皆さん、NVIDIAのオンラインイベント「GTC 2022」は参加されたでしょうか?
様々な発表がありましたが、その中でも超小型のAIコンピュータ「Jetson」(ジェットソン)シリーズの最新モデル「NVIDIA Jetson AGX Orin」(以下 Jetson Orin)開発者キットの発売が発表されました。
ロボスタ編集部には、早速レビュー用の「Jetson Orin」開発者キットの実機が届きましたので、レビューをネット最速でお届けします。最新の「Jetson Orin NX」情報もあります。
なお、「Jetson Orin」の仕様や特徴の詳細は、すでに速報記事でお知らせしているので、詳しくはこちらをご覧ください。
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NVIDIA「Jetson AGX Orin 開発者キット」を販売開始 Xavierの8倍以上の処理能力 MicrosoftやAWS、コマツ等が支持
「Jetson Orin」開発者キットはJetsonシリーズの新フラッグシップ
はじめて「NVIDIA Jetson」に興味を持つ読者もいると思いますので、簡単にNVIDIA Jetsonシリーズと「Jetson Orin」の位置づけを確認してみましょう。
世界中の開発者は100万人超
NVIDIA Jetsonは、NVIDIAが2014年からリリースしているGPUを搭載した超小型のコンピュータボードで、ロボットやドローン、セキュリティカメラなど、組み込み用デバイスへの搭載を想定した、AI処理に特化したシリーズになります。開発コミュニティも活発に活動しており、世界中の開発者の数も100万人を超え、導入している企業は6千を超えている状況です。
最も廉価なモデルの「Jetson Nano」は、7~8千円程度で入手できる手軽さが大人気で、ディープラーニングなどAI学習の入門機としても人気があります。
今回、発売された「Jetson Orin」は、その最高峰に君臨する最新モデルです。3月23日にライブ配信された「GTC 2022」の基調講演で発売開始が発表されました。
Jetsonシリーズの従来のフラッグシップモデル「Jetson AGX Xavier」シリーズで使われたCPU Coreである「NVIDIA Carmel」から 「Arm Cortex-A78AE」に、そしてGPUは「Volta」アーキテクチャから「NVIDIA Ampere」アーキテクチャにアップグレードし、「Jetson Xavier」と比べて、新しい「Jetson Orin」は60Wでの電力モードで比較して、最大8倍以上のパフォーマンスの向上をはかっています。トレーニング済の物体認識では最大5倍近くのパフォーマンスを引き出すと言われています。
ロボットやドローン、カメラ、エッジAIデバイスに採用が進む
また、Jetsonシリーズは様々な分野で活躍しており、工場、ロボット、ヘルスケア、流通、農業、教育など多岐にわたります。
また、開発者を支えるSDKやライブラリが豊富に提供されていることもJetsonシリーズの最大の特徴です。Jetsonユーザであればほとんどが無料で使うことができるようになっているので、AIデバイスの開発がとても短期間で可能です。また、Jetsonシリーズ間で互換性が確保されている機種も多いので、最初は廉価モデルで開発をはじめ、用途に合わせて、のちのちパワーアップした高機能Jetsonモデルに入れ替えアップグレードすることも比較的容易なラインアップ構成になっている点も人気を支えている理由のひとつです。
今回は特に、AIのトレーニングに使う「TAO Toolkit」が新しくなったようなので、次回以降の記事で使用感を体験レポートしますのでお楽しみに!
前置きはこれくらいにして、今回は「開封の儀」として「Jetson Orin」開発者キットの開封の様子と同梱内容、更には歴代Jetsonシリーズとの外観やインタフェース等の比較を紹介します。
いざ開封の儀!!
お待たせしました、開封の儀をお届けします!
「Jetson Xavier」に比べてひと回り大きい重厚感のあるパッケージ
ジャーン、こちらが「Jetson Orin」のパッケージです!
「お、大きい。。」 横に「Jetson Xavier」の本体を比較のために置いてあります。Jetson Orinの箱は約21cm四方の重厚感のある外箱です。黒がかっこいい。
上蓋を開くと真ん中に「Jetson Orin」が鎮座しております。お、今回は斜めストライプな感じのデザインなんですね。今回は銀色のケースでメタリックな感じ。これも高級感がアップしてるように感じます(笑)。
本体下のスペースにはケーブル類が入っています。内容物は本体のほうに、ACアダプタと電源ケーブル、USB type Cケーブル、簡易マニュアルです(早期レビュー用製品のため、実際の製品と内容や外観、仕様が異なる場合があります)。
インターフェイス部分を確認
それでは電源側からインターフェイス部分を確認していきたいと思います。
電源はPD対応USB type C、ディスプレイはHDMI端子がないので注意!
