身体データ×AI歩行解析ロボットを健康診断に活用 健康寿命の延伸と未病対策にRDSと南相馬市が高精度な歩行姿勢測定の実証実験

南相馬市と株式会社RDSは、超高齢化社会に向けた未病対策の取り組みとして、歩行解析ロボット『RDS CORE-Ler』を活用した実証実験をスタートする。それに伴って歩行データを活用した取り組みの連携協定を締結した。


RDSは、国立障害者リハビリテーションセンター研究所との共同研究により、被験者の歩行速度に合わせて移動するロボットが高精度な3次元測定を行う、独自の測定方式を開発し、これを活用する。
なお『RDS CORE-Ler』は医療機器ではなく、健康増進を目的に南相馬市と研究目的で活用される。


超高齢化社会に「身体データ×AI」を活用した未病対策

日本では少子高齢化が加速し65歳以上の人口が30%に迫っている。高齢者の増加とともに、医療・介護サービスを利用する人は増え続け、それを支える若い世代の負担は今後の社会において課題となっている。
また、人生100年時代と言われる現代においては、心身ともに自立し、健康的に生活できる「健康寿命」が重要なテーマと言われている。その健康寿命を縮める主な原因には、認知症、脳卒中、関節疾患及び転倒による骨折などがあり、これらの原因と密接に関係しているのが「歩行」だ。


例えば、糖尿病や認知症の罹患者は、小さい歩幅で足を持ち上げずに歩くという特徴があるという。歩行と人ぞれぞれの運動障害の特性やメカニズムを解析していくことは、こういった特徴をいち早く見つけることができると考えられている。

今回の実証実験では、南相馬市の一部の健康診断(希望者のみ)で『RDS CORE-Ler』を活用した歩行解析を実施する。被験者は10mの歩行テストを行い、取得した歩行データをRDSが所有する罹患者の歩行データに照らし合わせて検証。未病の早期発見に努めていく。また、実証実験以外にも、南相馬市内の事業者と協力し歩行解析を活用した未病対策を推進していく。


歩行解析ロボット「RDS CORE-Ler」

「RDS CORE-Ler」 は、3Dカメラを搭載したロボットが歩行姿勢を測定し、得られたデータをクラウドサーバ上で保存・解析する歩行計測システム。


歩行動作の解析を通した疾患研究に長年取り組んできた国立障害者リハビリテーションセンター研究所 運動機能系障害研究部 神経筋機能障害研究室(室長 河島則天氏)の研究成果をもとに、機械学習で判定精度を常に向上し、新しい健康のバロメータとして歩行動作を定義づけていく。


また、従来は高価な動作解析(モーションキャプチャー)システムが必要だった歩行動作解析と同等な高精度測定を安価かつ簡単に行うことができ、歩行測定に特化したことで従来よりも多項目の評価が可能になった。高価な設備や専門性の高さが活用の壁になる高度な歩行動作解析を一般の方へ広く普及させ、発見が難しかった病気の早期発見や未病対策に役立つことも期待できるという。




代表者のコメント

南相馬市 市長 門馬和夫氏

南相馬市は、震災前から金属機械加工が盛んな地域であり、震災を契機にロボットが活躍する街として新産業創出や人材誘導等さまざまな取り組みを行なってきました。その背景として、新しい技術開発を行うことが市民生活を豊かにするという考えがあります。RDSはまさに新しい分野に挑戦し、新しい技術開発を行おうと考えている企業であり、私どもとしましても、伴走支援を通して、一緒に歩んでいきたいと考えています。南相馬市の高齢化率は約37%と全国平均を大きく上回る数値です。その中で歩行によって、疾患の可能性をいち早く見つけることができるというのは斬新かつ夢のある取り組みだと思っています。全国的にも新しい取り組みになると思いますので、RDSと一緒にチャレンジしていきたいと思います。

RDS 代表取締役社長 杉原行里氏

このプロジェクトがスタートする前、南相馬市の方々とお話しする機会があり、3.11の震災だけでなく、その後の10年をどう過ごしてきたのか、どんな思いで取り組んできたのかを伺い、私の中でこみ上げるものがありました。その時から、なにか出来ることはないか、力になれることはないかと思っていました。日本は世界でいち早く高齢化率が30%を超えます。多くの人は高齢化社会を”課題”と表現しますが、いずれは他の国もそうなることを考えると高齢化に対する技術先進国になれるということでもあります。南相馬市との取り組みが、世界に、そしてこれからの社会に有意義な取り組みになればと考えています。

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ロボスタ編集部

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