清水建設の現場データをリアルタイムにデジタルツインで再現 施工の進捗や安全状況を遠隔からでも確認可能に

コルク、ソフトバンク、アスク、セーフィーの4社は、2024年8月3日より、清水建設が建設中の相鉄鶴ヶ峰付近連続立体交差工事において、建設現場におけるリアルタイムデジタルツインの実現と活用の実証に成功したと発表した。

実証の背景

建設業界では、複雑な施工現場における品質管理や安全管理、そして刻々と変化する現場の状況確認をどのように実施するかが重要な課題となっている。これまでは、定期的な現場巡回による状況確認が一般的だったが、近年、クラウドカメラの普及により、映像・画像を通じて遠隔からリアルタイムで現場の様子を確認することが可能となった。

実証の概要


映像・画像情報に加え工事現場全体の状況をより詳細に把握するために、清水建設、コルク、ソフトバンク、アスク、セーフィーが連携し、施工現場のデータを仮想空間にリアルタイムで再現する「リアルタイムデジタルツイン」を導入。BIM/CIMクラウド「KOLC+」で構築した現場のデジタルツイン上に重機や作業員の3Dモデルを配置し、ソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill」で取得した誤差数センチメートルの位置情報と3Dモデルを連動させることで、リアルタイムな現場3Dを実現した。

さらに、ウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2 Plus」のリアルタイム映像を現実空間と同じ位置でデジタル空間上に配置させることで、視覚的に現場の状況が確認しやすくなった。これらの技術により現場での重機や作業員の正確な動きや位置情報をリアルタイムに把握し、現場に行かなくても施工の進捗や安全状況を確認することで、迅速な意思決定が可能になる。

例えば、俯瞰的に工事現場全体を把握することで、重機と作業員の動線確認や、現地で計測不可能な高さにある架線と重機との離隔、あるいは施工中の杭打機械の正確な位置をリアルタイムで確認することができ、不具合を未然に防ぎ品質向上につながっている。施工管理者は細部まで可視化されたデジタル空間のデータに基づいて精密な施工管理を行える。

実証実験の動画イメージ


今後の展開

アスク社が提供する四足歩行ロボット「Unitree Go2」による現場巡回によってさらに高度な情報収集による遠隔管理が期待されている。今回試行した四足歩行ロボットには、位置情報を取得する「ichimill」の小型デバイスプロトタイプ機、「Safie Pocket2 Plus」ならびにLiDARが搭載されており、巡回しながら様々な情報を取得することができた。このデータはリアルタイムで「KOLC+」のデジタルツインに反映され、巡回ルートや映像を3D空間上のプラットフォームにて確認できる仕組みができた。四足歩行ロボットによる自動巡回は、人による巡回作業の多大な時間と労力の削減、過酷な環境での負担軽減につながることが期待されている。

このようにリアルタイムデジタルツイン技術は、建設業界における施工管理の課題解決に寄与するだけでなく、施工の効率性や安全性を向上させ、将来的な建設プロジェクトの在り方を変革する可能性を秘めている。リアルタイムデジタルツイン技術により、建設現場の「遠隔での可視化」を先へと進め、よりスマートな現場管理が実現しつつある。

今後、関係各社と連携しながら自動遠隔巡視機能を四足歩行ロボットに実装し、360度パノラマカメラやSafieのカメラ、LiDARを搭載して走行させ、多様な情報を収集。これらの情報を「KOLC+」上のデジタルツインにリアルタイムで反映する予定。また、安全管理機能の拡張として、「KOLC+」のシステム上で立入禁止エリアを設定し、「ichimill」の位置情報を基に侵入を自動検知するシステムを構築する計画である。加えて、今回の検証結果を携帯電話などの通信ネットワークが整備されていない山間部などの不感地帯でも応用するべく、ソフトバンクの衛星通信サービス「Eutelsat OneWeb」を活用予定だ。「Eutelsat OneWeb」を用いることで不感地帯での応用を実現し、規定の通信速度を確保する帯域確保プランと機密性の高い閉域接続により品質の高い通信を可能にする。

セーフィーは「KOLC+」をはじめとするデジタルツインとの連携強化を進め、映像を活用した遠隔施工管理を支援する。具体的には、エッジAIを搭載した屋外向けクラウド録画カメラ「Safie GO PTZ AI」の立ち入り検知およびカウント機能を「KOLC+」と連携させることで、立ち入り禁止エリアへの侵入通知や作業エリア内の作業員数をデジタルツイン上に可視化する。これにより、遠隔でより詳細な現場状況の把握を実現する。

実証実験の期間 2024年8月3日~2024年11月27日
実証実験の場所 相鉄鶴ヶ峰付近連続立体交差工事(1工区)
今回の実証実験における各社の役割 清水建設:ユースケースの検討、現場実証管理
アスク:四足歩行ロボット「Unitree Go2」の提供
コルク:リアルタイムデジタルツイン「KOLC+」の提供
セーフィー:ウェアラブルクラウド遠隔カメラ「Safie Pocket2 Plus」の提供
ソフトバンク:プロジェクト管理、実験企画・推進、サービス化検討、位置情報の把握「ichimill」の提供


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ロボスタ編集部

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