パナソニック、fuRoと開発中のロボット掃除機コンセプトモデルを公開 業務用ロボット掃除機「RULO pro」のセミナーも


2018年に創業100周年を迎えたパナソニック株式会社が、10月30日(火)〜11月3日(土)の日程で「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」を開催中だ。3日目の11月1日には、2017年12月から「パナソニック・千葉工業大学産学連携センター」を設立して共同開発中の学校法人千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)と開発した、次世代ロボット掃除機のコンセプトモデルが同アプライアンス社から公開された(https://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/11/jn181101-3/jn181101-3.html)。

外見は同社が販売中のロボット掃除機「RULO」と似ている。一番大きな特徴は本体上部にあるレーザ距離センサとディープラーニングを使った独自の「AI床センサ」。床上の物体を認識して、その段差に応じて本体を事前に持ち上げる。

それによって従来のロボット掃除機が苦手とする「ふさ飾りのついたラグ」のような敷物の上でも問題なく踏破・走行して、掃除を続けることができる。


任意の敷物を踏破できるという

本体を押し上げているのは車輪で、左右それぞれに1自由度が追加されている。ディープラーニングをどのように使っているのかについての詳細は明かされなかった。


見た目は既存のルーロと変わらないが、内部にモーターが二つ追加されていて本体を押し上げる

千葉工大fuRo独自の高速・高精度な空間認識技術「ScanSLAM」を活用して、部屋の形状だけではなく、室内で動く人も検出し、その後をついていくことができる。

タブレット端末と組み合わせて、室内の任意の場所に移動させたりすることで、スポット掃除をさせたり、人と協調して掃除を行うことができる。


タブレット端末で掃除場所その他を指定することも可能

充電台にも特徴があり、ドッキング後に本体を電動で縦置き状態に吊り上げることができる。これによって充電中のフットプリントを小さくできる。

知能白物家電だがアジャイルな開発体制をとることで約3ヶ月で完成させた。デザインは、プロダクトデザイナーの山中俊治氏がパナソニックの社内デザイナーである岡部健作氏らと共同で手がけた。パナソニックでは「デザインとエンジニアリングの双方でオープンイノベーションを推進したことも本開発プロセスの特長」だとしている。


デザインは山中俊治氏とパナソニック社内デザイナー岡部健作氏らの共作

今後、実証実験を重ねて、来年度以降の商品化を目指す。


今後実証実験を重ねる


業務用掃除機「RULO pro」もビジネス展開中

業務用掃除機「RULO pro」

また同日、2018年6月に発表された(https://news.panasonic.com/jp/press/data/2018/06/jn180608-1/jn180608-1.html)、ビジネス展開中の業務用ロボット掃除機「RULO pro」に関するセミナーも行われた。4種のセンサーと独自のSLAM技術を用いて、事前に与えられた地図を元に動作する。受注生産で、2018年7月から発売している。


業務用掃除機「RULO pro」の商品概要

基本的にはエレベーターで清掃フロアまで持っていき、そこからスタートさせて、またそこへ戻ってこさせるような運用形態を想定しているという。250平米を75分間くらいかけて掃除できる。

バッテリーには、電動アシスト自転車に用いている高性能バッテリーを流用した。カートリッジ式で簡単に取り外しができる。


内部

バッテリーはカートリッジ式

また、作業を効率化するために、紙パック式でゴミ捨てができるようにした。

樹脂成形技術で本体を軽量化した。ハンドルを装備し、キャスターで簡単に運搬できる。

簡単に運搬可能。ハンドルもたたむことができる。

運行状況はリアルタイムにスマホに通知される。ドライブレコーダーをオプションで搭載でき、撮影録画ができる。


スマホ連携

ドライブレコーダーはオプション

日本全体で進む少子高齢化・生産年齢人口減少の結果、ビルメンテナンス業会でも高齢化が進んでおり、清掃員の平均年齢は52.2歳。そこで高齢の現場作業員でも簡単に操作できるように操作は単純化した。コストは最初の地図作成などによって異なるが、一つの目安として、従来の同様のロボット掃除機のおよそ2/3くらいを狙っているという。

なお、ビルメンテナンス事業の市場規模は3兆円強。清掃管理業務だけ見ても1.2兆円以上の大きな市場だ。ビル清掃事業に参入することは、アプライアンス社にとっても大きなチャレンジだという。


1.2兆円以上あるビルメン清掃管理業務市場への挑戦

民生用と業務用掃除機に求められる仕様は大きく異なる。業務用では毎日使われるものであり、いかに早く、確実に清掃業務を遂行するかが重要になる。また土足で歩く場所を掃除するので、砂など重量のあるゴミを吸わなければならない。


業務用と家庭用の違い

これらの課題を解決して商品を開発する必要があり、その回答の一つが「RULO Pro」だとパナソニック株式会社アプライアンス社 クリーナー事業総括担当の岡内理氏は語った。なおロボット内部のシステムLSIは今回発表された家庭用掃除ロボットのコンセプトモデルと同じものが使われており、家庭用と業務用、相互に技術を培って発展させていくという。


パナソニック株式会社アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業総括担当 岡内理氏

パナソニックの掃除機技術

なお現在展開中の「MC-GRS1」はビルの共用部門の掃除を目的に開発したモデルだが、今後さまざまなニーズに対応するために、大型商業施設などより広いスペース用の中型ロボットや、逆にコンビニやオフィス内部などの小型店舗用のロボットの開発も進めている。


より大型、小型のモデルも開発中


家電で培った技術を業務用にも展開し、新たな暮らしの価値を提案

パナソニック株式会社 執行役員 アプライアンス社副社長 大瀧清氏

パナソニック株式会社 執行役員 アプライアンス社副社長の大瀧清氏は、アプライアンス社の事業について「家電が8割、残り2割が業務用事業」と紹介。これまでの家電事業を通して培った丈夫で長持ち信頼性が高く、そして使い勝手が良いものづくりに加え、AIやIoT技術を組み合わせることで新たな暮らしの価値提案をしていきたいと述べた。


アプライアンス社の事業は家電が8割、残り2割が業務用事業

深刻な人手不足と高齢化に苦しんでいるビルメン業界向けの業務用掃除機は「これからの社会に提供できるお役立ちの一つ」であり、社会のあらゆるところに寄り添うパナソニックを目指す、次の100年に向けた新たな挑戦に期待してほしいと語った。


家電で培った技術を業務用にも

ABOUT THE AUTHOR / 

森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

PR

連載・コラム