁師料理かなや」は千葉県富津市金谷にあり、75卓450席の大規模な食事処。内房の海が間近に見渡せる景観と海鮮が人気で、かなやの食事目当てに訪れる観光客も多いと言う(企業名はウイング興産株式会社)。

DFA Roboticsの「Bellabot」外観

「Bellabot」の機能、搭載しているセンサー類

間近に見渡せる海の景観が最高

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店内に入ると10台の配膳ロボット「Bellabot」が動き回る様子が目に入ってきた。正午を過ぎると平日にもかかわらず店内は大賑わい。「Bellabot」は次々に厨房を出発して、テーブルに料理や飲み物をひっきりなしに運ぶ様子が見られた。


「Bellabot」はロボット同士ぶつかることなく、譲り合って移動し、人が近付くと停止したり徐行して通過していく。厨房から海をのぞむ席に移動する際に段差(坂)があるが、そこは徐行するなど、環境を考慮しながら速度を調整してスムーズにキビキビと移動していた。





1週間で3,319食の配膳をロボットが担当、人手不足に貢献

ロボットを導入した「かなや」の店長代理 小坂歩さんによると、1週間で3,319食の配膳をロボットが担当し、人による配膳の5割以上の削減がかなっているという。ロボットはホールスタッフの代わりに1日平均16kmを走行し、スタッフの労働負荷の軽減にも成果を出している。小坂店長代理は「スタッフを募集しても思ったように応募が来ないのが実状。スタッフの年齢層40歳代以上が多く、配膳ロボットが動いてくれてとても助かっている」と語った。

当初は4台を導入し、配膳ロボットの操作に慣れるのに苦労したり、ロボットへの要望点も多く、スタッフの意識的な変革にも時間がかかったが、操作や運用にも徐々に慣れ、ロボットの課題を解決して2022年3月に8台に増やして本格的な稼働を開始した。




配膳ロボットの運用に合わせて店内を改修

軌道に乗ったところで、「かなや」は配膳ロボットの稼働と、スタッフによる業務運用がしやすいように「キッチンスペース」(厨房)周辺の改修を決意する。例えば従来は、できあがった料理が並べられるデシャップの横通路にロボットが入るスペースがなかったため、デシャップ前で料理が積み込めるロボットは1台のみに限られていた。そして、その他のロボットは出入り口付近で列を作って待機していた。

改修後(右)は、ロボットは2箇所から調理スペースに入り、デシャップの前で常時3台が待機できるようになった

改修前:厨房(デシャップ)まで入るロボットは1台のみ(右の背中向きのロボット)で、他のロボット(左右の横向き)は出発口の外で待機していた

そこで、ロボットがキッチンスペースに入り、デシャップに沿って移動したり、複数台のロボットがデシャップ前で待機できるように通路を広げた。

改修後:調理スペースの通路が拡がり、配膳ロボットが常時3台待機できるように改修

ロボットはキッチンスペースの外の2箇所から入り、順番にデシャップの前で常時3台が待機できるようになった。

調理した料理が置かれるデシャップの前に配膳ロボット3台が待機。料理を次々に載せることで効率が上がった

スタッフは厨房からデシャップに出てきた料理をそのままの位置でロボットに載せ、タッチパネルでテーブル番号を指定するとロボットが次々に出発するしくみが実現した。

できあがった料理を次々に配膳する「Bellabot」たち

こうすることで混雑するランチタイム等の時間帯でも、デシャップに出てくる料理をスタッフは持ち場を離れず、次々に待機しているロボットに載せて提供先を指示するだけで、ロボットが次々に出発、自動でテーブル席まで料理を運ぶシステムが完成した。この店舗改修によって、同じ8台の運用でも、1日に配膳できる数が272食から316食に増えた。業務にロボットをむりやり合わせようとするのではなく、配膳ロボットを活用しやすいように環境を改善することで、最大の効果が現れるように工夫する良い例と言えるだろう。


効率的にロボットが出発して配膳していく光景は見事で無駄がなく、来店客も運ばれてきた料理を自身で受け取り、笑顔で海鮮料理を楽しむ姿が見られた。なお、顧客が高齢者など、支援が必要と判断した場合は、配膳ロボットのそばにスタッフが付き添い、配膳ロボットが運んできた料理をテーブルまで運ぶ気遣いも行われていた。

来店客の状況に合わせて、配膳ロボットが運んだ料理をスタッフがテーブルに置く気遣いも行う

ウイング興産の社長が効率化にICT技術を導入することに前向きで、各席にも注文用のタッチパネルが導入されている

■動画


DFA Roboticsは3,250台以上の配膳ロボットを導入

今回、ユースケースを公開したDFA Roboticsは「次世代の社会インフラの創造」をビジョンに掲げ、最先端ロボティクスを社会実装し、世界中の「ヒト」と「ビジネス」の価値を向上させる未来を目指す、ロボティクスソリューションカンパニー。ロボットが「人の仕事を奪う」のではなく、「人とビジネスの可能性を伸ばす」存在と位置づけ、人口減少・高齢化といった社会課題に対する「ロボティクスソリューション」を提供している。

すかいらーくグループに配膳ロボット3,000台を導入したことも話題となった(関連記事「すかいらーくHD「ガスト」や「しゃぶ葉」など約2,100店に3,000台の配膳ロボット導入を完了 協働ロボットの導入成果も公開」)

2021年11月より本格的に配膳ロボット事業へ参入し、約1年(2021年11月1日〜2022年12月31日)で、すかいらーくグループ含めて、3,250台以上の配膳ロボットを全国に導入済みとしている。現在、配膳/搬送ロボットは5機種を扱っている。


メンテナンスサービスはシャープと提携した全国展開。一次問合わせはDFAで行い、パーツを配送、シャープの作業員が現場で対応を行うしくみだ。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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