食品製造分野のなかでも、特に惣菜・お弁当などの中食の盛り付け工程は、多くの人手が掛かっており、人手不足への対応、労働生産性向上、工場での三密(密閉・密集・密接)回避のためには、盛り付け工程を自動化し無人化・省人化を目指すことが、社会課題となっている。また、惣菜製造業の多くが中小企業であり、より廉価なシステムが求められている。
このような中、産業用スカラロボットトップシェアの実績をもつエプソン販売株式会社は、2023年3月22日、経済産業省が今年度推進する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」および農林水産省が推進する「スマート食品産業実証事業」に採択された、一般社団法人日本惣菜協会とともに、31社からなる企業チームの一員として事業に参画。惣菜製造に最適化した『惣菜製造ロボット』の実用化に成功したことを発表した。
惣菜製造企業にとって深刻な経営課題である人手不足解消のため、2021年度に現場導入した惣菜盛付ロボットシステムの改良に加え、今年度は「惣菜盛付」ロボットシステムをさらにエンハンス・小型化。これにより、従来から工程を広げ「弁当盛付」・「蓋閉め」・「製品移載」ができるロボットシステムを、事業に参画した各企業との共創により開発することができた。
同社は、同活動を通して食品製造業(惣菜盛付工程など)での自動化を支援し、人手不足への対応、労働生産性向上を実現することで社会課題解決に貢献していくと述べている。また、最終消費者が「安心で彩り豊かなお惣菜」を将来にわたって食してくれることとを最終的な顧客価値として事業に取り組んでいくとのことだ。
実用化に成功した『惣菜製造ロボット』の概要
惣菜製造業が導入しやすいロボットシステムの開発を、日本惣菜協会をはじめ事業に参画した各社と連携・推進してきた結果、『惣菜製造ロボット』の開発・改良で、より省スペースでの設置が可能に。またハンドおよびその制御技術改良による多品種の各種惣菜盛付や、高速での弁当食材盛付、さらには容器の蓋閉めや製品の番重移載など、より多くの工程でロボットを活用できるようになった。また、同事業では、高価なロボットシステムの導入が中小企業にとって難しい現状を踏まえ、初期投資を抑え使った分だけ費用を払えばよい「ロボットシステム・アズ・ア・サービス」のビジネスモデル構築など、「ヒト」・「モノ」・「カネ」の導入障壁を低減するためのさまざまな取り組みを行っている。
惣菜製造スカラロボット「T3-B改」の主な特長
昨年度の事業では、スカラロボット「LS10-B」を使用していたが、今年度は新たにスカラロボット「T3-B」を食品仕様に改良し、取り扱いが容易で廉価な『惣菜製造ロボット』を開発。同ロボットのもつ以下の特長から、今回実用化した『惣菜製造ロボット』では昨年度モデル比でコスト約30%低減、設置面積約70%低減を実現した。
▼標準機と共通仕様
1. | 【コントローラー内蔵】:ロボットコントローラーが本体一体型のため、ロボット本体に加え装置全体の省スペース化に寄与 |
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2. | 【100V駆動】:低電圧モーター搭載でAC100V電源での駆動ができるため、費用のかかる200V電源の工事が不要 |
▼惣菜製造ロボット特殊対応
1. | 安全衛生面に配慮 ・ボールねじおよびベアリングの食品グリス対応 ・ボールねじにじゃばらを装着 |
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2. | 番重の深さに対応するため、ボールねじ部分を延長 |