【NVIDIA Jetson Orin Nanoレビュー(1)】予約販売開始!新時代のAIエッジデバイスを最速で「開封の儀」

今年もだいぶ春めいてきて、そろそろ皆さん花見などの予定を立てていることかと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?
だがしかーし、ちょっと待ってください!
春といえば、NVIDIA 恒例の、かつ最大のAIイベント「GTC 2023」が開催されています!

そのGTC 2023で、「NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット」の予約開始がアナウンスされました。 出荷開始は4月からの予定となっています。
そして、ロボスタでは今回も「NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット」最速レビューをお届けします。

NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット


進化を続けるAIエッジデバイス向け「NVIDIA Jetsonシリーズ」

それでは「NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット」開封の儀を始めていきましょう!
と、その前に、まずは「NVIDIA Jetsonシリーズ」についてのおさらいから。
NVIDIA Jetsonとは、NVIDIA社がリリースしている超小型のAIコンピュータボードです。ワンボードマイコンにAI推論用のGPUが乗っていて、自動搬送ロボットやドローン、AIカメラなど、様々なデバイスに搭載されています。開発環境もNVIDIAから提供されていて、JETPACK SDKはubuntuベースのOSとNVIDIAのGPUに最適化されたライブラリのソフトウェア等で構成され、100種類以上のAIモデルも用意されています。それらを動かすことで、画像、音声、ロボットの制御など、AIの推論などで活用できます。

Jetsonを動かすソフトウェアスタックはNVIDIAから提供されている


100万人以上の開発者とコミュニティに成長

「NVIDIA Jetson」シリーズは進化を続けていて、利用用途はセキュリティ、リテール、スマートシティ、農業、水産業、物流、運搬、ヘルスケアなど多岐にわたり、現在では6,000以上の企業や組織に採用され、開発者は100万人以上にのぼり、コミュニティも数多く存在するAIエッジの業界標準の1つになっています。

Jetsonは、6,000以上の利用者、100万人以上の開発者になり、急成長を続けている


最新アーキテクチャ「NVIDIA Jetson Orin」シリーズ

今回レビューする「Jetson Orin Nano」は去年発表された新アーキテクチャ「Ampere」GPUを搭載したJetson Orinシリーズのエントリーモデルです。Jetson Orinシリーズは、最高位モデルの「Jetson AGX Orin」、ミドルクラスの「Jetoson Orin NX」がすでにリリースされています。「Jetson AGX Orin」は開発者キットを過去にレビューしてますのでそちらもご参照ください。



Jetson Orinシリーズ。今回のリリースでとうとう全ラインナップ出そろった!最上位モデルは「Jetson AGX Orin」で64GB版と32GB版(参考価格$:1599/899)、ミドルクラスは「Jetoson Orin NX」で16GB版と8GB版(参考価格$:599/399)。そしてエントリーモデルの「Jetson Orin nano」が8GB版と4GB版(参考価格$:299/199)。


性能は「Jetson Nano」の80倍

しかし、エントリーモデルだからといって侮ってはいけません。「Jetson Orin Nano」はOrinシリーズ共通の新しいGPUであるAmpereを搭載し、従来の「Jetson Nano」との性能差は最大80倍と唱われています。

Jetson Orin Nano開発者キット。「Jetson Nano」と比べて最大80倍といわれるその実力は?

Jetson Orin Nanoのアーキテクチャ。Jetson Orin NXとピン互換であることが書かれていることが確認できる

ベンチマークなどその実力は次回以降じっくり計測していきますのでお楽しみに。

そして朗報です。3月22日から「NVIDIA Jetson Orin Nano開発者キット」が予約販売開始との情報が発表されました。
是非、早めに予約して新しい「Jetson Orin Nano開発者キット」を一緒に体感しましょう!




買ってすぐ動かせるJetson開発者キット

次に、NVIDIA Jetson Orin Nano開発者キットについて解説します。
NVIDIA Jetsonシリーズには開発者向けに「開発者キット」が販売されています。超小型のAIコンピュータボードに、各種インターフェイス等を搭載していますので、エンジニアや研究者はモニタやキーボード、マウスなどをつないで、すぐにAI学習や推論等のシステム開発に使い始めることができます。

開発キットは、現在3種類用意されており、従来モデルの「Jetson Nano 開発者キット」、今回発売が発表された「Jetson Orin Nano 開発者キット」、最上位の「Jetson AGX Orin 開発者キット」になります。
従来モデルの「Jetson Nano」は$149で、主に学生のAI学習用等として販売が継続されます(「Jetson Nano 開発者キット」と「Jetson Orin Nano 開発者キット」は併売)。


NVIDIA Jetson 開発者キットのラインナップ。廉価な「Jetson Nano 開発者キット」も販売継続されるのは嬉しい。


Jetson Orin NX の開発者キットは?

