
株式会社鴻池組は2025年8月29日(金)、自社技術研究所でスリーブ検査システム「スリーブリング」と測量相番ロボット「スタッフィー」の公開実験を実施した。建設業界では熟練技術者の高齢化や人手不足が深刻な課題となっており、従来のスリーブ検査や測量業務は複数人で行う作業であったため、省人化と業務効率化が急務となっている。
公開実験は株式会社鴻池組つくばテクノセンター(茨城県つくば市)で実施され、日本コンピュータシステム株式会社と建ロボテック株式会社が協力した。
スリーブ検査の革新技術「スリーブリング」
スリーブとは、鉄筋コンクリート造の建物において配管や配線を通すためにコンクリート打設前に設けられる「筒状の穴」のことである。従来のスリーブ検査は職員や協力会社作業員が手作業で測定し、設計図面と照合していたため、膨大な時間と労力を要していた。
数百カ所に及ぶスリーブの径や取り付け位置の検査を行う必要があり、限られた時間内で効率の良い検査が求められている。これらの課題を解決するため、鴻池組は日本コンピュータシステム株式会社と共同で、スリーブ検査システム「スリーブリング」を開発した。
「スリーブリング」は、AIとARを活用し、検査時間の大幅な短縮と検査精度の向上を実現するシステムである。検査で必要なものは、専用アプリをインストールしたタブレットと、一般向けのプリンターで印刷可能なARマーカーのみで、運用時の用意・設置が容易になる。
検査結果はWebアプリを通じてリアルタイムに共有されるため、遠隔地からでも確認が可能。「スリーブリング」の活用により、検査時間を大幅に短縮し、AR上で設計データを重ね合わせることで、設計との整合性を瞬時に確認することができた。
省人化を実現する測量ロボット「スタッフィー」
従来の測量作業は2人1組で行う必要があり、人件費や工数の増大につながっている。そこで、鴻池組と建ロボテック株式会社が協力し、測量作業を自動化するロボット「スタッフィー」の開発に取り組んだ。
このロボットは測量用スタッフを鉛直保持するための保持テーブル、スタッフ回転機構、スプレー装置、移動用駆動輪などの機構を搭載している。遠隔操作用カメラシステムを搭載しており、ディスプレイ付きコントローラによる遠隔操作ができる。
公開実験の結果、保持テーブルと回転機構により、スタッフの鉛直精度を維持し、目盛面が測量装置の方向に適切に向くことを確認した。従来の2人作業と比較して、オペレーター1人で作業ができるため省人化が可能となる。
建設現場のDX推進
鴻池組は、今回公開した技術の更なる機能拡張や、これらDX・ICT技術の活用で、他の建設作業への応用、課題解決を検討していくとしている。
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