【速報】遠隔操作とロボで「テレバリスタ」の夢を実現 分身ロボット「OriHime」と協働ロボット「NEXTAGE」の合体連携 デモ公開 

「寝たきりでも、分身ロボットを操作してバリスタに!」
分身ロボット「OriHime」で知られるオリィ研究所と、協働型産業用ロボットの川田ロボティクスによる「Tele-Barista(テレバリスタ)プロジェクト」が始動した。9月8日に報道関係者向けに「Tele-Barista」のデモンストレーションが開催されたので、その様子をレポートしたい。

今回のデモは2台の分身ロボット「OriHime」と1台の協働ロボット「NEXTAGE」(ネクステージ)のチームで行われた


テレバリスタプロジェクトは「OriHime」と「NEXTAGE」の合体連携

この「テレバリスタ」プロジェクトは、難病や重度障害などによる外出困難者でも、遠隔操作によって、手先を使った作業を伴う接客業が可能にしようというプロジェクトだ。
顧客とのコミュニケーションは分身ロボット「OriHime」を通して行い、実際にコーヒーを淹れるなどの手作業は「NEXTAGE」を通して行い、合わせることで遠隔地から、バリスタのように「接客」と「手先を使った作業」の両方を行うロボットを実現する。


「OriHime」は遠隔操作で会話ができる分身ロボット。ALSやSMAなど、身体に障がいを抱えていたり、引きこもりなど、従来は外出や就労、人との接触活動が困難だと考えられて人たちも、仕事に就いて働くことができることを実証してきた。また、健常者向けにもテレワークに導入されている。

大きな「NEXTAGE」の肩に乗った「OriHime」

そうした中、病気で思うように動けなくなったOriHimeのパイロットの中に、元バリスタがいて「お客様のオーダーを取ってコーヒーをお届けするだけでなく、お客様の好みに合わせてコーヒーを淹れたい」という思いを抱いていた。今回は、その夢を実現したいと、「OriHime」と「NEXTAGE」を連携させることになった。

一方の川田テクノロジーズの「NEXTAGE」は、工場や建設現場等で活用されている協働ロボットだ。双腕型で手先で行う作業はコンマmm精度で行うことができる。この2つのロボットを合体したものが今回「Tele-Barista」で使用されるものとなる。(※「NEXTAGE」はカワダロボティクス製)

エプロンがかわいい「NEXTAGE」、手作業や繰り返し作業が得意だ

会話が得意な分身ロボットと、手作業の精度が高い協働型産業ロボットの合体は、お互いの得意な点が活用できてとても合理的だと言えるだろう。


「テレバリスタ」のデモンストレーション

「みなさん、いらっしゃいませ!分身ロボットカフェ、カワダグループ店へようこそ」
「OriHime」パイロットの「さえちゃん」の元気な声に続いて、「私はテレバリスタです」と「みかちゃん」の声がデモ会場に響く。


さえちゃんは身体表現性障害、みかちゃんはALSのため外出が困難だが、分身ロボットカフェでOriHimeパイロットになって「できる世界が広がった」と語るふたりだ。埼玉県と愛知県からパソコンを使って遠隔操作を行っている。

用意している珈琲とチョコレートはそれぞれ4種類。「バリスタ」としての役割はおもてなし、来店したお客様に最適な珈琲と、サービスのチョコレートを提供する。そこにひとりのお客様がやってきた(川田テクノロジーズの社長)。


バリスタのみかちゃんがお客様と会話をしつつ、来店客の体調や気分、天候、午前か午後かなどを考慮して、最適なおすすめの珈琲を紹介する。この時来店した顧客は会議続きでお疲れの様子。それを受けてバリスタは「ホッとするような甘い香り」の珈琲を提案した。


提供する珈琲とチョコが決まったら、OriHimeはNEXTAGEと通信してコネクト。ここからはNEXTAGEの手作業の見せどころだ。


NEXTAGEは通常は工場等で働いていて、精度には絶対の自信がある。既にティーチングが施されているので、指定された珈琲とチョコを、自律動作で正確に準備する。


NEXTAGEにはカメラが搭載されているため、珈琲のカップ等の位置が多少ずれてしまっても補正して作業を行うことができる。NEXTAGEの作業中も、2人のOriHimeパイロットが珈琲の特徴や楽しい会話を続け、来店客は決して退屈しない。それもバリスタの仕事のうち。


やがていい香りが会場に漂い、NEXTAGEが珈琲とチョコをプレート(お盆)に乗せて作業を完了した。
この記事ではデモは画像と下記の抜粋動画(冒頭のみ)での紹介になるが、デモの全編は9月13日(日)にWeb配信される「LIVES LIVE 2020」内で一般向けに初披露される。

