ついに待望の機動警察パトレイバー「実物大イングラム」に搭乗して操縦できるパトレイバーラボ公開!先行体験レポート
「機動警察パトレイバー」のイングラムを操縦できる未来がやってきた!
搭乗型ロボットをプロデュースするMOVeLOTは、現実で搭乗/操縦できるイングラム「AVX-S30」を開発、一般体験チケットの10月分を9月15日の21時頃より販売開始する。現時点で販売が予定されているのは10月分(操縦体験は80枚)のみ。
このイングラムはコミックスやアニメ作品で登場する実物大レイバー(ロボット)の設定と同じサイズ。操縦体験ではコクピットに乗り込み、両腕や五指を動かすことができる。ロボスタ編集部は公開に先がけて、感動さえ覚えるほどかっこいいイングラムを見てきた。
ハードウェアはBRAVE ROBOTICS、ソフトウェアやシミュレータは尾路医科器械と協働で開発が行われている。
「パトレイバーラボ」は東京スカイツリーから徒歩約10分
イングラムが開発されている「パトレイバーラボ」は、東京スカイツリーを間近に見ながら「とうきょうスカイツリー駅」(押上駅)から徒歩で約10分のところにある。
開発が進められているラボは決して広いとは言えないが、巨大なイングラムが悠然と待機している姿を見ると身体中に感動が走った。
コミックスやアニメでイングラムを熱心に観てきた古くからのコアなファンの中には、もしかするとデザインに少しだけ違和感を感じるかもしれないが、この機体のデザイン、まもなく公開されるパトレイバーの新作『機動警察パトレイバー EZY』に登場する新イングラムのデザインをできるだけ忠実に再現したもの。フォルムも従来のデザインよりややスマート(細い)な印象だ。すごくカッコイイ。
イングラムは上腕と前腕の比率が人間とは異なっていて、武器を握る際に腕が伸びる機構がある。それらの部分もできる限り忠実に表現されている。
デザイン上、モーターがはみ出さないよう、BRAVE ROBOTICSが開発したオリジナルのアクチュエータが採用されている。その点にも注目したい。
作品と同様にシートが上にスライドして、イングラムの胸部から顔を出す機構が準備されている。それも体験可能になる予定だ。
ステップを昇って、くぐるようにしてコクピットに乗り込む。
ソフトウェアは『ロボトラ』で開発
ソフトウェアは尾路医科器械の『ロボトラ』のシミュレータ上で開発が進められている。ロボットの部位同士がぶつかったり、コクピットなど自身に触れることのないように自動制御が行われている。
■動画
チケットは3種類
チケットは9月15日のお披露目イベント(18時~19時30分)の終了後、21時からオンラインで先着販売が開始される。操縦体験ができるチケットは約80枚ということで、貴重なものになりそうだ。
取材した時点でのチケット価格(変更になる可能性がある)は、イングラムに搭乗・操縦できる「パイロットプラン」チケットが5,000円。イングラムが動作しているところを見て確認・点検する「工場長プラン」チケットが2,000円、静態展示を見る「観覧プラン」チケットが1,000円の予定だ。
販売されるのは10月1日~10月末日までのひと月分。その先の予定は未定となっている。
チケットを購入する手順は、まずLINEで「ROBOT BASE」を友達追加。販売開始の際に通知が来て、購入できる手順になるようだ(各自で最新の情報を確認してください)。
https://movelot.co.jp/rlOGtkKd/O97SYj7w
アロハシャツやTシャツなどのグッズ販売も予定されている。また、今回のイングラムのフィギュア(完成品)も販売される予定だ。
開発の経緯と苦労した点
開発が決まったのは2023年の春~夏頃。MOVeLOTから『機動警察パトレイバー』の版元であるHEADGEARに対して「操縦できるイングラムを開発したい」と申し出た。そこから約1年、ここまで急ピッチで開発を進めてきた。
MOVeLOTの代表取締役 廣井健人氏は、元SKELETONICS株式会社の代表取締役CEO。また、新宿の「ロボットレストラン」でインバウンド事業にも携わっていた経験を持つ。イングラムのプロジェクトで苦労した点を聞くと「ここまでは苦難の連続。そして、ここからがスタート」(廣井氏)という答えが返ってきた。
オリジナルのアクチュエータから開発
ハードウェアを担当しているBRAVE ROBOTICSは、勇者ロボ「ファイバリオン」や、自動車とロボットがトランフォームする「J-deite RIDE」の開発で知られている。「今回、モーター(アクチュエータ)はオリジナルで「ブレイブアクチュエータ」を開発しました。イングラムのスリムなボディや駆動機構からはみ出さず、ネットワークを含めて必要な機能が得られる規制のモーターがなかったからです。」(石田氏)という。オリジナルのアクチュエータによって、腕が伸びる機構や指も含めて50自由度が生み出されている。
ソフトウェアを担当している尾路医科器械は通常は医療システムの開発を行なっている。通常のロボティクス開発と今回のイングラムが異なっている点は、「業務用ロボットなどを開発する際は、各部の設計段階でソフトウェアとハードウェアでデザインや機能面を一緒に考えて検討していく手順で行われますが、イングラムは既に本体のデザインが決まっているので、プライオリティはデザイン、その中でハードウェアとソフトウェアが同時に開発を行っていくという点が難しいと感じました。」(尾路氏)
イングラムの下半身は開発予定?
これほどリアルな上半身ができると、気になるのはイングラムの下半身は開発のマイルストーンにあるのかどうか? と言う点だろう。答えは現時点では未定、下半身を開発する想定は今はまだない。
MOVeLOTの廣井さんは「私達が最も優先しているポイントは”誰でも乗れる、誰でも操縦できる”ことです。下半身を付けて自立するとなると危険が伴うので、乗れて操縦できるという点が制限される可能性があります。脚部が操縦できないとしても、ロボット本体の操縦席の高さが上がるので安全面で更に配慮が必要になります。しかし、これは私の個人的な考えで・・」(廣井氏)とした時点で、石田氏と尾路氏が「やりたい」と声を揃えた。
「身長2.5mのファイバリオンは歩行を開発中で、これを安定して動作させることができれば、8mのイングラムも可能だと思います」(石田氏)と語り、「ヒト型ロボットと謳う以上は脚部もあって欲しい」(石田氏/尾路氏)と続けた。
現状ではイングラムの下半身の開発については検討中のようだ。まずは上半身のイングラムがみんなに受け容れられるか、どのような声が寄せられるかにかかっているのかもしれない。
XRコンテンツと連携した機能追加を視野
将来の展開、今後のビジョンを聞くと、「より充実した操縦体験という意味では、将来的にXRのコンテンツとの連携が考えられます。リアルにイングラムが武器や銃を持って、更にXR上でその操作体験を付加することで、リアリティのあるパトレイバーの世界観を表現できるのではないかと考えています」(廣井氏)と語ってくれた。
また「既にいろいろな番組やイベントから声をかけて頂いているので、東京以外の地域にも移動して、多くの人たちにロボットに乗れて操縦できる体験を提供していきたい」と話してくれた。
とてもワクワクする世界が現実に拡がっていることを実感した。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。