都留市でオンデマンド交通の実証運行を実施、AI自動音声応答の電話予約で送迎車が停留所に 95%以上の予約が正常に完了

三菱総合研究所は、2025年2月17日から2月28日の間、山梨県都留市、アイネスとともに、AI自動音声応答による乗車予約が可能なオンデマンド交通「AI(あい)つる~と」の実証運行を実施した。

実証実験の結果、95%以上の予約がAI自動音声応答で正常に完了し、7割以上の利用者が「大変満足」「満足」と回答したとしている。

背景


地域公共交通は住民生活や地域経済の基盤であり、地域活性化においても重要な役割を果たしている。しかし、日本の特に地方部では、人口減少や自家用車の普及などによる輸送需要の減少、担い手不足といった課題に直面している。こうした中、持続性確保と利便性向上に活用すべき新技術・デジタル技術として、「AIオンデマンド交通」「AI自動音声応答」「キャッシュレス決済」などが注目されている。




三菱総合研究所は都留市、アイネスと2024年8月に締結した「デジタル社会の実現に向けた包括連携協定」による事業化案の第1弾として、アプリではなく電話による予約を可能とすることで高齢者層の利便性向上を図るAIオンデマンド交通「AI(あい)つる~と」の実証運行を実施した。

概要

実証の概要

三菱総合研究所作成

都留市では2023年11月、専用アプリを使って予約するオンデマンド交通の実証運行を実施し、利用者から評価を得た一方で、「専用アプリの使い方が分からない」といった声や、予約受付のオペレーションコストの負荷が課題となっていた。
今回の実証運行では前回の課題も踏まえ、予約はアプリによる入力ではなく直接電話をかけ、流れてくるAI自動音声に対し利用者が応答する方式を新たに採用した。

実証運行の仕組み


予約を受け付けると、運行システム側では同一時間帯の他の予約者の目的地や到着時間も勘案し、最適な運行ルートを探索。その運行ルートは送迎車に配信され、ドライバーはそれに沿って複数の利用者を各目的地まで送迎する。利用者はあらかじめ配布されたバーコード入りの会員証を乗車時と降車時にドライバーに提示し、ドライバーが会員証をスマートフォン端末で読み取ると乗降確認のデータを取得する仕組みとなっている。

実証では運賃を無料としましたが、乗降時の会員証スキャンによりキャッシュレス決済を行う検証も併せて実施した。




利用者の評価


運行期間中、延べ100人弱の方々が利用し、利用後のアンケートにおいて7割以上の方が「大変満足」または「満足」と回答、また半数以上の方が「今後も自動音声予約を利用したい」と評価した。AI自動音声応答で予約が完了しないケースも想定し、オペレーターが対応するコールセンターへの転送も準備していたが、実際には95%以上の予約が自動音声応答で完了した。一方で、時間や停留所番号の聞き間違いといった、さらなる音声認識精度の向上などが新たな課題として浮き彫りとなった。

今後の予定

電話受付でのAI自動音声応答について、音声認識精度のさらなる向上といった課題はあるものの、オンデマンド交通の利用予約における高齢者層の利便性向上に寄与し得ることが検証できた。

これまでに顕在化した課題の解消を図るとともに、高齢者層以外への利用者拡大、利用時間・本数・エリアの充実、マイナンバーカードの会員証としての利用、住民ポータルとの連携など、より具体的な検討を進めていく予定としている。

今後も三菱総合研究所は、公共分野の事業開発における知見・ノウハウを活かし、包括連携協定各社から出てきたアイデアを具体化するために、検討事項整理、調整支援などを含めた企画推進に貢献するとのことだ。

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ロボスタ編集部

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