このラインアップを見ると「Jetson Orin NX はどうやって評価すればいいの?」と感じる読者もいると思います。「Jetson Orin Nano」と「Jetson Orin NX」はピン互換なので「Jetson Orin Nano 開発者キット」のベースボードにJetson Orin NXを接続しても動くとのこと。もしくは「Jetson AGX Orin」持っている場合は、シミュレーション機能で「Jetson Orin NX」同等の性能評価ができるとされています。


それではお待ちかねの開封の儀!

それでは大変長らくお待たせしました!
「NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット」の開封の儀を行います。

NVIDIA社から着荷した「Jetson Orin Nano 開発者キット」!! 期待が高まる!

まず届いた内容物ですが、「NVIDIA Jetson Orin Nano開発者キット」とmicro SDカードが1枚入った封筒が1つ。これはリリース前の「JetPack 5.1.1」のイメージデータが入ったもので、今回は特別にレビュー用に提供されたmicro SDカードです。製品にはmicro SDカードは同梱されませんのでご留意ください。(ということで、micro SDカードに書き込む作業は今回は割愛します)

Jetson Orinシリーズのパッケージは黒が基調のようで「Jetson AGX Orin」同様、高級感があるパッケージ

黒を基調にしたパッケージを開けていきます。
「ん、開かない」と思ったら両サイドにしっかりシーリングがされてました。ついつい興奮して、慌ててしまいました。(笑)

シーリングがあるので落ち着いて開けましょう

ご開帳!パッケージは外蓋をスライドさせると観音開きで開けるようになっており、右側に「Jetson Orin Nano 開発者キット」、左側にACアダプタが格納されていました。

本体側は段ボールにスポンジが貼ってあり、しっかりと梱包されている。




性能は大幅に向上、しかしサイズは変わらず超小型

ACアダプタは、形状的には通常のアダプタで、USB-type C等ではありません。「Jetson AGX Orin」がUSB-type Cの給電だったのでてっきり同じかと思っていましたが違いました。

同梱のACアダプタ。今回はUSB-type C給電ではないので注意。

そして本体。外観は従来のJetsonシリーズでいうと「Jetson Nano」よりも「Jetson Xavier NX」に近い感じです。回転式のGPUファン、ベースボードのプラスティックカバーなどが似ています。

NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット本体。サイズは従来の「Jetson Xavier NX 開発者キット」とほぼ同じ。

大きく異なるところは、ディスプレイがDigital Portの1系統に統一され、CSIカメラのインターフェイスはRaspberryPi互換ではなく、おそらくRaspberryPi Zero互換のインターフェイスX2に変更されています。

左から「Jetson Nano」「Jetson Xavier NX」「Jetson Orin Nano」。

Digital Portは1系統のみ。Jetson Orinシリーズはこれで統一されているようだ。

CSIカメラのインターフェイスがラズパイ互換のものとは違っているので、別途インターフェイス用フレキシブル基盤が必要になるかもしれない。

また裏面にはM.2スロットがあり、SSDなど刺せるようになっていますが、「Jetson Xavier NX」と比較すると1スロット追加されているのが、大きな変更点となります。

左が「Jetson Xavier NX」、右が「Jetson Orin Nano」


高性能化を感じるOSの動作

micro SDを挿入し、ケーブル類を接続してACアダプタを接続すると電源が入り、JetPackのインストール画面が映し出されます。
基本的な流れはubuntuのOSインストールのそれと同じですが、今回特徴的だったのがchroniumのインストールを選ぶとsnapdをインストールしてsnapd経由でchroniumをインストールしていた点です。

最初に電源を入れると出てくる利用許諾のダイアログ

Chroniumのインストールを円卓するとsnapdが先にインストールされる。前回のJetson AGX Orinのセットアップでは見られなかった点

それ以外は、Wi-Fi設定やタイムゾーン、アカウント設定を行って、いつも通りにセットアップ完了となりました。
ログインしてアップデートなど少し触った感じだと、従来のバージョンよりも安定しています。セットアップの時点で既に、Jetson Nanoよりも明らかに動作に余裕があると感じました。

OS Nameの表記では、「20.04.5LTS」となっているのでJetPack5.Xが入っている事が確認できる。

いかがでしたでしょうか?
かけ足でしたが「NVIDIA Jetson Orin Nano 開発者キット」レビューの第一回、開封の儀をお届けしました。第2回は各種ベンチマークと実業務で使ったプログラムをJetsonで動かしてみてどれくらい違うかなどの比較を、第3回はクラウドのシステムを使ったデモを予定しているのでお楽しみにしてください!

最後に手持ちの歴代Jetsonシリーズで記念撮影。

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高橋一行

Forex Robotics株式会社 代表取締役。NVIDIA認定 Jetson AI Specialist。AI、機械学習、ロボット、IoTなどのシステム開発を行いながら、コミュニティ活動やLTにも精力的に活動。 最近、那須塩原にサテライトオフィスを設立しました!

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