工学・製造・建築分野の理系女性の割合は最下位 パナソニックと奈良女子大、ジェンダーギャップ解消に向け「女性エンジニア養成プログラム」開催

現状、工学分野のエンジニアは女性比率が低く、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本は「工学・製造・建築」分野の理系女性の割合はOECD加盟38カ国中最下位との報告があった(2021年時点)。

OECDは「進学と職業とつなげて考えられるよう、理工系分野で働く女性のイメージを良くする必要がある」と指摘しているという背景より、パナソニックグループのB2Bソリューションの中核を担うパナソニック コネクト株式会社は、奈良女子大学 工学部と共同で、「女性エンジニア養成プログラム(Women Engineers Program)」を2024年3月11日~13日の3日間で開催した。

エンジニア分野のジェンダーギャップ解消に向けて、パナソニック コネクトの溶接技術など先端技術に触れながら、将来理工系職業を目指す女子学生同士の新たな交流を育むイベントとして実施した。

【女性エンジニア養成プログラム「Women Engineers Program」】
日本初の女子大工学部として2022年に開設された奈良女子大学 工学部が主催する、工学分野に興味関心を持つ女子学生(中学3年生・高校生~大学生)を対象にした企業ワークショップだ。参加企業各社が独自のワークショップを開催し、先端分野の紹介・技術演習並びに学生同士の交流の場となることを目的に開催されている。


今回開催したパナソニック コネクトのワークショップ

今回のワークショップは、パナソニック コネクトで実装機や溶接機の開発・製造・販売をグローバルに展開する、プロセスオートメーション事業部の豊中事業所(大阪府)にて開催。「世界は溶接でできている」をテーマに、北海道から九州まで全国から計15名の学生(大学生4名、高専生8名、高校生3名)が参加。学生自らが創意工夫を凝らしてプログラムで得た知識を基に実際に動かせるモノを造ることにチャレンジできるメニューも組み入れた3日間のプログラムを実施した。


初日

初日は、学生同士が初対面の緊張の中、溶接の基礎講習から始まり、ARシミュレーションを用いて溶接作業を疑似体験。

学生からのコメント

自分の普段の生活が、沢山の溶接に囲まれていることに驚いた。自動化が難しい溶接作業も依然沢山あるとのことですが、ARシミュレーションでハンド溶接の難しさを痛感しました



ARシミュレーション体験風景


2日目

2日目は溶接機の仕組みを中心にした技術講座を開催。工場見学で溶接機がどのように製造されているのかを理解した後、溶接機の操作・安全講習を経て、ハンド溶接によるオブジェ作成(フォトフレーム)に挑戦。作業服・保護具を着用した学生たちの表情は緊張そのもの。パナソニック コネクトの溶接のプロフェッショナル社員が付き添いながら、一人ひとりハンド溶接を実施した。

学生からのコメント

最初は緊張しましたが、作業を進める程に楽しさが増した。パナソニック コネクトの社員の方に出来栄えを褒められた時は嬉しかったです

ハンド溶接は学校で経験したことがあったが、プロの方に指導いただけたので貴重な体験になった



オブジェ作成風景

フォトフレーム


3日目

3日目は、ワークショップのメインイベントとなる「チームで制作課題に挑戦」。5つのチームに分かれてポンポン船を制作した。採点項目は船の速度や密閉度のみならず、溶接の美しさやオリジナリティ、更にはチームワークなど、完成物の評価に加えて制作過程も評価の対象に。学生たちは直進性の工夫にアイデアを出し合いながら、ポンポン船のデザインを決めて制作に取り掛かった。発表会では、沈んでしまった船もあったが、参加者の、チームで協力し合った充実感が発表会場に溢れていた。

学生からのコメント

コイルの巻き方・方向・巻き数を話し合う中で、お互いの考えを知ることが出来て有意義な時間だった。結果的に船は沈んでしまったけれど3人が全力で挑めたので、とても楽しかったです



▼デザイン検討、制作、発表会の風景






懇談会

ワークショップの最後に、パナソニック コネクトの技能者・技術者7名との懇談会を実施。溶接体験やチームでの制作課題に加え、多くの学生たちが望んでいたのがこの懇談会だった。事前にもらっていた応募動機でも「技術者との懇談会で、自分の方向性を確かめたい」という声が多数寄せられており、学生たちの将来に向けた希望と不安を垣間見ることが出来た。3チームに分かれた懇談会では、社員が途中で入れ替り、すべての学生がすべての社員と会話できる段取りで進めた。学生からは「学生のうちにやっておくべきことへのアドバイスは何か」などの質問があり、「就職のビジョンづくりに役立つ座談会だった」との好意的な意見をもらうことができた。

女性先輩社員も交えた懇談会の様子




学生へのアンケート結果

3日間のワークショップ全体を通しての満足度は、4.93点(5点満点)と高い結果となり、「インターネットでの表面上の情報と違い、実体験や経験者との交流で得られる知識は非常に価値のあるものだと感じた」「“女性エンジニアになりたい”という同じ志を持つ人たちと進路や学校生活の話が出来て良かった」などの感想が寄せられた。



ワークショップを終えて

同社は、ワークショップの運営に携わった社員一同、今回参加された学生たちが、同じ志を持つ女性同士の交流を深めるととともに、学校では経験できないことを深く学び、その刺激から、新たな視点と知識を得て、自分らしい将来へと向かっていくことを願っている。今後も工学エンジニア分野などのジェンダーギャップ解消に向けて、同様のワークショップを継続開催し、溶接業界・接合技術の更なる発展・進化に貢献していくと述べている。

パナソニック コネクトの溶接機・ロボット・レーザ事業について:
https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services_welding
Women Engineers Program公式サイト:https://we.nwu-eng.jp/


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ロボスタ編集部

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