ローカル5G等で遠隔型自動運転バスを複数台運用実証 NTT東日本、ティアフォー 、KDDIが成田国際空港で

東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は株式会社ティアフォー 、KDDI株式会社、成田国際空港株式会社とコンソーシアムとして合同で、成田国際空港第1~第3旅客ターミナル間の、ローカル5G等を用いた最大3台の車両による遠隔型自動運転(遠隔からの常時監視を前提とした自動運転)の実証実験を開始することを発表した。

2022年12月15日から2023年2月28日の期間、国内空港で初めて遠隔にいる1名の監視者が最大3台の車両を常時監視する実証実験を行い、2025年を目途に空港制限区域内における旅客ターミナル間連絡バスの遠隔型自動運転(レベル4相当)の実装をめざして取り組みを推進する。


取り組み背景

現在の日本の交通インフラにおける社会的課題として少子高齢化の急速な進行による労働人口減少がある。労働人口減少に伴い、さまざまな移動・物流サービスの担い手が不足することが危惧されており、空港運用においても同様の課題を抱えている。その解決策の一つとして自動運転の適用が注目されている。国土交通省においても制限区域における実証実験を的確に実施するとともに導入に向けた課題を抽出することを目的に、「空港制限区域内における自動走行の実現に向けた検討委員会」を開催している。

コンソーシアム4社は成田国際空港において自動運転レベル4相当の導入に向けた実証実験を行い、人手不足への対応や、ヒューマンエラーに起因する車両事故リスクの軽減を目的とした自動運転の導入を目指している。

2021年度は成田国際空港の制限区域内において、ローカル5Gを活用し、遠隔型自動運転バス1台を走行させる実証実験を総延長約1.4km区間(第2~第3旅客ターミナルの間)で行った。この取り組みを通じて、実装に向けては「1.遠隔型自動運転バスの複数台運用」「2.全旅客ターミナルをカバーするエリアに運用区間を拡張した場合における遠隔型自動運転バスのオペレーションや通信の品質・安定性の確保」「3.ローカル5Gエリアを超えて臨時の代替ルートを走行する場合の通信継続性を確保する運用」の3点を検証課題として抽出した。

ローカル5Gとは
地域や産業の個別のニーズに応じて地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステム

2022年度は2021年度に抽出したこれらの検証課題を実機評価するため、「3つの旅客ターミナル間の遠隔型自動運転バスの運行実験」、「複数台車両の同時運行に向けた遠隔監視・映像配信実験」、「キャリア通信とローカル5Gの切り替え動作によるルート代替実験」を行う。

今回の実証の結果に基づき、ローカル5G等を用いた遠隔型自動運転システムの有用性について、オペレーションの観点を中心として検証結果を取りまとめる計画。


実証実験では3項目を検証

遠隔型自動運転システムによる旅客ターミナル間連絡バス実装を進めるため、国内空港最大エリアでのローカル5G通信環境および、キャリア通信環境(LTE/5G)下で、以下3項目を実施予定。

1.第1~第3旅客ターミナル間における遠隔型自動運転バスの運行実験(総延長約5km)
・見通しの悪いカーブを含むルートで遠隔型自動運転バスの運行を実験


2.複数台実験の同時運行に向けた遠隔監視・映像配信実験
総延長約1.4km内で最大3台の車両を用いて、遠隔型自動運転に係る以下項目を実施
・自動運転バス2台の運行に必要な映像(カメラ14台分)を1名が遠隔監視する自動運転実験。
・高負荷時における通信の安定性を確認するため、3台の車両から配信される映像(カメラ20台分)を1名が遠隔監視するシナリオを想定した機能確認(自動運転バス2台および手動運転車両1台の運行を実施)


3.キャリア通信とローカル5Gの切り替え動作によるルート代替実験(総延長約6km)
遠隔監視映像配信用として利用するキャリア通信とローカル5Gを切り替えることで、運行ルートの代替設定を実験

これらの実験結果をもとにローカル5G等を活用した遠隔監視型自動運転の活用による業務の省力化および効率化を行う上での課題を抽出し、自動運転技術の実用化に向けてさらなる検証・評価を実施する。


コンソーシアム各社の役割

NTT東日本は総務省「令和4年度課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」において下記の役割を担う。

●「令和4年度課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」におけるプロジェクト管理
●ローカル5G通信環境の構築
●空港の屋外環境における4.8GHz帯における電波伝搬特性の解明
●同周波数帯を用いたローカル5Gを利用して自動運転車の複数台走行を行う際に必要な伝送を想定したローカル5Gシステムの通信性能の評価

これらの取り組みを通じ、NTT東日本はコンソーシアム一体となって進めるローカル5Gを活用した旅客ターミナル間連絡バスへの遠隔型自動運転実装に向けた評価を推進する。

なお、NTT東日本が提供するローカル5Gの基本システムはマネージド型ローカル5Gサービスの「ギガらく5G」を採用している。特に車載した複数台のカメラで撮影する遠隔監視映像の高速アップロードを実現するため、ローカル5Gにおいて準同期TDD技術等を適用し、遠隔型自動運転の要求に適したローカル5Gエリア構築を行う。これら技術適用と構築により、スムーズで安心な空港制限区域内における自動運転導入を加速することで、空港におけるグランドハンドリング(航空機の誘導等の地上支援業務の総称)の省人化・省力化推進に寄与していく。

(参考)コンソーシアム各社の役割


今後の展開

NTT東日本は成田国際空港における旅客ターミナル間連絡バスの遠隔型自動運転(レベル4相当)の実装に向け、ローカル5Gの適用やさらなる活用を推進していく。このため4社は国土交通省の企図する2025年を目途とした自動走行レベル4相当の導入に向け、実証の成果を空港制限区域内における自動走行の実現に向けた検討委員会において報告し運用ルールや共通インフラガイドライン等の策定に貢献をしていきたいと考えている。また、実証結果の成果公表を通じ、同様の課題を抱える国内空港への展開を目指す。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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