“元気ですかー!”の絶叫とともに時代を駆け抜けたレジェンドが、最先端技術でよみがえる。1943年2月20日生まれのアントニオ猪木の生誕日に合わせ、ヒューマノイドとAIでその存在を具現化する「アンドロイド猪木」プロジェクトが2026年2月19日に始動を発表した。
人格や思想、記憶の継承という壮大なテーマを掲げ、実在感のあるヒューマノイドの完成を2027年2月20日までに目指す。この取り組みと挑戦は、エンターテインメントの枠を超え、「いのちの未来」を問う社会的実験となる。

リアル空間に立つ“猪木”をつくる
株式会社猪木元気工場、AVITA株式会社、SMBCバリュークリエーション株式会社の3社は2月19日、「アンドロイド猪木」プロジェクトの立ち上げを発表した。
発表会には、株式会社猪木元気工場代表取締役社長 猪木啓介氏、株式会社OSGコーポレーション 代表取締役会長・CEO 湯川剛氏、AVITA株式会社 代表取締役社長CEO 石黒浩氏、SMBCバリュークリエーション株式会社 アバタービジネス統括 棚橋亨太氏が登壇した。

これまでにもバーチャル空間上の「AI-猪木」や、ホログラムによる「猪木ロイド」プロトタイプの発表が行われてきたが、今回はそこから一歩進み、実在感を伴うヒューマノイドとして“リアル空間に存在する猪木”を実現する構想だ。1年以内にAIとアンドロイド双方の開発を進め、2027年2月20日のお披露目を目指す。

そして会場では、「つかみ」として、これまでの取り組みの延長線上にある「AI-猪木」のデモ映像が投影された。
■これまでの取り組みの延長線上にある「AI-猪木」のデモ映像 ©猪木元気工場/AVITA/SMBCバリュークリエーション
完成がゴールではなく、イベント、展示、メディアなどを通じて社会の中で活用しながら育てていく“進化型プロジェクト”として位置づけられている。
「人格・思想・記憶」をどう継承するか
技術面を担うのは、アンドロイド研究の第一人者である石黒浩大阪大学栄誉教授が率いるAVITA。
石黒氏は、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」で、人間とロボットの境界が溶け合う社会像を提示してきた。本プロジェクトは、その思想を具体的な形で問う試みでもある。

今回の発表では、「人はどこまで技術で自らを拡張できるのか」「アンドロイドによって人格や思想、記憶はどのように継承され得るのか」という問いだ。
一方で、尊厳の保持や悪用防止といった倫理面への配慮も重要な論点となる。3社は活用用途ごとに適切性を判断する体制を整え、慎重に社会実装を進める方針を示した。
社会実装へ向けた三段階構想
活用方針は大きく三つに整理されている。
第一に、いじめ防止や特殊詐欺への注意喚起など社会性のあるメッセージ発信。
第二に、企業広告やCMなどの民間利用(ブランドイメージを損なわない範囲に限定)。
第三に、100年先の青少年が人生相談できる存在としての社会奉仕である。

また、ロードマップも三段階で描かれている。
フェーズ1では象徴的モデルとしてアンドロイド猪木を確立。
フェーズ2では著名人や経営者への展開と運用モデルの標準化。
フェーズ3では教育、文化、企業レガシー、個人向けへと広げ、社会実装を目指す。

各社の役割
本プロジェクトにおける各社の役割分担も明確だ。猪木元気工場は、アントニオ猪木のIP(知的財産)管理および企画全般を担い、ブランド価値と世界観の統括を行う。AVITAは、アバターやAI、ヒューマノイド/アンドロイドに関する中核技術を提供し、実装面を支える。SMBCバリュークリエーションは、プロジェクト全体の運営と事業化、サービス拡大を担当する。さらに3社は連携し、AIおよびアンドロイド猪木の活用用途について、その都度、社会的妥当性や倫理面に問題がないかを確認する体制を構築。技術とビジネスの両面から、慎重かつ持続的な展開を目指すとしている。

1960年にデビューし、1972年に新日本プロレスを旗揚げ。「元気ですかー!」「1、2、3、ダァーッ!」の名言で一世を風靡し、晩年は参議院議員も務めた猪木さん。その闘魂は、日本社会に強烈な足跡を残した。
「アンドロイド猪木」は単なる著名人の復活を目指すプロジェクトではない。時間を超えて思想と存在を継承しようとする試みであり、テクノロジーによる人間拡張の象徴ともなる挑戦だ。
リングを去った闘魂は、シリコンとアルゴリズムをまとい、未来世代と向き合うことができるのか。2027年2月20日は、日本のロボティクス史に新たな問いを投げかける日になるかもしれない。







