ホテルの手荷物運びやフライドポテト調理もロボットで(前編) JAPAN PACK、HCJレポート

2022年2月15日から18日の日程で、お台場の東京ビッグサイトにて2つの展示会が開催された。一般社団法人日本放送機械工業会が主催の「JAPAN PACK 2022 日本包装産業展」と、一般社団法人日本能率協会が主催のホテルやレストランなどホスピタリティとフードサービス業界の商談展示会の「HCJ2022(「第50回 国際ホテル・レストラン・ショー」「第43回 フード・ケータリングショー」「第22回 厨房設備機器展」の3つからなる展示会)」である。

それぞれ異なる展示会だが、こちらの記事では、それぞれの展示会で見かけたロボット活用に焦点をあてて、ざっとレポートしておきたい。これら各種のロボットを適材適所で組み合わせることで、これまで人手に頼ることが多かった工場やサービス業でもある程度の自動化が可能になる。





アールティ協働ロボットと組み合わせ計量器の組み合わせ

大和製衡ブース。アールティ人型協働ロボット「Foodly」と半自動計量機「TSD-N3」の組み合わせ

まずは東京ビッグサイトの西展示棟で開催された「JAPAN PACK 2022 日本包装産業展」から。計量器メーカーの大和製衡のブースでは、アールティの人型協働ロボット「Foodly」と、大和製衡の半自動計量機「TSD-N3」を組み合わせた自動計量供給システムが参考出展されていた。

半自動計量機「TSD-N3」は食品の定量計量作業に用いられる機械である。目標の重量を設定し、14個ある載せ台の上に商品を置くと、最適な重量組み合わせを自動で計算してコンベヤで排出する。これを使うことで、載せる側は重量を厳密に計測することなく、ある程度大雑把に載せても、最終的には設定どおりの重量の商品が自動で送り出される仕組みだ。

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商品を載せる作業は、現在の現場では人が行なっている。それを人型協働ロボットを使うことで自動化できるというイメージを示すためのデモとのこと。ちなみにデモのときは60g設定となっていた。

胸部の下向きカメラでワークを見ている

アールティの「Foodly」は双腕を持ったコンパクトな人型協働ロボットで、単相100Vで動作する。移動させることも可能だ。胸部の深度カメラを使うことで掴む商品の山の高さを認識してアームを突っ込み、食材などを取る。今回はパスタをイメージした革紐を扱っていた。つかんだあとに、いったん麺をほぐす動きをするあたりも注目ポイントだ。

アールティの「Foodly」。ほっそりした設置面積は後ろからのほうがよくわかる




協働ロボットによるパレタイジング

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大和製衡ブースでは他にも、兵庫県のシステムインテグレーター企業であるiCOM技研によるユニバーサルロボット製の協働ロボットを使ったパレタイジングがデモンストレーションされていた。飲料や缶詰などを最終的に出荷するときにパレットに載せる作業をロボットが行うことで、人を重労働から解放する。基部の機構はiCOM技研オリジナルで、広範囲の積み付けを可能にする。

iCOM技研では現在、協働ロボットならではの使い方、すなわち段取り替えやアプリケーション切り替えの容易さ、それによるロボット自体の稼働率最大化などをアピールしているという。




ホビーロボット「MANOI」も現役

このほか、日本自働精機(ブースでは、ロボットを使ったイベントなどの企画会社であるロボットゆうえんちがコミュニケーションロボットの「MANOI」を案内に使っていた。

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MANOIは2005年に京商から発売されたホビーロボットで、すでに15年以上前のロボットとなる。デザイナーはロボットクリエイターの高橋智隆氏である。ABS樹脂の本体はだいぶ黄色に変色しているが、まだ問題なく動作するという。


レストラン向けは配膳ロボットが目立つ

ソフトバンクとアイリスオーヤマが販売している「Servi」と「Keenbot」

東展示棟で行われれていた「HCJ2022」。こちらは前回まではロボット活用への挑戦が非常に目立った展示会だったが、今回はアーム型ロボットの活用の模索は大幅に減った。そのかわり、レストランフロアーで活用される配膳ロボット、すなわちソフトバンクやアイリスオーヤマが国内販売している「Servi」やKeenOn製のロボットのほか、深センに本社があるPudu Robotics製の配膳・配送ロボットを各社が出展していた。特にPudu Roboticsの日本国内代理店はパナソニック産機システムズのような大手から中小まで乱立しており、少なくとも15社以上が取り扱っているというだけあって、あちこちのブースに設置されていた。

