複数の異種ロボットが事前に登録した人物を認識、凸版印刷「TransBots」にAIによる人物認識機能を追加
凸版印刷株式会社は展示会場等の実空間とそれを再現したVR空間をリアルタイムに連動させ、複数の異なる種類のサービスロボットを一元管理・制御するデジタルツイン・ソリューション「TransBots」(トランスボッツ)を開発している。同社は「TransBots」の一機能として複数台の走行するロボットを介して、事前に画像を登録した人物の認識を可能にするAIシステムを開発し、実証実験を行ったことを発表した。
実験では各所に散らばったロボットから送られてくる画像をクラウド上のAIエンジンで解析と集計を行い、人物認識機能を検証した。結果として種類の違う各ロボットのカメラ画像から人物認識を行い、クラウド上で一元的に確認することができた。実証実験で人物を認識するだけでなく「TransBots」上のロボットの現在位置と組み合わせて、人物の位置が特定可能なことを示唆した。
凸版印刷は今後、「TransBots」を始めとしたデジタルツインの実現をサポートするソリューションを警備、顧客分析、誘導、案内、搬送、清掃など様々な分野に適用することにより、ふれあい豊かでサステナブルなくらしの実現を目指す。
「TransBots」の開発背景
少子高齢化に伴い、労働力不足が社会問題となり、特に警備や清掃など施設管理業界では深刻な人手不足が慢性化してきている。その解決策の一つとしてロボットやITの活用が注目され、受付業務ロボットや清掃ロボットなど様々な業務に特化したロボットが導入され始めている。しかし、種類が異なるロボットは各々で制御しなければならず、ロボットの管理が煩雑になってきている。また、病院や複合施設などのビル管理や展示会、コンサートなどの入場管理では、監視カメラなどのIoT機器が活用されているが、広い範囲を人や固定した監視カメラで監視することには限界があり、ロボット活用の期待が高まっている。
凸版印刷が開発した複数の異種ロボットを一元管理・制御可能なデジタルツイン・ソリューション「TransBots」は多機能コンソールを通して、オペレータがVR空間上でロボットの走行コースを設定すると、実空間のロボットが連動して動く。実際のロボットは現在の自己位置を認識し、指定されたコース上の障害物を検知したり、ロボットからの音声で周囲に安全を促したりして、目的場所まで安全に自律走行する。走行コースの設定やロボット操作などはVR空間を使うことで、遠隔で行うことが可能。
今回凸版印刷は「TransBots」の多機能コンソールに、AIによる人物認識機能を追加した。同機能は対象エリア内に事前に登録した人物が入場した際に、走行している複数台のロボットがその人物の認識を行う。この機能により、遠隔で病院や複合施設などの管理、入場制限が設けられた展示会やコンサートなど大規模イベント会場の管理など様々な活用が期待できる。更に、テレプレゼンスロボット以外の搬送ロボット、移動型ピッキングロボットなど多様なサービスロボットへの応用も可能。
(1)事前登録情報に基づいた人物の位置を特定することが可能
対象エリア内を走行している複数のロボットによって、事前登録情報に合致した人物を認識し、それらロボットの位置情報から、対象人物の位置を特定することが可能。
(2)認識した画像をサーバーに保存、記録することが可能
人物を認識した際の画像をクラウド上に保存し、ダッシュボード上で複数台のロボットにより認識された撮影画像を一覧にすることが可能。
(3)ロボットのコストダウンに寄与
AIによる人物認識はロボットから転送された映像を用いてクラウド上で行われるため、ロボットにAI機能などのエッジコンピュータを搭載する必要がなく、コスト削減につながる。また、「TransBots」に接続することで多種多様なロボットが「TransBots」の各種機能を利用することが可能。
【実証実験】200人以上の参加者が人物認識機能を体験
2022年10月29日(土)、30日(日)「ちょっと先のおもしろい未来 -CHANGE TOMORROW-」(会場:東京ポートシティ竹芝)のワークショップコレクション内トッパンブースにて「TransBots」の新機能である、AIによる人物認識機能の動作検証を行った。
参加者はハロウィンマスクを着用し、会場内にいるハロウィンモンスターに扮した3種類のロボットモンスター「ロボモン」からヒントをもらったり、脅かされたりしながら、親子で謎解きをするゲームに挑戦した。
・AIによる人物認識
イベント参加時に参加者の画像を登録し、人物認識データを作成する。この人物認識データを元にイベント会場内を分散して走行する8台のロボットが会場内を行き来するイベント参加者の画像を記録、AIによって解析し、人物認識を実施する。実証実験では人物認識機能の動作を検証した。
・ダッシュボード機能
各ロボットが撮影した画像をリアルタイムで確認できるダッシュボード機能を開発。撮影画像は各ロボットが人物をどれだけ認識できたかの判断材料になる。同イベントでは参加者が、ゴールに備え付けた大型モニター上でイベント参加中の様子として、いつ、どのロボットに自分が見られていたかを確認するゲームに利用した。
・成果
200人以上の参加者が人物認識機能を体験し、クラウド上のAIエンジンによる人物認識機能の有用性を確認できた。
今後の予定
凸版印刷は多くのロボットメーカーとの連携を深め、サービスロボットと「TransBots」による多機能コンソールを拡充し、多くのユースケースをつくり、労働力不足の解消や働き方改革を実現していく。
凸版印刷株式会社
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。