ソフトバンク、空飛ぶ通信基地局「HAPS」商用化への取り組みを発表 安定した通信エリアとネットワーク構築

ソフトバンク株式会社および子会社であるHAPSモバイル株式会社は、成層圏から通信ネットワークを提供するプラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」による安定した通信エリアと品質の高い通信ネットワークの実現に向けてさまざまな研究開発を進めており、2021年9月2日、その研究開発の一環として「シリンダーアンテナ」や「回転コネクター」などHAPSに関する最先端技術の取り組みについて発表した。(関連記事「空飛ぶ通信基地局「HAPS」の最新技術「Beyond 5G/6G」最前線 ソフトバンクがペイロード内部を初公開」)

HAPSモバイルは、独自開発した無人航空機を成層圏で長時間飛行させて、成層圏からのLTE通信によるビデオ通話にも成功した実績を持ち、HAPSに関する最先端の技術と知見を保有しており、今後、ソフトバンクが提供する宇宙空間と成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワークソリューションとの連携を通じて、グローバル通信ネットワークサービスを構築し、HAPSの商用化を目指していくと述べている。


両社は、HAPSの商用化に向けて、通信エリアやネットワークの品質を向上するだけではなく、成層圏環境におけるSungliderの耐性の強化や長時間の飛行、通信機器(ペイロード)の軽量化など多角的な観点での研究開発を進めており、その一環として、ソフトバンクは2021年6月に「ソフトバンク次世代電池Lab.」を設立。質量エネルギー密度が高く軽量で安全な次世代電池の研究開発を進め、HAPSへの導入も見据えている。

また、グローバルレベルでの取り組みについては、通信業界やテクノロジー業界、航空業界、宇宙・航空業界など世界のさまざまな企業や組織、教育機関が加盟する業界団体「HAPSアライアンス」の設立メンバーとして、HAPSへの理解や利用促進に向けて、各国の規制当局に対する働きかけや、HAPSのエコシステムの構築、HAPS技術の標準化の推進などを行っている。



研究開発の概要

同研究開発は、シリンダーアンテナを利用した、デジタルビームフォーミングによる通信エリア(フットプリント)固定や通信エリアの自動最適化、Massive MIMOによる通信の大容量化の他、回転コネクターによる通信エリアの位置安定化を実現するためのものだ。


シリンダーアンテナを利用したデジタルビームフォーミングによる通信エリア固定

HAPSモバイルが開発を進めるHAPS向け無人航空機「Sunglider(サングライダー)」は、成層圏で旋回飛行しながら地上に向けて通信サービスを提供するが、機体の旋回により地上に形成される通信エリア(フットプリント)が移動し固定できないという課題がある。この課題に対して、シリンダー形状の多素子フェーズドアレイアンテナ「シリンダーアンテナ」を利用したフットプリント固定技術の研究開発を進めている。同技術は、デジタル制御により送信信号の振幅や位相を制御することで電波を特定の方向に集中させて送信する「デジタルビームフォーミング技術」により、機体の旋回に合わせて電波の向きを変えることでフットプリントを固定させるものだ。シリンダーアンテナは、円周方向および鉛直方向にアンテナ素子が配置されており、これらの素子を個々に制御することで、任意の方向に対して3次元的なビーム制御を行うことが可能。また、無人航空機の機体の向きが変わるだけではなく、機首の上げ下げや旋回時の主翼の傾き、上昇や下降など、あらゆる機体の動作に対応できることより、成層圏からの通信エリアの固定化を可能にした。

シリンダーアンテナ



シリンダーアンテナを利用した通信エリアの自動最適化

HAPS用無人航空機1機で最大200kmの広域のエリアをカバーするため、人口密集地や人が少ない山間部など、さまざまなエリアの通信ニーズが想定される。シリンダーアンテナを利用してデジタルビームフォーミング技術による任意のビーム形状および方向制御技術を活用すると、人口密度や通信トラフィックが高いエリアにビームを集中させることができ、端末それぞれの通信速度を向上させ、ネットワークの効率を高めるといった通信エリアの自動最適化が可能になる。例えば、災害やイベントなどにより通信エリア内のユーザー分布が変化した際は、必要な場所に応じて通信エリアにビームを集中させることができる。同技術の研究成果に関しては、2021年3月、一般社団法人電子情報通信学会より「学術奨励賞」を受賞した。

シリンダーアンテナを利用した通信エリアの自動最適化



シリンダーアンテナを利用したMassive MIMOによる通信の大容量化

HAPSの商用化に向けては、通信エリアの拡大と併せて、通信の大容量化が求められる。そこでシリンダーアンテナによるデジタルビームフォーミング技術を拡張して、5Gで使用されるMassive MIMOを適用することで、さらなる通信容量の拡大に向けて研究開発を進めている。Massive MIMOとは、多数のアンテナ素子を用いることでアンテナの利得を向上するとともに、高度な空間分割多重伝送を実現する技術であり、シリンダーアンテナは、この技術を活用することで一般的に利用される平面アンテナよりも広域のエリアをカバーできると同時に、均一な通信品質と大容量化を実現可能にする。同研究成果は、2021年5月に一般社団法人電子情報通信学会から「奨励賞」を受賞している。

シリンダーアンテナを利用したMassive MIMO



回転コネクターによる通信エリアの位置安定化

成層圏から地上に安定した通信を提供するには、通信エリアの位置を固定させることが重要だ。無人航空機は成層圏で旋回するため、機体の旋回とともにアンテナの向きも移動することで、固定した通信エリアの確保ができず、安定した通信を提供することが難しくなる「ムービングセル問題」が起こる。この問題を解決するため、もう一つのフットプリント固定技術として回転コネクターを開発した。回転コネクターは、機体の通信機器(ペイロード)内にある無線機と通信アンテナの間に配置されて、それらをつなぐケーブルの接点が無限に回転することで、機体が旋回しても通信アンテナの向きを固定できる装置だ。この装置を活用することで、ケーブルのねじれを解消することができるとともに、複数の無線機とそれぞれ対になる複数のアンテナを搭載する場合にも通信アンテナの向きを固定することが、また、通信アンテナの向きを固定することで、ムービングセル問題を解決して、安定した通信サービスを提供することが可能になる。

回転コネクター

■【動画】HAPSモバイル ミッション


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ロボスタ編集部
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