【ロボットソリューションの未来】ユニキャストロボティクスパートナーサミット参加レポート、プラットフォーム化のメリットを語る

2019年7月26日、東京浜松町の世界貿易センタービル(WTCコンファレンスセンター)で「ユニキャストロボティクス パートナーサミット 2019」が開催された。株式会社ユニキャストが主催するイベントで、最新のサービスロボットの動向や、同社が発表した「UnicastRoboticsプラットフォーム」のパートナー参加を促すものだ。

ハタプロ・ロボティクスが提供する「ZUKKU(ズック)」は、身長わずか10cm、手のひらサイズのマーケティング支援AIロボット。SIMカードを内蔵する。IBM Watsonや画像認識AIなど、さまざまなシステムとの連携できる

ヴイストンのコミュニケーションロボット「Sota」。NTT東日本のロボコネクトでも活用されている。会社の受付や観光案内などに人気

会場にはハタプロの「ZUKKU」、ヴイストンの「Sota」、ソフトバンクロボティクスの「Pepper」、iPresenceの「Temi」などが展示された。

Teleporation as a Service (TaaS)のインテグレーター、iPresence社は遠隔操作ロボット「Temi」を展示

また、先日パートナーシップを発表したばかりのGateBoxシステムも公開された。GateBoxのキャラクターと言えば、コンスーマ向けの通称「俺の嫁」の「逢妻ヒカリ」か「初音ミク」だったが、この日はお馴染み「ユニティちゃん」がGateBoxシステムの中に登場した。Gateboxはビジネス向けに展開する「Gateboxビジネスパートナープログラム」を発表し、それにユニキュストが参画を表明したことで実現したデモだ。
ユニキャストがこのように多くのロボットを展示している理由は、「UnicastRoboticsプラットフォーム」を利用することで、開発者はユーザーのインタフェースとなるロボットをさまざまな選択肢から選べるようになることを示すものだ。また、ロボットだけでなく、Gateboxシステムのように3Dモデルから動くキャラクターを起用できるようになることを示唆している。

Gateboxとユニキャストは7月24日に、バーチャルホームロボット「Gatebox」のビジネス活用で基本合意したばかり

ユニティちゃんがGateboxの中に登場!

例えば、ユニキャスト社は今まで、受付やアンケートシステムなど、ロボティクスを使って50社以上の案件を開発してきたが、機能やシステムをモジュール化し、ロボット自体はPepperやSotaなどから選択できるようにプラットフォーム形態の開発をしてきた。今回はその思想を拡げ、多くのパートナーに開放して共有するエコシステムを作ろうというものだ。開発パートナーは音声合成、顔認証など自社が持つ要素技術やロボティクス技術をビジネスに繋げ、販路を持つパートナーは開発期間が短くローコストでソリューションを提案できるようになる見込みだ。

ホログラムのように3Dキャラクターが動くディスプレイ「The Looking Glass」でも質問に回答するユニティちゃん登場。ディスプレイの中で立体に見える

■動画 展示ロボット&3Dバーチャルアシスタントたち


UnicastRoboticsプラットフォームとは

オープニングセッションに登壇したユニキャスト代表取締役の三ツ堀氏は、これからの日本の深刻な課題として、「少子高齢化」「労働者人口の減少」「地方の過疎化」に注目し、ロボット・ソリューションでこれらの解決に挑むとした。ユニキャスト社がロボット事業を始めたのはPepperがきっかけ。Pepper関連のシステムを開発しはじめ、Sotaなど他のロボットの開発へと展開した。その際に、できるだけソフトウェアを再利用できるようにモジュール化した。ここまで導入した事例は約50社(無償のPoC案件は含めず)。それらをピックアップし、どのようなテクノロジーが使われているかも紹介した。
また、「ロボットあるある」と題して、今の技術で何ができるかわからない、そもそもロボットで何をすればよいのかわからない、契約に至らないPoC地獄、ロボット導入の費用対効果が見えにくい、ロボットが壊されないか心配などをあげた。

