NECとAGCは、建材一体型太陽光発電ガラス(「BIPV」)とガラスアンテナを活用した、屋内設置が可能な「景観配慮型サステナブル基地局」の実証実験を行い、通信の確立を確認したと発表した。
増加する基地局、設置場所に苦慮、景観にも影響
近年、モバイル通信インフラの需要増大と共に、5G/6Gにおいて比較的小さな通信エリアであるスモールセルの普及やそれに連動した複数のセルを配置する多セル化が進んでいるが、増加する基地局の設置場所の確保や基地局の外観が景観に影響を与えることが、モバイルキャリア(無線通信事業者)にとって課題となっている。
これらに対応するため、NECとAGCはBIPVと透明なガラスアンテナを組み合わせた景観配慮型サステナブル基地局の有効性の実証を行った。
景観配慮型サステナブル基地局の概要
景観配慮型サステナブル基地局は、BIPVとガラスアンテナ、無線機(RU:Radio Unit)から構成される。
建物の窓ガラスの屋内側にBIPVとガラスアンテナを設置し、室内にRUを据えることで、屋外に通信エリアを形成。これにより、周囲の景観を損なわずに新たな基地局を設置することが可能となる。また太陽光エネルギーを利用することで、モバイルキャリアのカーボンニュートラルの取り組みにも貢献する。
ユースケース
ビルの屋上などに基地局を設置する対策に加えて、窓を通して屋内から屋外にむけて通信エリアを形成することによって、ビル間やビル下の電波が届きにくい不感地帯の解消に貢献する。
実証内容と結果
今回、NECとAGCはNEC玉川事業場内においてNEC製の5G基地局とAGC製のBIPVおよびガラスアンテナの組み合わせによる接続実証を行い、以下の3点を確認した。
・オフィスビルの窓に設置したBIPVにより発電された電気を用いた5G基地局の起動および継続的な稼働
・5G端末を用いて通信ができること、およびスループット(単位時間当たりの処理能力)
・特定エリア内の電波強度やカバレッジを示す電波伝搬ヒートマップおよびアンテナ特性
これにより、本基地局の連続稼働が可能であること、および通信が正常に行われることが確認できた。
また、今回の実証実験により、5G基地局システムの約30%の電力を再生可能エネルギーによって代替できることが確認された。これは持続可能な通信インフラの実現に向けた成果の一つであり、再生可能エネルギーの利用を拡大する一助となる。
今後はペロブスカイト太陽電池などの次世代太陽電池を用いることも視野に入れながら、基地局の設置容易性を高め、さらなる再生可能エネルギーの活用に向けて取り組むとしている。
各社の役割
今回の実証における各社の役割は次の通り。
NEC | プロジェクトのとりまとめ 実証環境の提供とRUの提供、および実証の実施 |
---|---|
AGC | BIPVおよびガラスアンテナの提供 |
今後の展開
NECとAGCは、顧客にとって真に価値あるインフラを提供することを目指し、引き続き次世代通信の普及、および持続可能な社会の実現に向け、検討していくとしている。
【世界初】ドコモが窓に貼って室内からビル屋外へミリ波通信を届ける「透過型メタサーフェス」実証実験に成功
ドコモ、5G対応ガラスアンテナを広島テレビ「エキキターレ」に導入 広テレ本社一帯を5Gエリアに 注目の5Gガラスアンテナとは
窓ガラスが携帯の基地局になる NTTドコモとAGCが「窓の基地局化」で携帯電話向けのサービスエリアを拡充
この記事を読んだ人におすすめ
- ドコモとSpace Compass 空飛ぶ通信基地局「HAPS」のAALTO/エアバスに最大1億ドル出資 2026年の商用化をめざす
- NEC モバイル通信向け「高精度QoE予測技術」を開発 大規模言語モデル(LLM:生成AI)と映像認識AIも活用 自動運転やドローン飛行などに
- 実用化はNTTが2026年、ソフトバンク2027年以降、6G空飛ぶ基地局「HAPS」両社の特徴と実証実績を比較 衛星通信との違いを解説
- ソフトバンクがHAPSと地上基地局との周波数共用を実現 ヌルフォーミング技術実証に成功 電波の干渉を防ぎ電波を有効利用
- ソフトバンクのHAPS向け超大型機体「Sunglider」成層圏飛行に成功 米国国防総省が実施した実証実験で
- NECが茨城県日立市と石川県小松市でローカル5Gを使った自動運転レベル4を支援する通信システムを検証 各実証のポイント解説
- NTTがIOWN APNと無線システムをリアルタイムに連携制御、サーバ上でのロボット遠隔自動制御を実証
- NTTが宇宙ビジネス分野におけるブランド「C89」を発表 2033年度に1千億円の売上目指す 島田社長がブランド名称に込めた思い
- 【動画あり】ソフトバンク「テラヘルツ無線通信」実験に成功 Beyond 5G/6G向け車載通信を実演で公開
- NTTが300GHz帯で世界最高の160Gbpsデータ伝送に成功 遠隔医療や自動運転など 6G超高速無線通信への応用に期待