NECと杉並区は安全・安心なまちづくりの実現に向けた行政DXの取り組みの一環として、AI技術を活用して道路灯へ設置したカメラ映像から交通流や人流を分析する実証実験を2022年2月14日から4月28日まで実施したことを発表した。実証を踏まえ、杉並区は交通安全の対策に向けて区内の車道や歩道における利用者の安全確保、まちの再整備を進めていく。
客観的データの収集を効率化
近年、自治体の政策の立案・実行に向け、EBPM(Evidence-based Policy Making:証拠に基づく政策立案)に使用する客観的データの収集が重要になっている。杉並区ではデータに基づいた安全・安心でウォーカブルなまちづくりを目指し、これまでも人手による交通流や人流のデータを把握するために測定を実施してきた。一方で、人手による測定は、目視によるカウントなどの労力、費用、時間を要することから調査期間・時間が限定されるとともに、収集できるデータの種類の少なさや精度の偏りなどが課題となっていた。
こうした中、杉並区は安全・安心なまちづくりと業務効率化を実現するため、NECとともに2019年に「スマート街路灯」を活用した街路灯の管理効率化、河川監視の実証を実施し、その評価・検証を踏まえ、2021年8月からはリアルタイムな河川監視・道路冠水の把握のための「IoT街路灯システム」を運用開始している。
AI技術を活用して交通流・人流を分析
今回の実証では杉並区の国指定史跡「荻外荘」(荻窪二丁目43番19号先)付近にある区所有の道路灯に設置したカメラの映像から、NECソリューションイノベータ株式会社の車両を中心としたシーン分析エンジン「FieldAnalyst for Vehicles」を用いて分析し、交通流・人流を匿名化し統計データとして可視化した。
通行する車両数や歩行者数のデータだけではなく、車種(普通車/トラック/バス/バイク/自転車)や速度、移動方向、車線はみだし等の詳細データを常時収集可能となり、車道や歩道整備のポイントを明確化することができた。これにより、分析データに基づいて道路の整備・工事計画を立案することが可能になるとともに、これまでの人手によるデータ収集および分析時に比べ、業務時間を90%以上削減できることを確認した。また、これまでは数年に1回(1日12時間)の測定実施が、日程・時間にとらわれることなく実施することが可能となった。
なお、NECが実証実験においてカメラで撮影した映像は実証におけるデータ分析のみに活用し、分析後に破棄した。また、NECの「映像クラウドサービス」を活用することにより、カメラ設置時に必要となる、導入容易性(設置機器の最小化、設定作業の容易化)、プライバシー保護やセキュリティを考慮したデータ送信、遠隔地の機器動作状態を把握する稼働管理などを実現している。
NECはデジタル化社会におけるまちづくりのDX化に向けて、カメラ映像データを行政課題解決型データとして活用し自治体の安全・安心なまちづくりを支援するとともに、「NEC Smart Connectivity」のデータコネクトサービスの活用を推進していく。
NECが培ってきたネットワークの技術や関連ソリューションの知見・実績を活かした、ネットワークサービスの総称。5GからWiFiまでネットワークを活用し、社会インフラや製造、リテールなど様々な領域において、これまでつながることのなかったサービス・データを安全に柔軟につなぎ、デジタルトランスフォーメーションを実現する。
データコネクトサービスについて
NEC Smart Connectivityのサービスのひとつ。データを効率的に取り込めるデータアダプタ機能、データを俯瞰および管理できるデータカタログ機能、イベントドリブンなデータ流通を実現するイベントマッチング機能などを具備している。まちづくりなどにおける、データ活用によるエリアの価値向上をサポートするサービス。
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。