■ 分身ロボット「OriHime」と協働ロボット「NEXTAGE」が合体連携したテレバリスタのデモ公開


「LIVES LIVE 2020」
ライブ配信日時:9月13日(日) 10時~
※「テレバリスタ」は、13:00~13:20にライブ配信の予定。
https://hataraku-taberu-warau.jp/


これはテレバリスタのはじめの一歩

今回は「NEXTAGE」がエスプレッソマシンを使用して珈琲を淹れる仕様。テレバリスタがそれぞれ4種類から珈琲とチョコを選択し、「NEXTAGE」に指示をすると、「NEXTAGE」はあらかじめティーチングされた動作でコーヒーカプセルを取り出してマシンにセット、コーヒーカップを置いてエスプレッソを注ぐ。お盆を引き出して「NEXTAGE」の前に置き、指定された味のチョコレートを取り上げ、コーヒーと並べて乗せる、というプロセスだ


オリィ研究所の吉藤所長は「今回はエスプレッソマシンを活用したが、NEXTAGEのような高精度な手作業ができるロボットと連携することで、いつかはコーヒーを豆からグラインドしてドリップすることもできるのではないか」と目標を語った。

株式会社オリィ研究所 代表取締役所長 吉藤健太朗氏(吉藤オリィ氏)


分身ロボットカフェ「DAWN」

オリィ研究所はロボスタでも既報のとおり、分身ロボットカフェ「DAWN ver.β3.0」を期間限定でオープンし、移動機構を搭載した「OriHime D」が珈琲等を運ぶコーヒー店を実現してきた(パイロットは外出困難な人たち)。分身ロボットカフェは今夏にも開催を予定していたが、コロナ禍で延期の状態になっている。しかし次回開催時以降、このテレバリスタが分身ロボットカフェにも登場する予定だというから楽しみだ(希望としては今年度中を予定とのこと)。

吉藤所長は「分身ロボットカフェでは、今までのようにOriHime Dが給仕するだけでなく、売店にバリスタコーナーがあってOriHimeとNEXTAGEがいてコーヒーを提供する方法もあるだろうし、バリスタコーナーにOriHime Dがコーヒーを取りに来てテーブルに運ぶという方法もあるかもしれない。いろいろなアイディアやバリエーションがあり得るので、お客様やパイロットの意見を聞きながら、少しずつステップアップしていきたい」と語った。

また、報道陣からは「このシステムを導入する企業のメリットはどこにあるのか?」という質問に対して吉藤所長は「このシステムを企業に導入するビジネスは考えていない。分身ロボットカフェもそうだが、障がいを持っていたり、私もそうだったが引きこもっていたり、外出が困難な人たちでも分身ロボットを使って社会に貢献できるということを実感したり、自信を持ってもらって、一般の企業などに就職する、そうやって巣立っていくことに価値があると考えているし、実際に多くの人たちが既に巣立っていったことがうれしい」と続けた。


NEXTAGEはヒトと協働し、拡張するツール

川田テクノロジーズの川田社長は「オリィさんの分身ロボットカフェを見て、気付かされることがたくさんあった。「NEXTAGE」が既に導入されている建設現場や工場などでも人手不足や経験の継承が課題になっている。体力の負担や家族の事情で現場に来られない人が、ロボットを使ってテレワークで働いたり、若い人達に技術を継承していくのは素晴らしいことだと思う。作業ロボットの研究開発だけでなく、新たなロボットの可能性を見せてもらっていると感じている」と語った。

川田テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 川田忠裕氏

特に印象的だった川田氏の言葉がある。報道陣からの「今回、このようなロボットの組み合わせが正しいのか、NEXTAGEが遠隔操作機能や会話機能を持った方がいいのか」という問いに対して、川田社長は「OriHimeは”人”です。人の拡張は自分自身を鍛えて筋力アップするだけでなく、シャベルを使ったり車に乗ったり、いろいろな道具を活用することで拡張できる。OriHimeも同じでNEXTAGEのようなロボットを使うことでできることを拡張していく、オリィさんはそれを目指しているんだと理解している」と語った。


バリスタのようなプロの接客業とベンディングマシーンや自動販売機を同じ目線で語ることはできない。自動化と接客は決して相反するものではなく、ケースによってそれぞれが必要とされ、ケースによっては相成り立つものだ。このテレバリスタは、自動化すべきことと、人がやるべきこと(人にやって欲しいこと)を、改めて考えなおすきっかけを提示しているようにも思えた。

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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