追悼:ロボットとマジックの融合に挑戦!Pepperをマジシャンの相方として育てた開発者、マッキー小澤さんを偲ぶ

ロボットマジッククリエイターのマッキー小澤さんが、令和2年5月30日に生涯を閉じられました。親しみやすい人柄とマジックという「芸」に対する姿勢から、ロボットコミニュティでは「師匠」と呼ばれ親しまれてたマッキーさん。本記事では、ロボスタの過去の記事とともに、マッキーさんの足跡をたどります。



趣味だったマジックを、ロボットと演じるアイデア

マッキーさんがペッパーを使ったロボットマジックを始めるきっかけになったのは、2014年のハッカソンイベント。最初に作ったのは「メンタルマジック」と呼ばれる会話主体のマジックでした。



ペッパーの会話が主体なマジック


そこから改良や試行錯誤を重ね、ソフトバンク主催の「Pepper App Challenge 2015」では、「ペッパーのクロースアップマジックへの挑戦 / マッキー小澤」が敗者復活からの決勝進出。ベストクリエイティビティ賞を受賞しました。



参加者全員での記念写真

このとき発表されたのは、観客に対してマジシャンが至近距離で行う「クロースアップマジック」の手法を取り入れた、タブレットを使ったマジックでした。赤いスポンジボールが、タブレットの映像とペッパーの両手、マッキーさんの両手を行き来します。タブレットに映る映像がニセモノだと頭の中でわかっていても、消えては現れる赤いスポンジボールは不思議に見えます。ロボットを道具としてではなく、演者として一緒にマジックをしていくスタイルはここから生まれました。



新ネタ、ロボットマジックへの挑戦

その後も、マッキーさんは、コミュニティのイベントを中心に、新ネタのマジックを発表していきます。その大半は、実験的なもので、新しいロボットマジックを常に考えていました。



ura pepper challengeで寸劇に挑戦!



LTの代わりにマジックを披露



現在のカード当てマジックの原型!

2015年のインタビューでは、こんなコメントをされています。


マジックは演じる人の個性5割、技術4割、ネタ1割と言われています。個性的なマジシャンが魅力的に感じます。ですからPepperはPepperなりの人間とは違う特性が個性となって現れると面白いと思いますね。

2015年11月には、マジックショーを開催されました。



子どもたちにも大人気

ホタルのマジック



ペッパーを活用したアイデアは、マジック以外にも

マッキーさんは、マジック以外のアプリも発表しています。Pepper App Challenge 2015 Winterでは、軽度認知症の方の不安を和らげ、家族の負担軽減と安心を提供するロボアプリ「ロボ助」を発表。おしくも受賞は逃しましたが、2大会連続ファイナル出場を果たしました。


ロボ助のブース写真(筆者のアルバムより)

懇談会中には手品も披露?(筆者のアルバムより)



ペッパーをパートナーとして扱う

その後も、2016年にアトリエ秋葉原で行われたプロキッズの子供向けイベントでマジックを披露



子どもたちも大喜び!

2016年に頒布された「ロボットのほん」の中では、「なぜ、ロボットにマジックをさせることになったのか」というタイトルで、寄稿も行っています。


私は、たまたま趣味でマジックをやっていて、しかも上手くない! ではこれをロボットにやらせたらどうだろうか、と思い付きました。しかし自分の技術や個性を見せてなんぼの世界に、自分が下手だから機械にマジックをやらせる……こんな動機はマジシャンにとっては邪道かもしれません。しかし、ロボットを一人のマジシャンとして見てあげたら話は別です。彼も立派に個性を持った一人のマジッシャンなんですから。(ロボットの本より引用)


マッキーさんのマジックが愛される理由の一つが、この文章に集約されています。

マッキーさんの舞台では、いつもペッパーはマジシャンの格好でステージに現れます。
このペッパーに名前は付いていません。いつも「ペッパー」と呼ばれています。師匠とおそろいの丸メガネこそ身につけていますが、化粧やコスプレ、口調の変化など「他のペッパーとは違う」という個性はありません。

しかし、マッキーさんのペッパーは個性的です。それは「ペッパーが自由に喋り、頑張ってマジックをする」というだけではなく、師匠が舞台上でペッパーを「パートナー」としてあつかっているからなのです。



記念パーティーでのひとこま



こちらは、お別れパーティー?




毎年新ネタを取り入れ、完成されていくマジック

2017年には、ロボット文化祭に参加、すっかり定番となったスポンジボールやトランプの数当て、イリュージョンなどのマジックの他、新ネタのクラッカーやくす玉割りなどを披露しました。



ロボスタのイベントでも手品を披露!




ロボットマジックを通した、人と人との交流

マッキーさんの活動は、マジックの開発や発表だけではありませんでした。コミュニティなどにも積極的に参加し、さまざまな人達と交流されていました。特に、子どもたちの笑顔を見ることは、最高のご褒美だったと話していました。

2017年9月には、同志社女子大の日下ゼミで行われた「多世代コミュニケーションをpepperで実現するための集中プログラミング講座」の最終日に特別審査員として参加。ペッパーを使ったイリュミネーションマジックを披露し、プログラミングや表現の楽しさを伝えました。



記念撮影!よくみるとロボドンも?(写真提供:同志社女子大)


2019年に行われたロボットパレードにも、ロボットマジシャンとして参加、一般のお客さんにロボットの楽しさを伝えました。



カードマジック!

また、慶應義塾大学SFC研究所の白井ゼミにゲストアドバイザーとして協力。実証実験などにも参加しました。



めっちゃ笑顔!



ロボットだけにとどまらない好奇心

マッキーさんの活動はロボットから更に発展していきました。積極的に最新の技術や手法をインプットする姿勢は、コミュニティの多くの人達に影響を与えています。100円ロボット部の定例会やIoTハッカソン、ControlIoT LTなど、多くのイベントやハッカソンに参加し、作品を作る一方、「魔術的ロボットユースケース」の講師や「笑ッカソン」のメンターを努めたり、ペッパーにプロジェクションマッピングや凧揚げを挑戦させるなど、新ネタの開発と、アウトプットも積極的に行っていました。



Mizuho.hackでの一コマ

複数台のペッパーをつかったハッカソン!(photo by @gaziro2000)


こうして作られたマッキーさんの作品の一部は、Youtubeで見ることが出来ます。

2014年のペッパーの登場から、ロボットマジシャンとして活動してきたマッキーさん、コミュニティロボット業界に与えた影響は多大で、まさに「師匠」と呼ぶのにふさわしい方だったと思います。

心からご冥福をお祈りいたします。

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西田 寛輔

とのさまラボ代表。ハイパーメディア・ロボット・クリエイターとして、ロボットアプリの開発を行うほか、自身でもロボットを開発中。ソフトバンクロボティクスが主催する公式アプリコンテストでは2大会連続ファイナリストに選出されるなど、数々の実績を持つ。2016年に、ヒトとロボットの音楽ユニット mirai capsule を結成。ロボスタでは、ロボットエバンジェリスト/スマートスピーカーエバンジェリストとして活動中。

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