電話での予約受付はAIエージェントが対応、ドライブスルーの注文受付はデジタルヒューマンが担当 「ミライオ」のデモを公開

電話予約業務を会話AIエージェントが担当する。
アップセルテクノロジィーズ株式会社(以下、アップセル)は、AIや自然言語処理といった各種テクノロジーのソリューション提供・開発・保守・運用を行う株式会社pluszero(プラスゼロ)と共同開発した、AIオペレーター「miraio(ミライオ)」の正式販売を2025年4月18日から開始している。


両社は5月20日に都内で報道関係者向け発表会を開催、デモと体験会を実施した。


「miraio」は、共同開発したAIエージェントを用いて、音声対話をおこなうコールセンターや受付業務の自動化ソリューション。説明会では、AIエージェントが電話に応対して予約業務をおこなうデモと、複雑な問合わせ内容のためオペレーターに応対を代わるデモ、更にはデジタルヒューマン(開発中)とAIエージェントを組み合わせてドライブスルーの顧客対応をおこなうデモが公開された。

電話で予約受付をおこなうデモを公開した

開発中のデジタルヒューマンとAIエージェントを連携し、ドライブスルーで注目受付をおこなうデモも公開(デジタルヒューマンは開発中のプロトタイプ)

また、ローンチにあたって実施した企業のカスタマーサポートに関する調査結果も公開した。

■その1. AIが電話での予約受付をするデモ

■その2. 複雑な内容のため、AIからオペレータに電話を代わるケースのデモ

■その3. デジタルヒューマン(プロトタイプ)でドライブスルー受付をおこなうデモ


「miraio」とは

「miraio」は、アップセルの特許技術「AIによるトークスクリプト自動生成」と、プラスゼロが開発した人間のように意味を理解できるAI「AEI(Artificial Elastic Intelligence)」を組み合わせ、人間らしい受け答えと正確な処理を得意とするAIビジネスライセンス「PUT(プット)」という基幹エンジンをベースとしている。

アップセルテクノロジィーズ株式会社 代表取締役社長CEO 高橋 良太氏


このPUTをコールセンター用に特化させることで、高度な言語処理能力と対話能力を兼ね備えハルシネーションリスク(間違ったことを回答してしまうリスク)を極限まで抑えた対応が可能なAIオペレーターの実現を目指しているという。

株式会社pluszero 代表取締役 会長兼 CEO 小代 義行氏

具体的には、Q&Aシナリオに沿って会話するルールベース(シナリオにある質問に対しては正確な回答をおこなうが、柔軟性がない)と、ディープラーニングや生成AIを活用した機械学習(柔軟性があるが、ハルシネーションの恐れがある)の双方を、バランスの良いところをとった「二重過程モデル」を第4世代AIとして実装しているという。


ルールベース、機械学習(生成AI)、miraioのシステムの比較は次の通り。ルールベースより柔軟性があり、生成AIよりハルシネーションを抑止する。一方で、miraioを実装するにはクライアントの業務内容をAIに反映(学習)させるための作り込みが必要で、約1~2ヶ月がかかるとしている。


報道関係者が個別にデモを体験する時間も設けられていて、電話予約をおこなうシーンを体験した。感想としては、まず、こちらの会話を正確にAIが聞き取る音声認識の能力は優れていると感じた。そのため予めシナリオに用意されている回答をこちらが返す範囲内ではとても快適に利用できる。
一方で、少し複雑な質問にはAIエージェントは切り返すことができず、ひとつ前の質問から再度繰り返す様子も見られた。クライアントごとにバリエーションに富んだ想定問答を準備することで精度は上がりそうだが、生成AIの柔軟性に慣れた顧客には評価が分かれるかもしれない。


「miraio」導入のメリット
・AEIの特許技術によりハルシネーションリスク極限まで抑えた対応が可能
・通話中に過去の対応履歴、購入履歴を瞬時に判断し、不用意な保留を減らすことが可能
・相手に合わせた言い換えや提案ができるため、人間的なコミュニケーションを実現
・リピート顧客の「同じ話を何度もしなくてはいけない手間」を解消
・24時間365日、いつでも同水準のクオリティで対応可能


コールセンターに関する満足度調査

両社は、このプロダクトをローンチするにあたって実施した、企業のカスタマーサポートに関する調査結果を公開した。


電話での問い合わせが最も多いのは「商品・サービスに対して質問」

コールセンターへの質問内容は、商品・サービスについてが最も多く、全体の65.8%を占める。消費者が製品やサービスを利用する中で感じる疑問に、正確かつ即時対応が求められている。


そういった問合わせの際に、ユーザーが重視するのは、やはり「回答の正確性」と「スピード」だ。



約83%が自動応答システムにストレスを感じている

それに対して、音声ガイダンスや自動応答システムに対して、83.2%もの人がストレスを感じた経験があると回答した。この結果は、多くの企業が効率化のために導入しているシステムが、実際には顧客満足度を損なっている可能性を示しているという。



ストレスを感じる原因の約62%が「その場で的確な回答を得られない」

自動応答システムでストレスを感じる主な原因は、「その場で的確な回答を得られない」(61.8%)ことが最も多いという結果になった。現在の自動応答システムが消費者の質問の意図を正確に理解し、適切な回答を提供する能力に限界があることを示唆している、とした。



音声ガイダンスや自動応答だった場合に途中で問い合わせを諦めたことがある

音声ガイダンスや自動応答による対応が原因で、問い合わせを途中で断念した経験を持つ人は7割にのぼった。アップセルは「これは現在の自動応答システムが顧客体験を損ねているだけでなく、顧客との重要な接点を失う原因となっている可能性がある」と語った。



「対応待ちストレス」を解消するソリューション

これらの調査結果から、「その場で問い合わせ内容が解決できないこと」が生活者の大きなストレスになっていることが明らかになった。この「対応待ちストレス」を解消するため、アップセルは2023年6月に資本業務提携を締結したプラスゼロが持つ「AEI」の特許技術を活用し、AIオペレーター「miraio」を開発した、と語っている。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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