くら寿司のスマート養殖第3弾は「AIスマガツオ」 幻の高級魚を12月2日から全国展開 スマート養殖で持続可能な漁業へ

回転寿司チェーン「くら寿司」を運営するくら寿司株式会社の子会社、KURAおさかなファーム株式会社はAIやIoT技術による「スマート養殖」を活用した『スマ』を「AIスマガツオ」として、全国のくら寿司で12月2日(金)から販売することを発表した。スマは全身トロとも言われる希少な高級魚として知られ、全国展開は大手回転寿司チェーンで初となる。「AIスマガツオ」は販売期間の12月2日(金)~12月15日(木)で、価格は165円(※在庫状況により品切れの場合もある)。


くら寿司のスマート養殖第3弾は「AIスマガツオ」

くら寿司は現在抱えている円安や世界的な水産物の消費量増加に比例した価格上昇の問題など、仕入れに関する課題を踏まえて、10年以上前から天然、養殖に関わらず国産の新しい漁業に取り組んできた。天然魚においては獲れた魚を全て買い取る「一船買い」や、仕入れた魚を100%活用する「さかな100%プロジェクト」で流通・加工の改革を行い、シイラやボラ、昨今では二ザダイなど低利用魚の商品化も実現。養殖においてはエサ代をはじめとする生産コストや毎日行う給餌の労働負担低減など、日本の漁業が抱える後継者問題の改善に繋がる「スマート養殖」として、生産者と共にAIやIoTを活用した持続可能な新しい漁業にチャレンジしてきた。

定置網にかかった魚を丸ごと買い取る「一船買い」。定置網で獲れた魚を重量に応じて、1年を通じ、決めた価格で買い取るため、市場価格に左右されず、漁師の安定した収入につながる。

仕入れた魚を100%活用する「さかな100%プロジェクト」。国産天然魚のどうしても商品化できない部位を魚粉にし、養殖魚のエサの一部に活用。このエサに柑橘類のオイルや皮などを混ぜて養殖し、「みかんぶり」や「みかんサーモン」などの「フルーティーフィッシュ」として販売している。

今回はそのスマート養殖の第3弾として、愛媛県が注目し、完全養殖とブランド化を進めている「スマ」の養殖に、愛媛県や愛媛大学南予水産研究センター、地元の生産者との連携を経て、国内で初めてスマート養殖を活用した生産に取り組んだ。長年、魚の仕入れや加工において取引のある株式会社宇和島プロジェクトが持つ高い加工技術と鮮度管理に加え、複数回に分けて必要分を水揚げできるといった、養殖だからこそ可能な計画的生産によって鮮度が高い状態での流通を実現し、大手回転寿司チェーンで初めて養殖スマの全国販売に至った。同社は「多くのお客様へのご提供を通じて、希少な魚である「スマ」の美味しさや価値を知っていただく機会になれば」とコメントしている。

AIスマガツオ(魚体)

AIスマガツオ(一貫)価格:165円

今回の取り組みを経て、これまでスマート養殖に成功したマダイやハマチと同様に、スマの養殖においても生産者が生簀に行く頻度や給餌効率に一定の効果があることが分かったが、より安定した供給ができるよう更なる研究を進めていく。また、高水温期に育ち、ふ化してから半年で出荷サイズとなる成長効率が良い「スマ」の特性を活かして、6月から12月の高水温期にはスマを養殖し、12月から4月には低水温期に育つサーモンを養殖することで、1つの生け簀で年に2回の出荷が可能となる、「海の二毛作」ともいえるサイクル構築も目指していく。

スマート養殖の様子

スマート養殖の様子

スマート養殖の様子

こうした取り組みを通じ、燃料費の高騰や為替の影響を受けにくい安定的な仕入れとリーズナブルで高品質な商品提供に努めると共に、漁業者との共栄共存と持続可能な水産業の発展に向けた活動を推進していく。


スマについて

スマはインド洋や太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布する南方系の魚類。西日本ではヤイトやオボソ、スマガツオなどと呼ばれており、天然の水揚げ量は極めて少なく、大都市の市場にはほとんど出荷されないため、主に水揚げされた産地で消費される「幻の高級魚」と言われる希少な魚。「カツオ」と「まぐろ」の中間のような味わいで、全身トロとも言われる身質は、きめ細やかな脂がのり、臭みがなくさっぱりとした滑らかな口当たりが特徴。


KURAおさかなファーム株式会社について

漁業の持続可能な発展と魚の安定供給を図るため、2021年11月にくら寿司の子会社として設立。主な事業内容は国際的基準を満たしたオーガニック水産物として日本で初めて認証取得した「オーガニックはまち」の生産と卸売。そして、人手不足と労働環境改善を目指したAIやIoTを活用した委託養殖。これらを通じ、グループ内で生産から販売まで一気通貫の体制を構築し、安定した供給量確保とコスト管理を実現することで、ユーザーによりリーズナブルで高品質なお寿司の提供を目指す。また、生産者や漁協とも連携し、収益機会の提供と労働効率の改善を通じて、「若者の漁業就業」や「地方創生」への貢献にも取り組む。

関連サイト
「くら寿司」

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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