一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)は2026年9月30日、経済産業省および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業の一環として実施する「国産汎用ロボット開発コンペティション」で、株式会社Enactic、THK株式会社、株式会社不二越、ugo株式会社の4社(五十音順)を改良機開発フェーズの進出企業に選定したと発表した。
採択企業7社が約6カ月間にわたって開発した試作機を評価した結果で、選ばれた4社は今後、量産を見据えた改良機の開発に進む。
双腕モバイルマニピュレータの開発を促すコンペ
本コンペティションは、国内における汎用ロボット(双腕モバイルマニピュレータ)の開発促進を目的とするもの。経済産業省とNEDOの委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ロボティクス分野の生成AI基盤モデルの開発に向けたデータプラットフォームに係る開発」の一環として実施されている。
この事業ではロボットの基盤モデル開発に必要なデータ収集プラットフォームの構築を進めており、コンペを通じて開発される国産の汎用ロボットは、そのデータ収集用ロボットとして活用される予定だ。
3つの観点で試作機を評価
AIRoAは完成した試作機を、次の3つの観点から審査した。
実演評価:AIRoAの平和島拠点に構築した評価用のデモ環境で、家庭・小売・製造・物流の現場を想定した多様なタスクを実演し、達成度を評価した
定性評価:実演をもとに、ロボティクスの専門家で構成する評価委員会が、動作品質・操作性・デザイン・機能性といった観点から完成度を評価した
実用化要件評価:各社が提出した量産計画や保守体制などの計画から、実用化に向けた実現性を評価した
定性評価の委員は、AIRoA理事長で早稲田大学教授の尾形哲也氏、京都大学大学院准教授の川節拓実氏、東京大学大学院講師の河原塚健人氏が務めた。
進出4社のコメント
選定された各社は、今後の開発展望について次のようにコメントしている。
株式会社Enactic:オープンソースのロボットアームとして活用されている「OpenArm」の思想を継承したモバイルマニピュレータの開発に挑戦した。代表取締役の森大二郎氏は、コンペの課題への最適化にとどまらず、実際の作業での操作性や実環境での運用を重視した調整にも注力したと説明する。今後も、より多くの人が開発を加速できる基盤の構築を進めるという。
THK株式会社:改良フェーズで安全性、堅牢性、運用時のUXの向上に取り組み、より実用性の高いロボットに進化させるとしている。LMガイドをはじめとする機械要素技術と、セミヒューマノイドロボットの実証実験で培った知見を生かし、ロボット向け基盤モデル開発の加速に貢献する考えだ。
株式会社不二越:1968年からロボット事業を手がけてきた。取締役常務執行役員でロボット事業部長の国崎晃氏は、質の高い基盤モデルの開発には質の高いデータ収集が必要で、そのためには質の高いロボットが欠かせないと述べている。長年培った産業用ロボットの技術をベースに、実用的で信頼性の高い汎用ロボットを速やかに完成させるという。
ugo株式会社:量産を見据えた設計のブラッシュアップとメンテナンス性の向上設計を進める。あわせて、実環境での導入に必要な機能を順次実装し、代表取締役CEOの松井健氏は、研究開発の枠にとどまらず現場で実際に使われる汎用ロボットの社会実装に向けて開発を加速すると語った。
改良機開発フェーズは2027年3月まで
各社は改良機開発フェーズで、機能性と、安全性・信頼性のさらなる向上に取り組む。同フェーズは2027年3月までの予定だ。AIRoAが設定する評価基準を達成した企業は量産体制の構築に進み、2027年7月以降の量産機の納入と、データ収集用ロボットとしての活用開始を目指す。
AIRoAは今後も産学官が一体となった取り組みを軸に、フィジカルAIの社会実装とオープンなエコシステムの構築を推進する。コンペで培った技術や知見を礎に、国内の汎用ロボティクスのサプライチェーン強化と技術の共進化を加速させ、NEDO委託事業で得られた成果を社会に還元するとしている。
ロボスタオンラインセミナー情報
ロボスタでは、国産のヒューマノイドや四足歩行ロボットの開発・量産を目指すHighlandersの増岡宏哉CEOをお招きし、オンラインセミナー「国産ヒューマノイド『N』量産と知能化への挑戦 Highlandersが描くフィジカルAIと実世界データ戦略」を10月22日(木)に開催します。

Highlandersは、三菱自動車の工場で活用するヒューマノイドロボットの共同開発と、京都製作所京都工場におけるHighlanders製品の量産化について協議を進め、2027年の早い時期の生産開始を検討しています。
また、ロボットを製造、物流、インフラなどの現場で稼働させ、視覚、力覚、触覚、遠隔操作などの実世界データを蓄積。そのデータを独自のフィジカルAI基盤モデルの学習に活用し、進化したAIを再びロボットへ展開する「データフライホイール」の構築を掲げています。
セミナーでは、国産ヒューマノイドの社会実装と量産、日本発のフィジカルAI産業の可能性などについて深掘りしていきます。ぜひご参加ください。
詳しくはこちら