歴代Jetsonとの大きな違いはディスプレイ接続に”Display Port1.4a”が採用されているところです。おそらく4K/8K対応のためだと思われますが、HDMI端子がないのは注意が必要です。開発者キットの内容物にもDisplay Port => HDMIの変換ケーブルなどは同梱されていないので別途用意する必要があります。
また電源はPD対応のUSB type Cになっており、ACアダプタも対応したものになっています。
PD対応というのは「USB PD」(Power Deliveryの略)で最近のスマホなど高速充電できるようにした規格で、旧規格では7.5W(5V X 1.5A)までしか扱えなかったのですが、USB PD対応だと最大100Wまで供給可能です。
付属のアダプタだと、15W, 27W, 36W, 45W, 90Wと5段階の電力供給が可能なものになってます。おそらく「Jetson AGX Orin」のパワーモードに合わせて電力供給をコントロールできるようにという配慮だと思いますが、5段階供給可能なものは今まで見たことがありませんでした。
ボタン側のインターフェイスは、Power, Force Recovery, Resetボタンの3つのボタンとmicro SDスロットなので「Jetson AGX Xavier」開発者キットと配置は違えど、大きな変更はありません。
拡張ピン側は、ラズパイ互換の40ピンヘッダは歴代Jetsonと同様です。他には「PD対応 USB type C」と「USB3.2 type A x2」となっています。
「Jetson AGX Orin」と「Jetson AGX Xavier」の比較
次に「Jetson Orin」と「Jetson Xavier」の外観やインタフェース等の比較をみてみましょう。
裏面には2つの「M2.Keyコネクタ」「MIPI CSI」などのカメラコネクタがあります。
M2.Key EにはWi-Fiカードが刺さっており、アンテナもついています。(注:「Jetson AGX Xavier」の方には筆者が後付けで装着しているのでアンテナがあります。取り回しが雑・・)
SSD増設用のM2.Keyコネクタが裏面に来たため、上部の金属製カバーを外さなくても増設可能になっているのはうれしいところです。
歴代JetsonとJetPackのロードマップについて
手元にあるJetson開発者キットを集めて、記念写真を撮ってみました。
こうやってみるとキャリアボードのサイズは旧Jetsonでも微妙に違います。よくJetsonを使っている人から話を聞くのは、電源問題とピンの互換性問題です。開発キットでロボットなどを開発して、例えば「Jetson Nano」から「Jetson Xavier」に入れ替えたりする場合に入力電源インターフェイスと拡張用のピンヘッダの互換性が微妙に変わってくるので、すんなり開発キットのモジュールを入れ替えてアップグレード完了とならないという話を聞きます。新Jetsonシリーズでは、この辺の問題をクリアしてもらえるとスムーズなアップグレードができるのかなと思います。
新JetsonシリーズとJetPackのロードマップ
「Jetson Orin NX」を発売予定
「Jetson Orin」の最新のロードマップを教えてもらいました。
新Jetsonシリーズのラインナップですが、販売中の「Jetson Orin」シリーズのほか、今年の第4四半期頃には「Jetson Orin NX」シリーズの発表も控えているそうです。価格が廉価なバージョンが予定されているので、コストの安いAIエッジデバイスへの組込にも期待したいですね。
JetPackのロードマップ
またJetson用組み込みOS+SDKのセットとも言えるJetPackのロードマップですが、「Jetson AGX Orin」で搭載されているJetPack5.0はOSにUbuntu20.4を実装しておりますが現在DeveloperPreview版ということで正式リリースは今年の第4四半期の予定です。
旧Jetsonシリーズの最新バージョンはJetPack4.6.1ですが、「Jetson Xavier」シリーズはJetPack5.0にアップグレード可能ですが、TX2およびNanoは対象外のようです。
この辺をNVIDIAに打診したところ「JetPack4.6.1以降も定期的なメンテナンスのリリースは予定されており、セキュリティ対策や重要なバグの修正などはアップデートされる予定」とのことです。
現在「TX2」「Nano」を使っている人も、とりあえずはひと安心なのではないでしょうか?
次回は歴代JetsonのベンチマークとTAO Toolkitの体験をお届け!
ということで開封の儀、今回はここまでです。
次回は、いよいよ動作確認です。歴代Jetsonシリーズとのベンチマーク比較と、新しくなったTAO Toolkitの体験をお届けする予定です。旧バージョンとの差をどれくらい感じられるか、Jetsonを使ったトレーニングがどれくらい快適にできるか、個人的にも非常に楽しみです。
次回もお楽しみに!
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高橋一行Forex Robotics株式会社 代表取締役。NVIDIA認定 Jetson AI Specialist。AI、機械学習、ロボット、IoTなどのシステム開発を行いながら、コミュニティ活動やLTにも精力的に活動。 最近、那須塩原にサテライトオフィスを設立しました!