損保ジャパンと日立、疑似量子コンピュータ技術「CMOSアニーリング」を保険業務の実務で実用化 複雑難解な組合せ問題を解く

SOMPOホールディングス株式会社と損害保険ジャパン株式会社、SOMPOリスクマネジメント株式会社、株式会社日立製作所は、損保ジャパンの損害保険業務において、日立が開発した量子コンピュータを疑似的に再現する「CMOSアニーリング」を実務で利用開始することに3月29日に合意した。保険会社の基幹業務で疑似量子コンピュータを本番適用する初のケースとなっている(同4社調べ)。

量子コンピュータを疑似的に再現する「CMOSアニーリング」は、磁性体の性質を説明するために考案されたイジングモデルを使い、組合せ最適化問題を解くために日立が開発している新型のコンピュータ。


実業務への実装にこだわって複雑な組合せ問題に挑む

4社はこれまで保険引受業務へのCMOSアニーリングの活用可能性について2020年1月より「半導体ベースの新型コンピュータを活用した損害保険ポートフォリオ最適化に関する実証実験を開始」し、検証を重ねきた。4社は実業務への実装にこだわり、実務上の複雑な条件のモデル化とビジネス上の課題解決にフォーカスして検討を進めてきた。

具体的には、SOMPOリスクの自然災害リスク定量化技術と日立のCMOSアニーリングの活用により、損保ジャパンが顧客から引き受ける自然災害リスクのポートフォリオに対して、損保ジャパンにかかるリスク、再保険など外部移転すべきリスク、外部移転時の条件(再保険条件)、実務上考慮が必要なその他条件などをモデル化し、取り得る膨大な組み合わせからリスクテイクと安定収益を両立する条件を求める手法を開発した。

さらに日立はCMOSアニーリングにおいて新たな技術革新を行い、損保ジャパンが実務レベルで必要とする大規模かつ複雑な損害保険ポートフォリオ最適化問題に対応できるようになった。
現行のCMOSアニーリングのスピン数では解けない大規模な問題(2200万スピン相当が必要)を、処理方式の高度化により、ハードウェアの増強なしに解くことに成功。これにより、現行の提供構成を変えることなく、より大規模な問題を解くことが可能となった。これにより、実務利用の目途が立ったことから、2022年4月から損害保険引受業務において、CMOSアニーリングの実務利用を開始することになった。

各社の役割分担

日立の量子疑似 次世代技術「CMOSアニーリング」については下記の記事で。
> 日立の次世代技術「CMOSアニーリング」実用化へ(1) 量子コンピュータを疑似的に再現 アニーリングと組合せ最適化とは【入門編】
> 日立の次世代技術「CMOSアニーリング」実用化へ(2) 3年かかる計算をわずか1週間で!「勤務シフト作成」では余剰を8割も削減、100倍高速【事例編】

量子やイジング技術の実用化を各国が急ぐ

近年、量子・疑似量子コンピュータ技術に対して、国際的な注目が急速に高まっている。米国、欧州、中国を中心に、諸外国においては、将来の経済・社会に大きな変革をもたらす源泉あるいは革新技術として位置づけ、研究開発投資を大幅に拡充するとともに、開発拠点の形成や人材育成などの戦略的な取組みが加速しています。日本においても、官民連携の検討体が複数発足するなど、国を挙げて社会実装に向けた取組みが推進されている。


4社の今後の展開

4社は引き続き保険引受業務に向けた技術開発とビジネス実装の両面で検討を行い、適用領域の拡大を推進していく。
また、保険引受業務に留まらず、様々な損害保険業務に対し、量子技術による損害保険業務のデジタルトランスフォーメーションを推進する。SOMPOグループが保有するリアルデータや、リスク定量化技術、保険機能、日立のデジタルソリューション「Lumada」など、各社の強みとするソリューションを連携させることで、安心・安全・健康な社会の実現に向けた新たな社会価値を提供する協創の取組みを加速していく。

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