【三菱地所と立命館大学】ロボット活用で戦略的パートナーシップ協定を締結 自律運搬・警備・コミュニケーションロボットなどをキャンパスで実証実験

三菱地所株式会社と学校法人立命館は、清掃ロボット、警備ロボット、運搬ロボット等を活用した次世代型の施設運用管理モデルの構築を目指し、実証実験および実用化に向けた「戦略的DXパートナーシップ協定」を結ぶことを発表し、三菱地所の吉田社長と立命館の仲谷総長が調印式を行った。

調印後に握手をかわす三菱地所の吉田社長と立命館の仲谷総長

まずは、自動運搬車(AGV)の「EffiBOT」と「Marble」、コミュニケーションロボット「EMIEW3」、掃除ロボット「Whiz」、警備ロボット「SQ-2」、パーソナルモビリティ「WHILL」を立命館のキャンパスに導入し、実証実験が行われていく予定だ。

自動運搬ロボット「EffiBOT」は人に追従して移動し、更には自律的に単独でも移動することができる。三菱地所では災害対策用の土のうの運搬などで実験を行ってきた。それに乗っかっているのがコミュニケーションロボットの「EMIEW3」

警備ロボット「SQ-2」(写真左)は三菱地所が現時点で最高レベルの警備ロボットと評価する。右はソフトバンクロボティクスの自律清掃ロボット「Whiz」で、三菱地所は約100台の導入を発表している

自動運搬ロボット「Marble」は立命館大学が、日本では初めての実証実験となると言う。


■WIREDの動画「Marble」


新たな社会「Society5.0」をめざす

三菱地所は東京丸の内エリアや横浜ランドマークタワーなどで、ロボットやモビリティを使った様々な実証実験を行っているが、「戦略的DXパートナーシップ協定」としては今回が、初めての締結となる。(DXはデジタルトランスフォーメーションの略)

三菱地所株式会社 執行役社長 吉田淳一氏

登壇した立命館の仲谷氏によれば、立命館は現在「挑戦をもっと自由に」をキーワードに学園ビジョンR2030を掲げており、そのうちのひとつとして「未来社会を描くキャンパス創造」をあげ、これにはロボットの活用が重要な要素となると語った。

学校法人立命館 総長 仲谷善雄氏

締結の主な内容としては下記をあげている。

清掃ロボット、警備ロボット、運搬ロボット等を含めた最先端テクノロジーの最適な活用方法等について調査、検討し、実証実験に向けた検討を行う。
施設運用管理に関する効率化、高度化に取り組む。
人とロボットの協業実現を前提とした社会実装のための課題解決を行う。


ダイバーシティ/学校のキャンパスは実証実験に最適

立命館によると、大学生は約4.1万人、留学生が約5千人、小学生から高校生が約7千人、障がいを持つ学生が123人など、学園のキャンパスはダイバーシティが進み、まさに社会を凝縮した空間とも言える。キャンパス内の道路は道路交通法の規制も及ばない。その意味では、効率化や自動化を検証する実証実験の場として、多くの人たちの反応や意見を収集する場として最適な場所のひとつと言える。

学校法人立命館 契約課長 久米達也氏


導入台数はキャンパスや施設などの場所によって変わってくる。掃除ロボットの「Whiz」や警備ロボット、コミュニケーションロボット「EMIEW3」については大阪茨木キャンパスから導入をスタートする見込みだ。「Whiz」は複数台の導入を考えているが、どのくらいの面積を何時間で清掃しなければならないかを今後検討して台数を決めていくとした。
運搬ロボットは「EffiBOT」と「Marble」を予定していて、大きなキャンパスや施設で書類や食べ物などを運ぶ業務から実験していくようだ。これらも各1台から導入して検証を進める。


警備ロボットも同様に、将来的には複数台の導入になるが、まずは1台から検証を行っていく。コミュニケーションロボット「EMIEW3」も1台から導入をはじめ、立命館大学の入学式に活用、新入生に歓迎の挨拶をおこなったり、学生との簡単なコミュニケーションから実験からスタートする。また、多言語対応が可能なので、将来は外国人留学生や外国からの来客の応対にも展開していきたい考えだ。

三菱地所株式会社 DX推進部(4月に新設) 統括 渋谷一太郎氏

立命館によると、キャンパスによって敷地や施設の環境が大きく異なると言う。例えば、びわこ・くさつキャンパスはゴルフ場ハーフ分くらいの広大な面積があり、そこに50棟の施設が建っているため、移動したり、書類の受け渡しだけでも大きな負担になるという。そのような環境には自動運搬車の働きが期待されると言う。また、大阪は巨大な長い1棟の建物のため、雨の日でも濡れずに室内を移動できる環境にあると言う。そこではロボットへのニーズも大きく異なる。このようにキャンパスによって、必要とされるロボットとその役割が大きく異なる見込みだ。



キャンパスでの実証実験を社会へ反映

ロードマップとしては、2019年度上半期に試験導入を開始、キャンパス管理の効率化や高度化を目指し、下半期には導入効果を検証、コストの最適化やキャンパス管理の仕様変更も検討する。これを経て、2020年上半期に次世代キャンパス管理モデルを構築し、最終的には「ロボットキャンパス実装ガイドライン」を策定するとともに、それをもとにした「ロボット社会実装ガイドライン」を政府含めて提案していく考えだ。


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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