惣菜盛付、病院トレイメイク、3Dクッキングプリンタなど 食品業界でのロボット活用

食品業界向け総合展示会「FOOD展2023」が2023年9月20日〜22日の日程で東京ビッグサイトにて行われた。給食など大量調理用設備機器の「フードシステムソリューション」、食品安全・衛生対策資材展「フードセーフティジャパン」、食品工場関連の「フードファクトリー」、食品物流マテハン関連「フードディストリビューション」、そして惣菜製造自動化に関する「惣菜・デリカJAPAN」からなる複合展だ。こじんまりした展示会だったが、ロボット関連の展示を中心にレポートしておく。

愛知機械テクノシステムの搬送ロボット。番重やオリコンを載せた台車などを牽引できる。防水仕様。


■惣菜盛り付けと結果チェックを自動化 コネクテッドロボティクス

コネクテッドロボティクスのブース。しばらく食品工場向けに注力するという

調理ロボットスタートアップのコネクテッドロボティクスは、盛付ロボット「Delibot(デリボット)」を出展し、実演した。2セット4台の組み合わせで、きんぴらやポテトサラダなど8種類の惣菜を、1時間およそ800セットの速度で盛り付けることができる。

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パラメーター自動調節機能があり、現場では自動調整ボタンを押すだめで食材の変化に対応できるとのこと。既にいくつかの惣菜製造工場に実際に導入されている。盛り付け食材を変更する「段取り替え」作業が容易な点も評価されているという。

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もう一つは「AI検査ソフトウェア」。こちらは惣菜を容器に盛り付けた後の、フチへのはみ出しをチェックするための機材で、惣菜盛り付けの後工程で用いる。白い容器のふちに白いポテトサラダが乗り上げていても検出できる。

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なおコネクテッドロボティクスは従来は外食調理の自動化も手掛けていたが、今後は新規の開発は行わず、しばらく食品工場向けの開発にリソースを振り向けるとのことだ。


■AIHO 病院向けトレイメイクシステムと搬送ロボット

病院向けトレイメイクシステム

食堂など業務用厨房機器・設備を製造しているAIHOは、前回のFOOD展に引き続き、協働ロボットとビジョンシステムを使った病院向けの自動トレイメイクシステムを出展していた。

病院では入院患者に1日3食、給食を出しているが、一人一人メニューが異なる。現場ではそれに対して「食札(しょくさつ)」と言われる札に書かれたメニューや分量を見て、個別に、一人ひとりに対応した異なるトレイを作っている。しかも素早く作る必要がある。

食札。病院給食ではこれを見ながら人が手で食品を組み合わせてトレイを作る

だが他の多くの現場と同様、高齢化が進んでおり、人手不足が深刻になっている。また最近は外国人も多く「食札の文字が読めない」といった課題も出てきている。いっぽう、病院入院患者の食事はアレルギーや食べ合わせそのほかの問題もあり、間違えることが許されない。

そこで、ロボットを使って自動化できないか、というソリューションだ。ロボットは1個あたり8秒、1時間で450個の食器を置くことができる。協働ロボットなので、人の横で動かすこともできる。

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まだ実際の導入例はなく、実証実験の場を求めているとのこと。顧客からはロボットの動作速度よりも、コストの問題を指摘されることが多いという。

このほか、ブース内では搬送ロボットを使った食缶搬送デモも行われていた。THKの搬送ロボット「SIGNAS」に牽引用の部品などを付けたものだ。ロボットはステレオカメラを使って壁に設置されたサインポスト(目印)を見ながら自律移動する。床に磁気テープを貼る必要はない。

AIHO 搬送ロボット


■IHIエアロスペースほか、3Dクッキングプリンタ

3Dクッキングプリンタで実際に積層した食品

IHIエアロスペース、山形大学 古川研究室、十文字学園女子大学、ノードソンは、協働ロボットを使った3Dクッキングプリンタを出展していた。DOBOTのロボットアーム(Nova 2)の先にノードソンのノズルを付けたロボットで、山形大学と十文字学園女子大学が独自に配合した濃度の「フードインク」をシリンジから出して積層していく。

十文字学園女子大学 人間生活学部 食品開発学科 特任教授の高谷和成氏らによれば、食材によって濃度が異なるのはもちろん、ロボットの動作速度なども細かく調整する必要があるという。

各食材による調整はまだ手で行う必要がある

積層したあとは加熱して調理する。将来は国際宇宙ステーションのような狭い場所での加熱調理も想定している。パラレルリンクや2軸直行ロボットなどの活用も検討しているとのことだった。宇宙向けだけではなく飲食店でのエンタメはもちろん、イベントやキャラクタービジネス等も含めてビジネスの可能性を模索しているという。

様々なメニューが実現可能とのこと

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■ ヤナギヤ 協働ロボットを使った焼き目付け

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食品加工機械メーカーのヤナギヤは同社の「光加熱式表面焼き機」と協働ロボットの組み合わせを紹介していた。「光加熱式表面焼き機」は、表面に焼き目をつけることを目的とした機械。協働ロボットを使うことで、一連の工程を自動化できる。


■段ボールケース開梱・取り出し装置と協働ロボット

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食品加工の自動化を手がけるニッコーは、段ボールケース開梱・取り出し装置と協働ロボット、搬送ロボットの組み合わせを紹介していた。食材の入った段ボール箱を自動で開梱していくロボット装置だ。同社の段ボールケース開梱・取り出し装置を使うと、軽労化だけでなく紙の切り屑を少なくできるメリットがある。

ロボットの動作が遅いのはデモ用のため。実際にはもう少し早く動けるとのこと。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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