NVIDIAとトヨタが自動運転AI開発で連携 自動運転トラックでAurora、Continentalも連携追加 NVIDIAと連携する理由

NVIDIAは2025年1月7日、米ラスベカスで開催中の「CES 2025」において、NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティングとAIを活用して、消費者向けおよび商用向け車両を開発、構築しているグローバルモビリティリーダーたちのリストに、トヨタ自動車、AuroraおよびContinentalを追加したことを発表した。

「CES 2025」でのNVIDIA CEO ジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏の基調講演。連携する自動車メーカーのリストに「TOYOTA」のロゴが加わっている。以下、画像提供はNVIDIAのCES基調講演より

トヨタ自動車は、高性能で車載グレードの「NVIDIA DRIVE AGX Orin」システムオンチップ(SoC)を搭載し、安全認証を受けた「NVIDIA DriveOSオペレーティングシステム」上で稼働する次世代自動車を開発する。これによって機能的に安全で、高度な運転支援機能が提供される、としている。

新しいアーキテクチャー「Thor Blackwell」(ソー ブラックウェル)を自動運転車向けのプラットフォームにも搭載し、演算力の大幅な強化をはかる

NVIDIAは、次世代のBlackwellアーキテクチャーの開発を進めており、自動運転車向けの「NVIDIA DRIVE」も大幅に進化する予定だ。また、自動運転車の開発には、気が遠くなるほどの膨大な自動車走行のデータが必要だ。例えば、ある街の昼間の走行データ(ルートや建物、信号、標識、歩行者、自転車、対向車など)をAIが学習したとしても、朝、夜の景色は全く異なるため、それぞれのデータが学習には必要になる。

トレーニング用のシミュレーション(デジタルツイン)環境で最適な走行を学習するAI。NVIDIAとメルセデスは以前より連携している

更に、晴天、曇天、雨天、雪、路上駐車によってそれぞれのデータを学習する必要がある。更には道路工事など、予め予期できない事柄の対処にも備えて、AIに学習させなければならない。

リアルな街を再現したシミュレーション(デジタルツイン)環境を走行して学習するAI

シミュレーション環境では朝、昼、夜の切り換えが容易で、さまざまなパターンの状況をAIに効率的に学習させることができる

同じ街、同じ道でも、天候によって様子は全く変わってしまう。AIは多くのバターンを想定して学習・トレーニングさせなければならない。

また、刻々と変わる路上駐車の状況、工事中などの対応方法もAIは学習する必要がある。

シミュレーション環境では、工事中やパイロン、自転車や歩行者の危険な飛び出しなども自由に設定して、デジタルツインの中で再現できる

これらの膨大な走行データはNVIDIAとトヨタ双方で収集しているが、データ収集用の自動車を走らせてはいるものの、リアルなデータ収集はあまりにも膨大なデータが必要になり非現実的だ。そこで、NVIDIAとトヨタは、ともに双方別々にデータを収集してシミュレーションによってAIを学習させ、高精度化をはかっている(NVIDIA GTCイベントでは、これまでNVIDIAとトヨタの連携は何度もデモ公開されている)ものの、連携して開発に当たる方が合理的だと言えるかもしれない。これはロボットのシミュレーション環境での開発と同じ考え方だ(ロボットと自動運転が同じ技術と手順で開発されることはテスラCEOのイーロン・マスク氏もそう語っている)。

様々な街のルート映像をベースに(左)、天候や時間、歩行者の数等を切り換えて、デジタル環境(Omniverse with Cosmos)でトレーニングし(中央)、AIモデルのスキルを積み上げていく

NVIDIAの高性能化した新しいBlackwellの自動車向け開発環境「NVIDIA DRIVE」を活用すれば、NVIDIAが収集し、学習した高度なAIが使用できる。もちろん、自動車メーカーが独自に開発しているAIのデータやモデルも応用することができるだろう。

膨大な実走行データからAIが運転を学習し(左上のDGXなどのスーパーコンピュータ環境で学習)、右のデジタルツイン環境でトレーニングし(Omniverse with Cosmos)、自動車(エッジコンピューティング:AGX)にデプロイ、そのデータをAGXにフィードバックして精度を飛躍的に向上させる。NVIDIAはGPUだけでなく、ソフトウェアやデジタルツイン、トレーニングを含めて開発環境プラットフォームをすべて持っている


NVIDIAの自動車関連事業は、2026年度に約50億ドルへ成長を見込む

今日の自動車メーカー、トラックメーカー、ロボタクシー、自律走行配送車会社、ティア1サプライヤー、モビリティスタートアップの大半は、NVIDIA DRIVEプラットフォームとテクノロジをベースに開発している。クラウドでのトレーニングからOVX上のOmniverseでのシミュレーション、そして車内でのコンピューティングに至る最先端のプラットフォームにより、NVIDIAのオートモーティブ関連事業は、2026会計年度には約50億ドルに成長する見込みだ。

NVIDIA の創業者/CEO のジェンスン フアン (Jensen Huang) 氏は、

自律走行車革命が到来し、自動車は最大の AI およびロボティクス産業の一つになるでしょう。NVIDIA は、20 年にわたるオートモーティブ コンピューティング、安全に関する専門知識、そして CUDA AV プラットフォームによって、数兆ドル規模の自動車産業を変革していきます。

と述べている。

自動運転トラックを大規模に展開するための長期的な戦略的連携を発表

Aurora、Continental、NVIDIAは今週、NVIDIA DRIVEを搭載したドライバーレストラックを大規模に展開するための長期的な戦略的パートナーシップを発表。DriveOSを実行するNVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティングは、Continentalが2027年に量産を計画しているレベル4の自律走行システムであるAurora Driverに統合される予定だ。


他にも、BYD、JLR、Li Auto、Lucid、Mercedes-Benz、NIO、Nuro、Rivian、Volvo Cars、Waabi、Wayve、Xiaomi、ZEEKR、Zooxなど、多数のモビリティ企業が NVIDIA DRIVEアクセラレーテッドコンピューティングを次世代の先進運転支援システムや自律走行車のロードマップに採用している。

NVIDIAは、エンドツーエンドの自律走行車開発に不可欠な三つの主要なコンピューティングシステムとAIソフトウェアを提供している。

一つ目は、リアルタイムのセンサーデータを処理するためのNVIDIA DRIVE車載コンピュータだ。他の二つは、AIモデルとソフトウェアスタックをトレーニングするためのNVIDIA DGXシステムと、シミュレーションで自動運転システムをテストおよび検証するための NVIDIA OVXシステム上で動作するNVIDIA Omniverseプラットフォームである。

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ロボスタ編集部

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