配膳ロボットは、どれもこれも似たものに見えるかもしれないが、各社それぞれ、そしてラインナップによっても、搬送可能な重量やナビゲーション方式、フロアマップの解像度などが異なる。どの店舗のどんな使い方にはどこのロボットが向いているか、ロボットが結果が出せるかどうかは、導入する飲食コンサルタントやインテグレーターの力量次第で大きく左右されそうだ。今後しばらく、配膳ロボットの市場は荒れるかもしれない。

Puduのロボットの一つ。小型でサイネージ付きのモデルは人気があるそうだ

コネクテッドロボティクスのフライドポテトロボット

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そのようななか、変わらずアーム型ロボットの活用をアピールしていたのは、以前はたこ焼き、昨今は「駅そばロボット」などで知られる コネクテッドロボティクスである。今回同社は150万円ほどで販売中の「ソフトクリームロボット」のほか、タニコーと提携して開発し、福島で稼働させていた「BEX BURGERラボ店」のフライドポテトロボットを再現して出展した。

コネクテッドロボティクス「ソフトクリームロボット」。「道の駅」などで人気とのこと

ブースレイアウトもコンテナ型ファーストフード店を再現。ほぼそのまま、コンテナ型の店舗で使えるようなかたちとして出展された。冷凍庫から冷凍ポテトが自動供給され、ロボットがフライドポテトを揚げ、バギングステーションに移動させるまでの一連のオペレーションがデモされていた。

人とロボットの作業分担

単に揚げるだけでなく、冷凍ポテトが冷凍庫からも自動供給されるところがポイントである。また、揚げている途中でバケットを動かすが、その動きがないとポテトが「かき揚げ」のように固まってしまうのだそうだ。最後、紙の袋に入れて客に提供するところは人手で行う。柔らかい紙の袋にポテトを入れることまで自動化するのはコストが高く、人手で行うほうがベターと判断したとのことだった。揚げたてのポテトは実際に試食もできた。東京近郊の店舗にも導入予定があるとのことなので期待している。

「できたての提供」はコネクテッドロボティクスCEOの沢登氏がいつも強調していることの一つ

コネクテッドロボティクスは、以前は飲食店のみを対象としていたが、最近は食品工場での自動化も手がけ始めている。現在開発中の検品ロボット、盛付ロボットについてもパネルで紹介。これらも間もなく稼働するという。

検品ロボット、盛り付けロボットも開発中




チトセロボティクスはトレイの積み替えをデモ

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業務用厨房機器メーカーのHOBARTのブースでは、チトセロボティクスのロボットが洗浄機から出てきたトレイをバキュームでピックして積み換えるというシステムをデモしていた。手先のデプスカメラで距離を見て、吸引している。なおHOBARTとチトセロボティクスが共同研究したりしているというわけではなく、あくまで連携の1つの例だとのことだった。


ロビジーブースはロボットカフェを演出

ロボットビジネス支援機構(ロビジー)のブース

ロボットビジネス支援機構(RobiZy、ロビジー)のブースは「RobiZy Cafe」という設定で、すでにエレベーター連携について記事にしているエイム・テクノロジーズほか、ロビジー加盟企業のロボットがウロウロしていた。ただしコーヒーなどの提供はなし。

各種ロボットがブース内を動き回っていた

RobiZy会員企業の一つでもあるニチワ電機は、かなり早めにDoog社の人追従型の搬送ロボット「サウザー」の飲食店での活用を模索した企業の1つだ。今となっては、レストランのフロアではServiやPuduのような、より小型ロボットを活用することが一般的となっているものの、ここにきて、さらなる大容量の料理や皿などを、たとえば大型ホテルの厨房から宴会場などへ運んだりする用途として、改めて注目されているとのことだった。「サウザー」は段差にも強い。

ニチワ電機が扱う「サウザー」

後編に続く(ロビジーブースはロボットカフェを演出 ほか)
ホテルの手荷物運びやフライドポテト調理もロボットで(後編) JAPAN PACK、HCJレポート

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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