スマート農業の先鋒 テムザックが群れで働くロボット『雷鳥1号』開発 雑草抑制&遠隔監視、ドローンなど「WORKROID農業」推進

株式会社テムザックは、医療、建築、パーソナルモビリティ、災害レスキューなど人手不足が深刻化している様々な業界において、人と共存しながらより実用的な業務を遂行する「WORKROID(ワークロイド)」の開発を重ねている。
その業界のひとつが農業。人手不足や耕作放棄地増加に歯止めのかからない状況の中、宮崎県延岡市にて、ロボット技術を用いて省力化を追求する「WORKROID農業」を開始した。
今回、その取り組みの一部として、水田における雑草抑制&遠隔監視ロボット『雷鳥1号』(プロトタイプ)を新たに開発し、実証用の水田に投入した。また、ドローンによる播種作業の実施や水管理システムの運用もスタートした。



「WORKROID(ワークロイド)農業」とは

「WORKROID農業」はテムザックがロボット技術を活かして実施する、農業経験のない人でも取り組める省力化農業。省力化を追求するため、農業ワークロイド(雷鳥シリーズ)、ドローン、水管理システムなどを最大限活用し、米粉用の水稲直播栽培を実施する。



米は日本の数少ない食料自給品目。しかし、農業従事者の最も多い割合を占めているのは75歳以上(2020年時点)で、高齢化・担い手不足、そして耕作放棄地の拡大に歯止めがかからない状況になっている。
テムザックは、省力化・省人化に向けた技術革新が必須として、長年培ってきたロボット技術を活かし農業課題を解決するため、2022年12月に、延岡市、北浦農業公社と連携協定を締結。2023年4月には、延岡市に農業ロボットの実践拠点「アグリ研究所」を開設し、農業経験のない人でも取り組める省力化農業 “WORKROID農業”を本格始動した。

なお、テムザックは人とロボットの共存社会を目指すサービスロボットメーカーで、ロボスタ読者には、医療、建築、パーソナルモビリティ、災害レスキューなど重労働や人手が足りない現場で、人に代わって活躍する多様な実用ロボット「WORKROID(ワークロイド)」全般で知られている企業。



『雷鳥1号』は田んぼの雑草抑制・遠隔監視をするロボット

『雷鳥1号』は田んぼの雑草抑制・遠隔監視をするロボット。
α版は自律航行型で、水を攪拌して泥を巻き上げることで光合成を妨ぎ、雑草の生育を抑える機能を備えている。単純な動き(例:前進→右旋回→前進→左旋回)をランダムに行うプログラミングがされていて、複数台を同時に稼働することで効率的に隅々まで撹拌することができる。

α ランダム制御型

β版は遠隔操作型で、離れた場所からカメラ映像を見ながら遠隔操作し、水田の様子を確認することができる。

β 遠隔操作型
▼参考 関連プレスリリース
2023年4月18日 テムザック アグリ研究所 開設について
https://www.tmsuk.co.jp/topics/4031/
2022年12月15日 連携協定について
https://www.tmsuk.co.jp/topics/3623/


【雷鳥1号】のポイント
・複数のロボットを同時に動かす、群ロボット制御によって、田んぼ上のすべての面を撹拌できる(α版)
・太陽光発電のエネルギーで自律航行(α版)、または遠隔操作(β版)
バッテリー搭載で曇りでも航行可能。
・水田の規模の大小を問わず利用可能。台数の増減で柔軟に対応できる。
・小型・軽量の為、搬入出作業が容易

群ロボットとは、高性能ロボット1体では困難なことを、単純なロボットの集団で実現させることで、全体として知的な処理ができるロボットのこと。



ドローン直播について

鉄コーティングを施した種籾(たねもみ)をドローンで水田に直接播く方法を採用。育苗・田植え作業が不要となり、農作業を大幅に省力化します。鉄コーティングを施すことにより、種籾の重量を重くして水中に沈降しやすくして、直播でも育成が可能となる。さらに、表面が硬くなることで、鳥に食べられることを防ぐ効果も期待できる。

ドローン播種協力:コヤワタオフィス




水管理システムについて

圃場の水位・水温、気温、湿度、風速、雨量等を自動測定できるセンサー類を導入。いつでもどこでも、スマートフォンで確認が可能となる。また、給水・止水が遠隔でできる仕組みも備え、水管理に関する作業を省力化する。

水位水温センサー

基地局

気象観測器

給水バルブ



今後の展望

テムザックは、米粉用稲作から米粉の流通までを一気通貫で行うことができる省力化農業を確立し、全国に広めていきたい考えだ。
それにより、耕作放棄地拡大を食い止めること、そして日本の食料自給率維持、食料安全保障への貢献を目指す。


株式会社テムザック 代表取締役議長 兼 アグリ研究所 所長の髙本 陽一氏は次のようにコメントしている。

髙本 陽一氏

スマート農業(=ロボット技術やICTを活用し、超省力・高品質生産を実現する新たな農業)が全国で進められていますが、その大半は既存の農業スキームのスマート化、収量最大化に重点が置かれているのに対し、“WORKROID農業”は、いかに手間をかけずに広範囲(耕作放棄地)で農作物を生産できるかに重点を置いて取り組みます。
国内の耕作放棄地は約42万ヘクタールあり、高齢化・労働力不足等に伴い年々増加を続けています。耕作放棄地となれば収穫量は「ゼロ」になりますが、省力化・低コスト化を徹底したワークロイド農業によって、従来の収穫量に対して7割でも確保できれば、意味のある事だと考えています。

関連サイト
株式会社テムザック

ABOUT THE AUTHOR / 

ロボスタ編集部

ロボスタ編集部では、ロボット業界の最新ニュースや最新レポートなどをお届けします。是非ご注目ください。

PR

連載・コラム