NVIDIAが「GTC 2022」でBYDとLucidとの連携を発表 EVメーカー上位30社のうち20社がNVIDIA DRIVEを採用 メルセデスやボルボも

NVIDIAは「GTC 2022」カンファレンスで、自動運転車向けAIコンピュータ「NVIDIA DRIVE Orin」の生産開始を発表した。また「NVIDIA DRIVE」プラットフォームを採用した電気自動車(EV)メーカーに、BYDとLucidグループが加わったことを発表した。


そして、次世代の「NVIDIA DRIVE Hyperion」アーキテクチャも発表した。DRIVE Hyperion 9は、14台のカメラ、9台のレーダー、3台のLiDAR、20台の超音波ソナーを備える最新のアーキテクチュアとなる。

「NVIDIA DRIVE Hyperion 9」アーキテクチャのセンシングイメージ

従来の「DRIVE Hyperion 8」は、既に2024年からメルセデスに搭載され、2025年からはジャガー・ランドローバーに搭載されることが発表されている。今後、2026年から出荷されるモデルには「DRIVE Hyperion 9」が搭載されていくことになる。




Omniverse(デジタルツイン)と自動運転(マッピング)

自動運転車に必要なマッピングシステムは、今後、Omniverseとの連携が強化される。
前回の記事の再掲になるが、ジェンスン フアン氏は「AIの次の波はロボティクス」と語った。ロボティクスには自動運転システムも含んでの表現だろう。Omniverseプラットフォーム内の「DRIVE Sim」や「Isaac」等のシミュレーション環境が中核となることを示唆したものだ。
つまり、自動運転や運転支援、ドライバーの見守り監視など、技術的に精度を向上するためには、シュミレーション環境でデジタルツイン(本物と同様の仮想空間)を作り、その中でテストと課題を抽出、改良が必須であり、その成果を実際の開発環境にフィードバックする。それはロボットの開発やロボットを導入する生産工場などの稼働環境でも同様だ。
従来はそれぞれ「DRIVE Sim」(自動運転向け)や「Isaac」(ロボット向け)が担っていたが、それを拡大して、スマートシティ向けシミュレータ「メトロポリス」を含めて、デジタルツインとして「Omniverse」が抱合していくという考えだ。


自動車向けコンシェルジュやアバターもOmniverseで開発できる

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25超の自動車メーカーが「NVIDIA DRIVE Orin」を採用

同社の発表によれば、既に25超の自動車メーカーが「NVIDIA DRIVE Orin」システムオンチップ(SoC)を採用しているという。


「NVIDIA Orin」を搭載した「DRIVE Hyperion」プラットフォームは、新EV車のエネルギー制御や頭脳AIとして機能し、安全性と運動性能を両立しながら、最先端のAI機能を提供するという。

フアン氏は「新世代のEV、ロボタクシー、ロボシャトルバス、ロボトラックにとって理想的なAV、およびAIエンジンとして機能する」と自信をのぞかせた。






BYDとLucid Groupが次世代モデルに「NVIDIA DRIVE」を採用

BYDとLucidはどちらもEVで頭角を現している企業だ。
BYDグループは、ITエレクトロニクス、電気自動車、新エネルギー、モノレールの4事業をグローバルに展開する企業。日本法人にBYDジャパンがある。「BYD」のEV部門は、現在、世界で最も売れているEVブランドの1つといわれている。
2023年初頭からDRIVE Hyperionソフトウェアプラットフォーム上に構築された次世代NEV(新エネルギー車両)を展開しているという。これらのモデルは、DRIVE Orinが制御する運転支援や自動パーキング機能などを実現する。

BYDのEVとの連携

米Lucid(ルーシッド・モーターズ)は、米テスラ社の「モデルS」開発チームのピーター・ローリンソン氏が率いている。同社「DreamDrive Pro」の先進運転支援システムが「NVIDIA DRIVE」上に構築されていることが明らかになった。


NVIDIAの集中型コンピューティングアーキテクチャは、同社の「Lucid Air」セダンのADASハードウェアとシームレスに統合されているという。また、DreamDrive Proは、車載ハードウェアを介して、ワイアレスでソフトウェアが最新バージョンに更新される機能も持つ。




乗用電気自動車メーカー上位30社のうち20社で採用

BYDとLucidに加えて、NIO、Li Auto、XPeng、SAICのIMMotorsとRAuto Brands、JiDU、Human Horizons、VinFast、WMMotorなどのNEVスタートアップは、NVIDIA DRIVEでソフトウェア定義のモデルを開発しているという。
今回の発表では「NVIDIA DRIVE Orin」は、世界の乗用電気自動車メーカー上位30社のうち20社で採用されているAIコンピューティングプラットフォームということになった。


同社の連携は、トップクラスのEVメーカーから、世界的に有名な自動車メーカーのジャガー・ランドローバー、メルセデス・ベンツ、ボルボ・カーズ、大手トラック運送会社のプラス、TuSimple、Volvo Autonomous Solutions、最先端のロボットタクシーメーカーのAutoX、DiDi、Pony.ai、Zooxなど、自律走行車業界全体に及ぶものだ。そのパイプラインは今後6年間で80億ドルから110億ドル超に増加するとみている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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