東芝グループと韓国KT、異機種の量子暗号を繋いだ長距離ハイブリッド量子暗号通信を実証実験 量子産業エコシステム拡張を目指す

株式会社東芝、東芝デジタルソリューションズ株式会社とKT(本社:大韓民国ソウル特別市)は、量子暗号通信の実証実験に関する2つのプロジェクトを実施することを、2022年3月28日に発表した。

具体的には、韓国内にて、異機種の量子暗号通信システムをつないだ長距離ハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおけるサービス品質測定を行うことと、韓国内外の量子産業エコシステムの拡張を目指す、オープンな量子暗号通信サービスのテストベッドの構築を実施する。
(冒頭の画像:東芝公式サイトより)

【KTについて】
KTは137年の歴史を持つ韓国最大の通信会社で、移動通信や超高速インターネット、IPTV、Cloud、企業向けソリューションなど電気通信分野で全方位的な事業領域を営んでいる。また、世界初として5G移動通信を商用化し、世界初の量子暗号通信ネットワーク国際標準を開発するなど最新技術の世界的な市場活性化に大きく貢献している。最近では、伝統的なTelco(telephone company)からDIGICO(Digital Platform Company)への進化を宣言し、AI・ロボット・UAMなどのデジタルへの切り替えにも力を入れて取り組んでいる。




1つ目のプロジェクト

韓国ソウル特別市と釜山市間の約490kmにおいて、異機種の量子暗号通信システムをつないだ長距離ハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおけるサービス品質測定を行う。同プロジェクトのネットワークは、これまで韓国国内で行われた量子暗号通信ネットワークの実証実験では最長(2022年3月、東芝、東芝デジタルソリューションズおよびKT調べ)で、韓国全土にわたって関連サービスの提供が可能になるレベルだ。このネットワークは、KTが技術移転したコーウィーバー、ウリネット、アリアン製の量子暗号通信システムと、東芝デジタルソリューションズの量子暗号通信システムおよび量子鍵管理システム(Key Management System:KMS)を用いて構築されている。
今回の量子暗号ネットワークのサービス品質評価に適用される評価基準は、KTが独自に開発・提案し、2022年2月に国連の専門機関であるITU-Tから世界で初めて国際標準の承認を受けたものであり、異種機器で構成するハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおいて、同評価基準で用いるパラメータに基づきサービス品質測定を実施するのは世界で初めてとなる。なお、今回の品質測定は3月28日から4月15日まで3週間にわたり行う予定だ。

【ITU-T】
ITU-Tとは「International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector」(国際電気通信連合電気通信標準化部門)の略である。




2つ目のプロジェクト

韓国内外の量子産業エコシステムの拡張を目指す、オープンな量子暗号通信サービス(QKD-as-a-Service: QKDaaS)のテストベッドの構築だ。ソウル特別市と大田市間において、2022年夏から約2年にわたりオープンに運用し、量子技術の評価を行うとともに、量子暗号通信を活用した次世代サービスの開発支援を目的にさまざまな企業に開放する。KTと東芝グループは、そこで得た知見とユーザーフィードバックをもとにQKDaaSの改良を検討していく。また、ITU-TでSG13 WP1の議長を務めるKTと、ETSI(欧州電気通信標準化機構)でQKD ISG(Industry Specification Group)の議長を務める東芝グループは、QKD技術の国際標準化活動においても協力すると同時に、これまで両社が行ってきたパイロットサービスの経験を共有し、次世代の量子暗号通信サービスやビジネスモデルの開発においても協力していくとのことだ。

同プロジェクトの実施にあたり、東芝の執行役上席常務、最高デジタル責任者、および東芝デジタルソリューションズの取締役社長 岡田俊輔氏は以下のように述べている。

東芝デジタルソリューションズ 取締役社長 岡田俊輔氏

東芝グループは量子暗号通信の産業界への早期展開に関して、日本、米国、イギリス、シンガポールで関連業界においてパートナーシップを確立してきました。今回韓国でKTと協業することで、当社の量子暗号通信事業のグローバル拡大をより加速できると期待しています

KT Executive Vice Presidentおよび融合技術院長 Kim Yie-Han氏

今回の品質評価は、異なるメーカーの設備で構築した量子暗号通信サービスの商用化の可能性を検証するのに意義が大きい」「KTは量子暗号通信にとどまらず、量子インターネットへの実装に向けた核心技術の開発のため、研究開発と投資を継続していきます




▼各社の実績について

東芝グループ 20年以上にわたり量子暗号通信技術の研究・開発をしており、世界1位(EU Joint Research Centre Technical Report, 2019, EUR29164 ENによる。)の関連特許数を有しており、量子暗号通信の事業化に向け、日本をはじめ米国や欧州などグローバルに量子暗号通信技術の実証実験を重ねている。
KT 韓国最大の通信事業者であるKTは、韓国国内の中小企業へ量子技術を移転することで、韓国の量子暗号通信のエコシステムの構築を推進している。グローバル量子暗号通信ネットワークの国際標準承認取得数で世界1位の(国際電気通信連合の特許データによる)実績があり、ドローン通信、自律走行車やデータセンターなどへの応用に向けて次世代量子暗号通信サービスの創出をリードしてきた。

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ロボスタ編集部

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