AIスタートアップ企業の最優秀作品を選ぶ「Inceptionアワード」、受賞したのは「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」【GTC Japan 2018】

NVIDIAが主催する、GPUやディープラーニングなどAI関連技術のカンファレンス「GTC Japan 2018」において、優秀なAIスタートアップ企業を選出する「Inceptionアワード」が開催された。8社が登壇してプレゼンテーションを行った結果、「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」を提案したAIメディカルサービスが最優秀賞を受賞、NVIDIAの最新GPU製品が贈られた。

NVIDIA Inceptionアワードを受賞した株式会社AIメディカルサービスのCTO、青山和玄氏


Inceptionアワードとは

NVIDIAはAIスタートアップ企業をさまざまな形で支援するアクセラレータ「Inception プログラム」を実施している。現在国内では100社以上がパートナーとして支援を受けている。
今回、日本で開催された「Inceptionアワード」は、日本のパートナー企業の中からまだ小規模な企業約50社を対象に応募を募り、応募のあった企業の中からNVIDIAが選別した8社が当日の大会へとコマを進めた。登壇した8社は一般参加者に向けて自社の技術、ソリューションとビジネスプラン等をプレゼンテーションし、「Inceptionアワード」の最優秀企業が決まった。(なお、シリコンバレーで開催されている「GTC 2018」の「Inceptionアワード」の様子は記事「【GTC 2018】多脚ロボットvsロボットアーム!最も評価されたAIスタートアップ企業3社を発表「NVIDIA Inception アワード」決勝大会」を参照)

対象となる分野はロボット制御、自動車ドライバー支援、医療画像機器、各種産業向け画像認識、ビジネス・プロセス最適化、データベース解析高速化、B to Cサービスなど多彩で、これらの分野を超えて、スタートアップ企業が競うことになる。登壇した8社は下記の通り。


登壇パートナー企業:
株式会社 Pyrenee
 ”自分のクルマに簡単に付けられる運転支援デバイス”の開発
HeteroDB 株式会社
 GPUを用いたデータベース高速処理技術の開発(昨年度Inception アワード優勝)
株式会社 DeepX
 「人工知能であらゆる機械を自動化する」東京大学松尾研発ベンチャー
株式会社 Laboro.ai
 AI技術を用いたソリューション開発事業、AI活用に関するコンサルティング事業
株式会社 EmbodyMe
 顔写真から3Dモデルのアバターを作成して、他のユーザーと交流できるアプリを開発
株式会社 AIメディカルサービス
 内視鏡×AIで全世界におけるがん見逃しゼロの実現を目指す医療ベンチャー
LiLz 株式会社
 IoTと機械学習技術を活用した課題解決ができるサービス/プロダクトを提供
株式会社 リッジアイ
 ビジネスニーズに最適化したAI技術(コンサルティング、ソリューション開発)を提供

「Inceptionアワード」当日は、下記のメンバー3名が審査員となった。

・アーキタイプベンチャーズ株式会社 パートナー  福井俊平氏 
・産業革新機構 戦略投資グループ アソシエイト 小沼真幸氏
・エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業部 スタートアップ・技術パートナー連携責任者 山田 泰永氏

審査は以下の項目を重点的に見て、最終的に「自分だったらどこに投資をするか」という観点で最優秀企業を選出した。

選考基準:
事業内容やビジネスモデルの新規性・ユニーク性、GPUの活用の度合 等
・課題が明確であり、課題の社会的意義も高い
・初期プロダクトが完成している
・今後の開発プランも明確である
・確実にマーケットが存在している。また、そこにどのようにアクセスするか(またはすでにしているか)のプランも具体性がある
・学習環境、実行環境ともにGPUを有効活用している


最優秀書に輝いた「内視鏡AIでがんの見逃しゼロへ」

前出のCTO青山氏によれば、内視鏡の分野は日本が世界をリードしている数少ない分野だと言う(世界シェアで日本企業が7~8割を占める)。そんな分野でも専門医は大きな課題を抱えている。それは、内視鏡の画像から「がん」をみつける作業を専門医がダブルチェックする読影会を月に2回行っているが、医師1人につき70症例、1症例につき内視鏡画像を40~50枚を行う。すなわち、合計で70症例×40枚の2,800枚の画像を短時間にチェックする必要があると言う。

内視鏡画像からAIががんを検知する。現在ではさまざまながんに対応している

この課題を解決するため、同社は取り組んだ。最初は内視鏡画像からピロリ菌の感染診断を行うAIを開発したところ、医師23名の平均値をAIの診断精度上回った。それを世界初ということで大阪国際がんセンターとともに論文で発表。その後、胃がんについても癌の画像をもとに機械学習したAIを開発し、世界初として論文を発表、平成30年にがん研究会とともにプレスリリースを行った。そのときの検出精度は6mm異常の胃がんで98%を達成した。その際、1画像の診断にかかる時間はわずか0.02秒で処理、2,296枚の画像を47秒で診断処理する。


既にプロトタイプが開発され、大阪国際がんセンターに設置が完了、まもなく臨床試験が開始される。
あくまで最終的な診断は医師が行うことになるが、AIが高速な解析で医師を支援し、「見逃しゼロ」の世界を目指していく。


審査員は、今回このシステムを最優秀賞に選出した理由として、具体的な社会問題の解決に繋がること、既にメディカルドクターが実際に使用していて現実性と市場性があること、そしてGPUとディープラーニングを適切に使用していることなどを決め手としてあげた。
ICTやAIが人間を支援し、人々の安心や安全が向上する・・まさに社会が目指すべき姿だろう。


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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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