
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と、日本電気株式会社は、Beyond 5G価値共創社会連携講座にて「Beyond 5G」共同研究技術の社会実装に向けた、新たな実証を開始したと発表した。
両者は、これまで次世代ネットワークとして、通信要件の予測と予測結果を元に、適切なデータ量を確実に提供する通信の実証を行ってきた。今回は、AI(知能システム)と機械(ロボット、IoT等)が高度に融合する、文部科学省が提唱する「フィジカル・インテリジェンス」をテーマにしたユースケースの検証を行い、その有効性の確認を進めている。
「フィジカル・インテリジェンス」とは
「フィジカル・インテリジェンス」とは、エッジの知能化等により、AIと機械(ロボットやIoT等のデバイス)が高度に融合することで実現する「AIが物理的動作を行うためのシステム」。これにより、AIの利活用が現実世界に拡がり、リアルタイムに高付加価値を還元するもの。
近年、サイバー世界での人とAIの「寄り添い」が注目されているが、東京大学とNECは、「物理世界へのフィードバック」も含めた「寄り添い」として、フィジカル・インテリジェンスが重要だと考えている。
フィジカル・インテリジェンスは、自然災害の深刻化や人口減少・少子高齢化等、2030年代のさまざまな社会課題の解決に期待されている。
AIが物理的な身体機能(ロボット等)を獲得することで、AIの利活用がデジタル世界だけでなく、これまで不可能であった物理世界へも拡大していくことが予想される。
今回、フィジカル・インテリジェンスのユースケースとして、ロボットが人を先導し重い荷物(買い物・災害時の水など)を持ちながら、各種センサー情報をAIで分析/フィードバックする実証実験を行なった。
ロボットのカメラ映像品質をネットワーク帯域と電波強度に応じて最適化
東京大学とNECの技術を組み合わせ、ネットワークの状況を把握し、AIによる映像分析に最適な映像と通信品質の制御を動的に行う「ネットワーク for AI(以下、NW for AI)」の実証試験を開始。
具体的には、ロボットに搭載したカメラの映像品質を、利用可能なネットワーク帯域と電波強度に応じてリアルタイムに最適化した。これを踏まえて、AI分析に十分な解像度を維持しながら、ネットワークリソースの効率的な制御を実現した。こうして、必要以上の帯域を使用することなく、AIが映像分析に基づき必要な情報をユーザーに通知する、NW for AIの有効性の検証を進めている。
また、人に寄り添うケースとして、オーナー(人)の行動を先回りして見通しの悪いエリアへ移動し、交差点などの危険の察知・通知を行う検証を実施。ロボットが交差点での危険性を察知し、オーナおよび周辺への通知を行うことで、人々に安全な生活を提供する。このユースケースは、子供連れや高齢者といった方々の生活を支援するパートナーとして活用することができる。
今回の実証実験を通じて、将来の社会課題解決につながるAIとロボティクスのユースケースに対して、東大とNECの技術を活用した次世代ネットワークの価値を創出していくとしている。
Beyond 5Gの社会実装を目指して更なる技術進化を行うと共に、通信事業者やさまざまな産業のパートナーを増やしながら、次世代ネットワークの技術検討、および適用ユースケースの拡大を目指す考えだ。
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