ファミリーマート300店舗に遠隔操作ロボットを導入するテレイグジスタンスは、なぜソフトバンクロボティクスと協業するのか?

ソフトバンクロボティクスがロボットインテグレーター事業の新戦略を発表した際、テレイグジスタンス株式会社CEOの富岡氏が登壇した。テレイグジスタンスといえば、最近、ファミリーマートに遠隔操作のAI商品陳列ロボットを300台導入する計画を発表したことで注目を集めている会社だ。

ドリンク飲料は一日に1,000本以上販売され、補充作業もまたそれだけの数が人手によって行われている。


その作業を遠隔から操作するAIロボットで行うことで、作業スタッフの時間の効率化と重作業の軽減をはかる。


そのテレイグジスタンスが、なぜソフトバンクロボティクスと協業するのか?


ソフトバンクロボティクスと連携する理由

そのテレイグジスタンスが「今回のソフトバンクロボティクスの新戦略と、どのように具体的に関係するのか」今ひとつ疑問に感じている人も多いだろう。そこで、発表会での富岡氏のプレゼンテーションを詳細に伝えることで、その疑問を解消するとともに、テレイグジスタンスの今後の展開について読み解いていこう。

テレイグジスタンス株式会社 代表取締役 CEOの富岡仁氏

そもそもテレイグジスタンスが行っている商品陳列ロボット事業とはどのようなものか。
同社は遠隔操作によって、コンビニ展開の冷蔵庫内で、ドリンク商品を陳列するロボットを開発、ファミリーマートの一部店舗に導入開始した(現状で約20店舗に導入済み)。富岡氏によれば、導入にあたっては8時間以内に稼働が開始できるという。また、ロボットはシステムと連携しているため、一番売れているドリンク商品を優先に棚に補充するため、ほとんど品切れは発生しないとしている。



1日あたり8,000~9,000回近くの商品陳列を行なっており、8月末時点で累計約25万回の陳列自動化をロボットで達成した。

■動画 人工知能ロボット「TX SCARA」をファミリーマート300店舗導入開始

日本にコンビニは5万6000店舗あって、全ての店舗でこの作業が行われているとしている。同社はこの店舗の現状の環境を変えずに、既存店に導入したに8時間以内にロボット化を立ち上げて、基本的な業務をロボットが代行していく。


日本にコンビニは約5万6000店舗もファミマは1万6000店

コンビニエンスストアの市場を見ると、日本には前述のように5万6000店舗のコンビニがあり、月間で約10億人が利用しているという。主要の3社で5万3000店。今回、話題になったファミリーマートへの導入は、全店舗1万6000のうちの300店舗を予定しているが、今の150倍の導入を行っていくことになる。更に将来的な目算で言えば、来年以降3,000台、1万5000台、3万5000台と、基本的には2026年までに全ての店舗に導入したいという目論見がある。
では、3年で約5万台のロボットを生産して導入して運用していくことが本当に現実的なのか。ここが今回、ソフトバンクロボティクスと協業していくポイントになる。



2026年まで53,000台を導入したい

富岡氏は「この台数を、10年かけて導入するということなら我々だけでも可能かもしれないが、我々はスタートアップなので3年でこれを達成し、成長していきたい。しかし、リソースが圧倒的に足りません。1から工場を作ってデザイン調達して、5万台を3年で作る。しかも5万台のオーダー自体はまだとれていない中で、その膨大な作業を先行して行うリスクは取れません。そう考えた時に、量産サポートはソフトバンクロボティクスさんと協業するというのが我々のニーズに合っていると感じました。将来にわたって、5万台のロボットをどのように量産して出荷していくか、将来5万台を導入した先のアフターサポートも含めて今後一緒に協議をしながら実現していく、ということになります。
海外まで視野に入れるとコンビニは12万店舗、基本的には全で同じオペレーションをしています。また、コンビニ以外の小売店は、スーパーで国内2万店舗、ドラッグストアが1万6000店舗、ホームセンターが4000店舗で、基本的には全ての店舗で商品陳列という作業は必ずあって需要は確実にあります」と語った。




「余剰を生み出す」とは

同社はミッションとして「余剰を生み出す」ということをあげている。

「コンビニの飲料陳列は、たあいのない仕事だと感じる人も多いかと思います。しかし、実はこの作業をロボットで全部置き換えた場合、ファミリーマートだけで1日当たり1.8 年分の時間の余剰が生まれます。3社を合わせると6年です。年間に直すとファミリーマーだけで667年分もの人の時間がうきます。3社だと2200年分です。これを労働力に直すとファミマだけで約3,000人。3社で1万人。これぐらいの余剰が飲料の陳列をロボット化するだけで生まれてきます。


我々は、いろいろな単純作業をロボットに置き換えていき、新しい余剰を生み出すことで、少子高齢化で少なくなる労働力で持続的に社会を動かしていくかをソフトバンクロボティクスさんと取り組んでいきたい」と語った。

■ 動画 富岡氏によるプレゼンテーション

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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