株式会社ユニキャスト代表取締役 三ツ堀 裕太氏

また「UnicastRoboticsプラットフォーム」については、すべてのユーザに必要となる共通の機能、通信、課金・決済、障害管理、リモート制御などを「ユニキャストロボティクスコア」として提供、「ソフトウェア」は再利用性を重視してモジュールとして、音声認識、音声合成、チャットボット、顔認証、広告配信、各種案内、発券、印刷、ドア開閉、各種システム連携等を提供していく予定とした。そしてハードウェア(デバイス)として、様々なロボットを手軽に入れ替えて構築できるようにする構想だ。今回のイベントやプラットフォームを「業界・目的特化型のソリューション展開に向けて、強固なパートナーシップのきっかけになって欲しい」と語った。

株式会社ユニキャスト ロボティクスチーム 開発リーダー 桐林颯氏

また、同社ロボティクスチームの開発リーダーである桐林氏は、ソリューション開発の課題として「大規模なシステム」「多様な要素技術」「業界に対する知識」をあげた。大規模なシステムについては、カメラやセンサー、タブレットとロボット、クラウドサービスなどの連携によって、たくさんのシステムの連携が必要となる点が課題となる。「多様な要素技術」については音声合成、音声認識、顔認証、ロボットのモーション制御、更にはチャットボットなどの組込みなど、多くの技術を積み重ねてひとつのシステムを構成することになる点に触れた。「業界に対する知識」は、ソリューションを導入する業界に対して環境、作業フロー、スタッフと利用者の属性などについての知識が重要になる。
これらの課題を解決するのが「UnicastRoboticsプラットフォーム」だ。パートナープログラムとしては「VAR(付加価値再販)パートナー」と「テクノロジーパートナー」が用意されている。







ロボットソリューションの未来とプラットフォーム化のメリット


基調講演

セッションプログラムの基調講演として芝浦工業大学が登壇した。芝浦工業大学の松日楽氏は、複数のロボットが取得したデータを集約し連携する研究や、GPSを使って位置と説明を連動させる観光案内システムなどを紹介した。最近は外国語対応にも取り組んでいるという。

芝浦工業大学 機械技能工学科 知能機械システム研究室 松日楽信人氏

また、ロボティクス用ミドルウェアやRSNPプロトコルなどの活用で開発工数は短期間になり、プラットフォームの活用やオープンシステムを活用することで、実施、評価、改良の循環的開発と継続を早く円滑に進められるとして、その意義を強調した。



パネルディスカッション

その後、NTT東日本、iPresence、ハタプロの各社が登壇し、セッションの講演と全員でのパネルディスカッション「ロボットソリューションの未来について語る」が行われ、各社が提供した導入事例や活用事例が紹介された。ハタプロは収益化する方法や、収益化できている案件を紹介、具体的にイメージできるものとなっていた。

パネルディスカッション「ロボットソリューションの未来について語る」。モデレーターはユニキャストの山崎真吾氏

「UnicastRoboticsプラットフォーム」について聞かれると、ハタプロは「営業スタッフが足りていないし、開発のリソースも足りない。ロボティクスプラットフォームがあることで、顧客が我々にたどりつける可能性が高まる」と営業面での期待を語った。


また、iPresenceは「黎明期のテレビ会議システムは互換性が低くメーカーによっては接続ができないことも多かった。標準化とともに普及が進み、今ではどんかなメーカーの機器でも接続できるようになった。UnicastRoboticsプラットフォームのようなRaaS(Robotics as a Service)によって、いろいろなロボットを活用する環境の標準化によって普及が進むのではないか」とした。自社でも「ロボコネクト」というプラットフォームを持つNTT東日本は「プラットフォーム化によって、安価に短期間でシステムが開発できる。NTTは国や市などを含めて幅広く営業部隊を張り巡らせているものの、すべてのメンバーがロボティクスを理解しているわけでなはない。簡単にシステム開発できて、売りやすいものであれば普及の追い風になる」と期待感を見せた。

東日本電信電話株式会社の松田祐輝氏(左)とiPresence合同会社のChris Christophers氏


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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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