ニコンが産業用ロボットビジョンシステムを2024年秋に発売 多くの産業で省人化や生産性の向上に貢献

ニコンは、産業用ロボットビジョンシステムを2024年秋に発売する。発売を予定している産業用ロボットビジョンシステムは、人間の目のように状況を捉えるセンサー(カメラ)と、撮像した対象物を画像処理により認識して判断するエンジン(制御PC)で構成されており、ロボットアームに動体視力と頭脳の機能を付与する。独自の高速センシング技術により、高速性・高い認識力・使い勝手の良さを備えており、製造業をはじめとする多くの産業で省人化や生産性の向上に貢献するとしている。

なお、2024年7月4日~6日にAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催される展示会「ロボットテクノロジージャパン2024」において、産業用ロボットビジョンシステムのデモ展示を行う。




開発の背景

自動車業界をはじめ、さまざまな業界の生産現場において多品種変量生産のニーズが高まっており、生産・品質管理・在庫管理はより複雑化している。また、ますます深刻化する人手不足といった社会的背景もあり、早く正確に作業ができるロボットで単純作業を自動化したいという期待は大きく、多くの企業でロボットビジョンシステムが開発されている。しかし、「処理能力の不足により認識しにくい部品がある」、「動作・認識が要求スピードにマッチしない」、「使用開始前の設定が難解で時間を要するため使いにくい」、「設備導入時の負担が大きい」などの課題があり、これらの解決が求められていた。

主なアプリケーション・特長

1:バラ積みピッキング


2D・3Dカメラを組み合わせた独自のアルゴリズムにより高速計測を実現し、箱にバラバラに積まれたワーク(対象物)の位置を認識して取り出す「バラ積みピッキング」が可能。他のワークを回避した経路設定ができるため、バラバラに積まれたワークを傷つけずにピッキングができるほか、目標とした把持位置と実際につかんだ把持位置がずれた場合にも、ワークをつかんだ後に計測し直し、そのずれを補正しながら作業が可能。

死角を減らしてワークの取りきり率を向上
ロボットアームの先端にカメラを取り付けるハンドビジョンの特性を活かし、視野内に認識できるワークがなくなった際は、覗き込むようにロボットアームを傾け、別の角度からワークを探索することで、これまで真上からでは認識しにくかった形状のワークも認識が可能となった。また、初期計測位置でワークが見つからなかった場合、ロボットが任意の位置へ移動し、撮影位置を変えて計測するリトライ機能も装備しており、これらを使用することで取りきり率100%(特定ワーク・当社環境のテストにおいて)を実現している。


最大250fpsの高速動作によるタクトタイム短縮
ニコンが長年のカメラ開発で培った画像処理技術の応用により、2D・3Dいずれも最大250fpsの高速計測を実現。これにより、瞬時に状況を判断したロボットアームの高速動作を可能にし、ワークの計測からロボットアームの動き出しまでの時間を2秒以内(ニコン社環境でのテストにおいて)にまで短縮している。


ハンドビジョン採用で、フレキシブルに移設・増設
従来の固定ビジョンでは、カメラを固定するための設備を組む必要があり、生産現場のレイアウトが制約を受けるほか、工程変更時には再度設備を構築する必要があった。ハンドビジョンの本製品は、複雑な設備設計や外部機器の購入が不要で、生産工程の移設・増設などへのニーズにもフレキシブルに対応する。

2:ビジョントラッキング


最大250fpsの計測と高速ロボットアーム制御により、コンベア・AGV・AMRなどの搬送機器上で流れているワークを認識し、それらの搬送機器を止めることなく滑らかに追従しながらワークのピックや組付けを行う「ビジョントラッキング」を実現している。また、ハンドビジョンであるため、一つの視野内にロボットハンドとワークを捉えることができ、移動中のワークとロボットハンドの手先に生じる細かなブレや把持位置の誤差を瞬時に補正する。これにより、生産工程での突発的な搬送機器の停止や姿勢が変わりやすいワーク等への対応が可能となっている。


同期作業ゼロでセットアップタイム低減
従来のロボットビジョンシステムでは、システムのスペックに合う搬送機器の準備や、搬送機器とロボットアームの動きを同期させるためのプログラミングや細かな動作調整が必要であり、稼働開始までのリードタイムが長いという問題があった。また、稼働開始後も搬送機器の僅かながたつきや突発的な動作等に左右され、ロボットアームが正常に作業できないということも少なくない。本製品は、見たままでのワーク追従が可能であるため、搬送機器との同期作業が不要で、セットアップに要する時間や手間を低減する。


設備投資コストの低減
従来のロボットビジョンシステムの場合、画像処理速度が遅いため既存の搬送機器の速さにロボットアームの動きが追い付けず、手作業での補完や、生産ラインとは別にオフラインで作業するケースもあった。本製品は250fpsの高速計測により素早い動作を可能にし、既存の搬送機器を活かしたままロボットビジョンシステムの導入が可能。オフライン作業用の追加設備投資やスペース確保の必要もない。

3:誰でも簡単に扱えるソフトウェア

各種設定を自動化・簡易化したソフトウェアによりティーチングコストの低減
把持登録や経路設定など、新規ワークの追加からピッキングの実行までに必要な設定を一部自動化することで、習熟度を問わず誰でも簡単に設定ができ、長時間を要していた設定作業の大幅短縮が可能です。これにより、最短20分でワークの追加を実現した。


データ活用で複数台のエンジン管理を効率化(オプション・開発中)
CADデータや稼働時のパラメータをサーバー上で一元管理でき、ワーク切り替え時のCADデータアップデートやパラメータ調整を、ロボットアームが稼働状態のままオフラインで行える。また、サーバー上に蓄積された異常画像などのエラー情報やパラメータのデータを使って、パラメータ調整や調整結果の確認も可能です。これにより、オフラインにてエラーの原因解析や再発防止策を検討できる。

主な性能

型番:(手前視野(mm) / 最適撮影視野(mm) / 奥側視野(mm)) NSP-150-1:(150×110×150 / 200×150×200 / 250×190×250)
NSP-250-1:(260×200×400 / 330×250×500 / 400×300×600)
NSP-500-1:(430×320×330 / 670×500×500 / 910×680×670)
解像度(pix) 高解像度モード:1408×1056 / 高速モード: 704×528
計測速度(fps) 高解像度モード:最大35 / 高速モード: 最大250
センサー重量(kg) 2.8
センサー寸法(mm) 191(W)×182(D)×78(H)
エンジン寸法(mm) 260×240×123
対応ロボットメーカー YASKAWA、FANUC、川崎重工、Universal Robots
(詳細は問い合わせ)
ソリューション別機能 ばら積みピッキング
2D/3D認識(部分的にも可)、自動干渉回避、把持位置簡易設定、リトライ機能

ビジョントラッキング
コンベア接続レス、高速位置補正機能、予測制御機能(補正終了時)、簡易エッジ編集


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ロボスタ編集部

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