四足歩行ロボット「SPOT」の開発者向けモデルが米国で販売開始 価格は約800万円から

様々なタイプのロボットを開発するボストン・ダイナミクスがついに四足歩行ロボット(4脚ロボット)「SPOT」の販売を米国で開始した。

今回発売されたのは開発者向けモデルEXPLORERで価格は7万4500ドルから。同社のオンライン直販サイトから購入できる(米国内)。様々なセンサーなどを搭載可能なマウントを備え、利用可能なAPIなど、開発環境も整っている。

また、LIDAR、パノラマカメラ、エッジCPUがセットになった+ LIDAR + AWARENESS(3万4570ドル)などのオプション部品も発売される模様。以前から、一部のユーザーに向けては優先的に販売されていたが、今後、様々な用途への利用が始まるだろう。なお、今回の販売は米国内にむけてのものに限定されている。日本国内での利用に関してはもう少し経緯を見守る必要がありそうだ。

サイズ L:1100mm W:500mm H:840(191)mm/32.5kg
バッテリー 605Wh
運転時間 無負荷時90分 スタンバイ 180分
充電時間 120分
重量 4.2kg
ネットワーク接続 Wifi 2.4Ghz b/g/n ギガビットイーサ
耐候性 防水:IP54 -20~45℃
地形センシング 360° 4m(2Lux以上の照明下)
最大移動性能 速度:1.6m/s 傾斜:±30° 段差:300mm
搭載性能 重量:14kg 搭載エリア(LWH):850mmx240mmx270mm
マウントインターフェース M5 Tスロットレール DB25コネクタx2 電源:DC35-58.8V 150W/ポート
API 利用可能なソフトウェアAPI及びハードウェアインターフェースドキュメント有り




SPOTに見込まれる利用用途

現状、ボストン・ダイナミクスが考えているSPOTの利用用途は建築分野、プラント分野、発電所や変電所などや高放射線区域、採掘現場、危険を伴う用途、公衆衛生用途、エンターテイメント、研究用途など。



特にこの中でSPOTらしさを活かすことが出来るのは建築やプラントに関わる分野だろう。車輪やクロウラー(キャタピラ)では乗り越えにくい段差や階段などは4脚によるメリットを大いに活かすことができそうだ。

また、コロナ禍の影響が大きいアメリカでは公衆衛生用途での利用もありうる。公共空間を転用した急ごしらえの医療施設などではパイプやケーブル、階段などを完全に取り除くことは難しい。そういった現場では、段差の影響が少なく、接地面積が小さいために消毒なども簡単な四脚ロボットは、汚染区域への荷物や食料の運搬作業などを代行できるだろう。


購入できるオプション

今回発表されたEXPLORERキットへのオプションの主なものは下記のようなもの(一部)。ここで紹介する他、SPOTの追加バッテリーや1年間の保障延長、修理が受けられるサービス、などがオプションとしてある。現状サードパーティ用品などの発表はない。今後の充実が楽しみだ。


INSPECTION

360°パノラマカメラとマイク、スピーカーを備えたテレオペレーションキット、AWARENESSにパン、チルト、ズームが可能なカメラを搭載したもの。$29,750.00。





LIDAR+AWARENESS

LIDARとEDGE CPU、AWARENESSがキット化されたもの。暗所でもセンシング範囲が100mまで延長される。LIDARはベロダイン製。$34,570.00。


LIDARのみのオプションもあり



EDGE GPU

Spot上で機械学習などをする際に使用するGPU。内部の処理系と異なり、常に開発者向けに開放されている系となる。背中に搭載し、電源とETHERNETポートで有線接続する。Intel Xeon E3-1515M and Nvidia Quadro P5000 GPU搭載。OSはUbuntu18.04(フォーマットしてOS載せ替えも可能)。$24,500.00。





EDGE GPU

アプリケーションをローカルで動かす際に高速化させるためのCPU。内部の処理系と異なり、常に開発者向けに開放されている系となる。背中に搭載し、電源とETHERNETポートで有線接続する。OSはUbuntu18.04(フォーマットしてOS載せ替えも可能)。$3,925.00。






SPOTの課題

しかしSPOT導入には課題がいくつかある。その一つは高額な価格だ。SPOTは非常に完成度が高いプロダクトだが、一般販売などに至るまでの時間がかなり長かった点は否めないだろう。

BigDogの衝撃のデビューは2004年。こちらはエンジン駆動で完全に異なっていたとはいえ、今回公開されたSPOTの原型となったSPOT MINIの公開が2016年だ。ここから今回の一般販売開始までの間に電動4脚ロボットはコモディティ化が進み、キャッチアップした会社のいくつかはSPOTよりも大幅に安価なモデルの販売をすでに始めている。そのため、今となってはプロダクトとしての新規性だけを武器に多様な業界に売り込むにはライバルが多くなってしまったといえる。

また、導入の難しさも課題だ。SPOTの運動性能や姿勢制御の技術は高く、同じ4脚ロボット同士を比べてみても運動時の姿勢の自由度には目に見える違いがある。しかし、そのためか先行導入した企業からは導入時の設定に期間がかかってしまい短時間での現場への導入が難しいという声も聞かれるのだ。ユーザー側での設定作業が難航し、実証実験などに必要な期間が伸びてしまうことは、4脚ロボットのユーザーにとっては特に大きなデメリットになる。

4脚ロボットのメリットは多様な環境への追従性だ。限られたシーンでの利用を考えたロボットであれば、設定の最適化に熟慮を重ねることが出来るが、多くの環境でのSpotの性能を検証したいユーザーにとっては、一つ一つの環境での設定を熟成させる時間を撮ることが難しくなってくるためだ。(極端に言えば、環境ごとに異なる駆動方式の安価なロボットを使ったほうがソリューションとしての完成度が高くなることさえありうる。)


SPOTのメリット

では、SPOTを導入するメリットが少ないのかというと、そうとも言えないだろう。ボストン・ダイナミクスはアトラスを始め多様なロボットを開発する非常に強力なR&Dリソースが強みだ。

多様なロボットを同時並行で開発をする際に必要な基礎技術のレベルの高さや開発力は魅力的だ。また、APIなどの仕様に関する共通性も予想される。こういった部分までをSPOTの価値と考え、多様なロボットを連携したソリューションへの展開を検討しているような企業や、難易度が高いシチュエーションでのロボットの運用などを考えている企業がR&D用途で購入することなどが最適なのではないだろうか。


坂道や階段などの多様な環境への対応に加え、雨天時、晴天時、障害物の有無など検証すべき環境の数は計り知れない量となる。

今後もロボット開発のトップランナー、ボストン・ダイナミクスがどのような手をうっていくのか、目を離すことができなさそうだ。

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梅田 正人
梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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